製作地 アフガニスタン・ガズニー州
製作年代(推定) 20世紀半ば~後半
民族名 ハザラ族
技法 ダブル・サテンステッチ(両面のサテンステッチ)
製作地 パキスタン・スィンド州
製作年代(推定) 20世紀半ば
民族名 スタール族
技法 サーフィス・サテンステッチ(片面(表面のみ)のサテンステッチ)
アフガニスタン・ハザラ族の刺繍布(上)は、礼拝の際に頭を着ける場所に敷くための布(この布の上に石を置く)。パキスタン・スタール族(下)の刺繍布は、クルアーン(コーラン)等の信仰のものを包むために用いられる布。どちらもイスラームの信仰に纏わる生活の刺繍作品です。
いずれの作品も精緻なサテンステッチで描かれた幾何学文様に特徴があり、モチーフ構成と色遣いが相似しますが、片方(ハザラ族の作品)は布両面に反転する同じ文様が表わされた”ダブル・サテンステッチ技法”、もう片方(スタール族の作品)は布の片面にのみ糸及び文様が現われるように刺した”サーフィス・サテンステッチ技法”と、技巧面が大きく異なる作例となります。
古い時代に何らかの意匠の交流があったものなのか、信仰の精神性が偶然相似する刺繍を生み出したものなのか、またハザラ族の作品はなぜ完全な両面刺繍で手掛けられるようになり、逆にスタール族の作品はなぜ片面刺繍になったのか等、興味の尽きない二つの刺繍です。
●本記事内容に関する参考(推奨)文献