製作地・出土地 パキスタン・ガンダーラ地方 タキシラ-タルベラ Taxila-Tarbela
製作年代(推定) 3-4世紀
種類(推定) レリーフパネル中の菩薩立像或いは坐像の頭部
素材 ストゥッコ、※部分的に赤い彩色の痕跡(酸化鉄或いは酸化水銀)
サイズ 高約11.5cm、幅約9.5cm、奥行約9cm
パキスタン・ガンダーラ地方で3~4世紀に手掛けられた、ストゥッコ製の”菩薩頭部像”。
ガンダーラ仏教美術においてストゥッコ(化粧漆喰)は片岩と並ぶ彫刻・彫塑の主要素材となりますが、2世紀には製作の盛期に入ったとされる片岩よりもやや遅れ、ストゥッコは3~4世紀頃に製作の盛期をむかえたものと考察されております。
アフガニスタン東部ハッダのガンダーラ遺跡より多数のストゥッコ像が出土したことにより、本品に類するストゥッコ製の仏像に対して総じて”ハッダ”の名が冠せられますが、パキスタン・ガンダーラ地方のタキシラ及びタルベラからも同種のストゥッコ像が出土しており、いずれの地においても完成度の高い優品が生み出された様子を、現存する作品により確認することができます。
仏頭像では、ハッダはやや面長(瓜実顔)の傾向が見られ、タキシラ-タルベラにおいては丸顔で鼻と唇の間が短く、口元から顎が引き締まった表情のものが多いという傾向を見出せます。
本品はタキシラ-タルベラ系の仏頭像に典型的な丸顔で、波状の頭髪と頭頂の花冠装飾(摩耗のため細部が判然としないものの冠帯と推察されるもの)もあいまって、どこか中性的で若い(幼い)雰囲気を感じさせるもの、端麗かつ優美で気品溢れる顔相に心惹かれる作品です。
●参考画像
ペシャワール博物館所蔵 同地域製作のストゥッコ・菩薩頭部像
(写真 パキスタン カイバル・パクトゥンクワ州 ペシャワールにて)
●本記事内容に関する参考(推奨)文献