製作地 タイ北部 ラーンナー地方
製作年代(推定) 19世紀後半~20世紀初め
インドシナの仏教国において、“刺青(入れ墨)”は古来より信仰に纏わる一般的な習俗であり、寺院の僧侶や民間信仰の司祭及び職人を含めた刺青師の手により、守護・吉祥の文様付けとしての刺青が行なわれてきました。
刺青は染織・衣裳と同一視される、肌に直接施される装飾であり、それにより加護が得られるモノ、或いは自身の信仰の深さを証明し、神(仏)へ奉げるモノという意識が培われてきました。
ヘッド部分に仏塔(ストゥーパ)が象られた、この真鍮製の刺青用墨挿しペンはタイ北部のラーンナー地方で手掛けられたもの、意匠の美しさとともに敬虔な信仰のもとで生み出された作品ならではの濃密な精神性が作品全体から薫ってまいります。
このペン自体に刺青のごとき繊細な彫り装飾がなされている点も興味深い点となります。
職人(彫金師)が職人(刺青師)のために手掛けた、今では失われし表情の古の道具です。
●シャン仏教徒の背中の刺青 ヤントラ文様
(写真 ミャンマーシャン州にて)
●本記事内容に関する参考(推奨)文献