●宗教儀礼用の司祭者腰衣”シン・ピー”
製作地 ラオス・フアパン県
製作年代(推定) 20世紀初め
民族名 タイ・デーン族
素材/技法(画像の部位) 絹、ラック等の天然染料 / 緯絣
ラックカイガラムシから色素を抽出し染めの素材とする”ラック染料”の使用は、インドシナ諸国の染織に広く見られますが、茜染めの赤に比べて紅(ピンク)掛かった色味となることが通常です。
しかしながら、ラオスやカンボジアで手掛けられた古い染織作品の中に、”茜赤”と見紛うばかりの濃厚な真赤に染められた作例と出会うことがあります。
地産の絹手引き糸や木綿手紡ぎ糸、その土地の材から得た特殊な調合や加減の媒染剤、水の性質、気温や湿度及び染めの季節、そしてラックを染料化する特殊な技巧... 様々な条件が相俟って、この奇跡的な色味の”ラック赤”が生まれたことと推察できます。
この赤の色味・質感は現在では失われしものとなりました。いまでは誰も再現できない布上の色
”時代色”として残るばかりです。
●本記事内容に関する参考(推奨)文献