【掲載日:平成23年3月25日】
古への ますら壮士の
相競ひ 妻問ひしけむ
葦屋の 菟原処女の・・・
やっとの 暇得た 家待
田辺福麻呂が残し置いた 歌集を繰る
〔これは これは
田辺福麻呂殿
諸兄様お付きの歌人と 思いしが
いろいろとの巡り 為さって居ったか
おお 菟原処女じゃ
高橋蟲麻呂殿での歌 名高いが〕
古への ますら壮士の 相競ひ 妻問ひしけむ
葦屋の 菟原処女の 奥津城を 我が立ち見れば
《その昔 雄々し男が 二人して 妻争いで 競い合た
菟原処女の 墓処を 見よと思うて やって来た》
永き世の 語りにしつつ 後人の 偲ひにせむと
玉桙の 道の辺近く 磐構へ 造れる塚を
天雲の そくへの極み この道を 行く人ごとに
行き寄りて い立ち嘆かひ ある人は 哭にも泣きつつ
《後々までの 語り草 後の世人の 偲び草
仕様と道辺に 石積んで 作り築いた 墓塚を
この国住まう どの人も 往き来にここを 通るとき
立ち寄り訪ね 嘆きする 人によっては 泣き咽ぶ》
語り継ぎ 偲ひ継ぎくる 処女らが 奥津城処
我れさへに 見れば悲しも 古思へば
《語り伝えて 偲び継ぐ 処女ら祀る 墓処
見るに悲しい 昔の話》
―田辺福麻呂歌集―〔巻九・一八〇一〕
古の 信太壮士の 妻問ひし 菟原処女の 奥津城ぞこれ
《その昔 信太壮士が 妻問うた 菟原処女の 墓処やで此処が》
―田辺福麻呂歌集―〔巻九・一八〇二〕
語り継ぐ からにも幾許 恋しきを 直目に見けむ 古壮士
《語り継ぐ だけでもこんな 辛いのに 当の本人 どんなやろうか》
―田辺福麻呂歌集―〔巻九・一八〇三〕
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