本の迷宮

漫画感想ブログです。「漫画ゆめばなし」(YAHOO!ブログ)の中の本の感想部分だけを一部ピックアップしています。

諸星大二郎 (闇の鶯)

2011-09-29 13:20:28 | 漫画家(ま行)
久しぶりにこの本を読み返したんですけど、当時は全然気がつかなかった・・・というか、それほど気にも留めていなかったことが今回ちょっと気になった所があるのです。

この作品は「鶯の里」とか「見るなの座敷」とかいった民話をモチーフにしています。

若者が山中で迷い、美しい娘が一人で住んでいる大きな家に泊めてもらう。
そして、絶対に開けてはいけないという座敷のふすまを開けてしまう。
すると・・・海や畑や山があったというバージョンとか、
家にある12の蔵を開けてしまうと正月とか二月とかがあったというバージョンがあるのだけど、
ここで何故か、
『福島に伝わる話では・・・』・・・と、わざわざ、福島バージョンの説明をしているのです。

「闇の鶯」では、ふすまを開けると、ゴルフ場と工場と原発が現れます。
しかも、原発のシーンは見開きのページを使い、その次のページには死んだ奇形の魚や鳥の姿が描かれているのです。

大きな屋敷に住む美女はここでは、山姥、山の神、山の精、・・・のようなものとして描かれています。
そして彼女のセリフが実に意味深な感じなのです。

「山を切り開いてもダムを作っても人間たちが幸せになるなら私は邪魔はしないわ
(中略)
でも人間たちが間違ったことをして不幸になっていくのは見たくない・・・・・・
(中略)
金属とか土器とか・・・・・・火も私が生んで人間に与えたのよ
そのために私は一度焼け死んだこともあるの
でも もしまた火で焼かれたら・・・・・・
原発の火で焼かれたら・・・・・・
私は二度と蘇らない
私も山も二度と・・・・・・」

結局、この話では山は大規模な山崩れを起こしたけれど、
ゴルフ場は作られたものの、工場も原発も建たず、
山は再び元の緑をとりもどしつつある・・・
・・・っていう具合に終わります。


この作品は1989年のものですが、何だか今の日本とオーバーラップしてしまうというか、
いろいろと考えさせられました。


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