本の迷宮

漫画感想ブログです。「漫画ゆめばなし」(YAHOO!ブログ)の中の本の感想部分だけを一部ピックアップしています。

終末のフール (作画:塩塚誠 原作:伊坂幸太郎)

2007-12-27 13:59:02 | 漫画家(さ行)
(2007年発行)

透き通った空気、白っぽい薄明かり・・・そういう雰囲気の作品。

残念ながら原作は読んでいないので原作との比較は出来ない。
近いうちに図書館で借りて原作も読んでみたい。

あとがきによると<ヒルズタウンを俯瞰する鳥のような男>は原作にはないものらしい。
漫画化するにあたってこういう存在のものを創り出したアイデアはなかなか良かったのではないかと思う。

ストーリーに関しては、原作者が
<「終わっていくのが分かりつつも、それでも生きていく」普通の人たちのドラマを書きたかった小説>
とあとがきに書いているように、人類滅亡まであと三年・・・という設定の物語。
一応SFの部類にははいるのだろうけど、SFというよりは人間ドラマという感じで描かれている。

絵に関しては、丁寧で上手い、そして今風でもある。

今後を期待したい新人さんだと思う。



・・・で、普段ならこれで終わりにするところなのだけど、<今後に期待>したいが故にもう少し。
ちょっと辛口になるかもしれないが許して欲しい。
・・・って、一体誰に言ってるんだ?作者が読むわけじゃないのにね。(笑)

この感想を書く前にいくつか他の人の感想を読んでみた。



綺麗な絵でとても良い感じ
結構綺麗な絵だ
「浅野いにお」っぽい
「大暮維人」っぽい感じ
ちょっと小畑健さんの絵に似てます・・・等など


絵を褒めてはいるのだけど、○○に似ているという感想が多い。
かくいう私は第一印象では吉富昭仁の雰囲気に似ていると感じた。
要するにまだ独自の個性がない・・・という事なのだろう。
コマ割り、構図、背景、アップのコマ、ロングのコマ・・・どれも悪くはない。
・・・が、何か物足りないものを感じるのも事実。
何故だろう?

例えば、「冬眠のガール」
主人公の女の子は今風のファッションの可愛い娘。
髪の毛の描き方も今風の感じ。
ただ・・・よ~~~く見ると線に勢いがない。
綺麗に丁寧に描いているが故に勢いがなくなってしまったのかもしれない。

「鋼鉄のウール」で主人公が親父を蹴り上げるシーン。
残念ながらいまひとつ迫力に欠ける。

中高年の男性や癖のある顔は表情豊かに描けているのに、普通の若者の顔の魅力がいまひとつ。。。
<目>に力がない・・・というのだろうか?

もう少し雑な感じになってもいいから、勢いのある個性的な絵を描けば、もっと良くなるのではなかろうか?
この今の絵は本当に塩塚誠という漫画家の描きたい絵なのだろうか?

原作者はあとがきでこう書いている。
「塩塚さんの作風は、青年漫画の王道を行く、過不足のない、格好いい絵柄と構図・・・」
その通りの絵だと思う。
過不足はないのです。
でも、それだけではやっぱり物足りない。
上手いだけに、もったいない。



今後どういう作品を描いていくのか楽しみな漫画家さんです。



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