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本の迷宮

漫画感想ブログです。「漫画ゆめばなし」(YAHOO!ブログ)の中の本の感想部分だけを一部ピックアップしています。

漂流教室 (楳図かずお)

2007-01-26 11:22:39 | 漫画家(あ行)
今生きている漫画家で一番あってみたいのがこの人!あんなに怖い漫画が描けるのに本人は全くイメージとは違う、何だか全然訳の判らない人。
(ごめんなさい・・・でも本当に訳判らん人としか言いようがないとおもいますので・・・もちろん、これは褒め言葉です!ああいう人に憧れています)

小さい頃読んだ「蛇女」とか「赤んぼう少女」なんかは、そのページを触る事も出来なくてその漫画がのってるだろうと思われるページをおそるおそる端っこを持って、次の漫画にすすんだり、していました。
でも、怖いけどやっぱり読んでたんでしょうね。
だって内容をしっかり知ってたんですから。(笑)

「漂流教室」は、確か、小学館漫画賞を受賞した作品。
アメリカで映画化されててレンタルビデオで観る事が出来るのだけど、まだ観ていません。日本でもテレビでしていたと思いますけど原作と全然違うようなので観ていません。

それにしても、翔のお母さんはスゴイ!
我が子を助けるためにはどんなに恥ずかしい事でもする!と言い切り、実際かなり恥ずかしいぞ・・・というような事でもやってますよね。
最近我が子を虐待する親が問題になっているけどそういう人達に是非読んで欲しいなー。と思います。
私が同じような立場になった時果たしてそこまで出来るか・・・難しい問題ですよね。

”未来に置き去りにされた子供たち”という設定が面白い。”十五少年漂流記”の未来版というか子供たちが力を合わせて頑張る姿は、いつの世でも感動を与えるテーマではあるのだろうけど、よくまあ次から次へと”困難”な状況を考えられるものだと感心するほど困難が襲ってくるのですよね。
しかも、少年向きの漫画ならおそらくラストは無事元の世界にもどれました。
めでたしめでたし・・・となる筈なのに、あえてそうしない。
・・・が”希望”の残るラストになっている所が、作者の力量を感じさせられます。
流石ですね。


☆感銘を受けた言葉
主人公 高松翔の母への手紙(冒頭部分)より
「おかあさん・・・・ぼくの一生のうちで、あの信じられない一瞬を思う時、どうしても、それまでのちょっとしたできごとの数々が強い意味をもって浮かびあがってくるのです。」

この手紙(ノート)はただ一人の幼い生還者、ユウちゃんによって翔の母親に渡されます。
そして、何度も何度も、母はそれを繰り返し読むのです。
おそらく死ぬまで、一字一句覚えてしまっても読み続けることでしょう。
いま、北朝鮮に家族を拉致されて、一生懸命に戻して欲しいと頑張ってこられている方々がいらっしゃいますが、この翔の母親の姿とだぶってくるのです。
残念ながら、翔は帰って来られないけれど、拉致された方々が一日も早く帰って来られる事をお祈り申し上げます。

私は上記の冒頭の母への語りかけ部分は、(文庫版5巻)に翔が母宛てにノートに書き始めた手紙の内容だと思っていた。
・・・が「半魚文庫」というHPを読むと『決して母に届かない言葉』で、しかも、あのノートに書いたものではない。とあるのだ。
理由は5巻242ページ『おかあさん、ぼくはきょうからおかあさんあてに手紙を書くことにします・・・・・・でも、これはけっして届くことのない手紙です・・・・・・』と書いてあるから・・・というのです。
そうだろうか?書き始めた時は理性的に考えて『届かない』と思ったが、書いていくうちに届くとか届かないとか考えずにお母さんに語りかけている文章になってしまってるのではなかろうか?
・・・とはいえ、「冒頭部分のゆったりした口調はあの酷い惨劇のあった時期に書かれたものではなくて、母親と決別して未来に生きようと覚悟をしてからの翔の気分を表した最後の部分へとつながる伏線だ」と言われると、確かにかなり説得力がある。
うーーん。そうかもしれない。という気分になってしまった。
作者に訊くとどう答えてくれるだろうか?
ただ、私としては、例え、「半魚文庫」で、ノートに書かれた文と考えるのは「ブチコワシ」だと言われようと、あの言葉は母に届いて欲しいし、作品として考えた場合、作者は作品を描く場合、初めにかなり緻密な構成を考えて描くタイプの人だ(と何かに書いていたと思う)が、それを考えると後で翔が母宛てにノートに手紙を書く。というのは最初から決めていた事であることは充分考えられる。
・・・そうなると、ノートの手紙ではなく、そのあとの翔の気持ちだ。と言うのは少し深読みしすぎなのでは?とも考えられる。
さて、どっちだ???

マリリン・モンロー>>>
(文庫版6巻)で行く「富士大レジャーランド・天国」にいた案内ロボット(?)がマリリン・モンローの姿をしている。「わたしは真悟」で最初真悟の上にはマリリン・モンローの写真が取り付けてあって、「モンロー」という愛称で呼ばれていた。・・・作者はモンローのファンなんだろうか?他の作品にもモンローが出てくる場面があるかもしれない。今度、そういう所に気を付けて読んでみよう。(笑)

未来カーと腕時計>>>
小学校が未来へ行く前に翔が欲しかったのはただの車のプラモデルではなくて、「未来」の車。それを買わずに翔が買ったのは母の為のアクセサリーでもなく花でもない、腕時計。・・・しかも腕時計は車に踏まれて壊れるし、未来カーは母が買って翔のランドセルに入れていたのに、それとは気付かず小学校に着く前に捨ててしまう。・・・・・・どちらも、『時間』を暗示している。と言えなくも無い。

「漂流教室マニアック」というHPを見つけた。
その名の通りかなりマニアックな内容で、死亡リストとか、誰が何人殺したかとか、かなり細かく調べている。
興味のある人は見てみるといいかもしれない。


つるばら つるばら (大島弓子)

2007-01-24 10:08:06 | 漫画家(あ行)
この作品。好きなんです。

大島作品には、いいものがいっぱいあるけど、特にこの作品が好きなんです。

これは、たよ子と夫の恋愛ものがたり?
継雄の半生のものがたり?
最後は近未来だから、SFものがたり?

ま、そんなジャンル分けは何でも良い。
絵は大島タッチというか、乙女チックタッチというか、そんなに技術的に凄い訳ではないけれど、この雰囲気がいいんですよね。

継雄の両親もいいし、ゲイバーのママもいい。
ラスト、念願の家を見つけ、そこに、かつてのたよ子の夫がいたのも嬉しい。

・・・で、一番好きなところはと言うと、東京の大学で出来た男の友達が、継雄の食べ残したものを平気で食べたところ。
継雄は、感極まって泣いてしまう。
それで、友だち(東野青二)は、その場にいた仲間のタオルとかハンケチとか徴収して自分のも出してテーブルにならべ、こう言うのだ。
「なんで泣いてるのかわからんがこの中で一番清潔だと思うもので涙をふけ」

継雄は、それら全部で顔を拭く。
そして、自分が洗って返したそれらハンカチーフをその後も相変わらず全員が使用していることに、もっと感激するのだ。

中学生の時、触れた手帳を捨てられた経験があって、それが、ずーーーっと、継雄の心に影を落としていたという事がわかるエピソードだ。

何だか、こういうエピソードって、結構どこにでも転がっているって感じで妙にリアルで、心にぐっと来るのだ。

小さいけど、輝いているというか、生き生きしているエピソードの積み重ねが上手いんですよね。

たよ子の想い(執念?)に、乾杯!!

百鬼夜行抄 (今市子)

2007-01-22 10:19:38 | 漫画家(あ行)
何か面白い漫画はないかなー?と思ってた頃これの画集が出て、友人が尾白と尾黒のフィギュアがかわいいと言ってたのをみて、ふーん、面白いかも・・・と思って手に取ってみた作品。

予想以上に面白かったのはいいけれど、本の値段が高い!
文庫版も出てるけど大判の方が美しいし・・・もう少し安くならないものだろうか・・・

BSマンガ夜話で、低血圧漫画だと言ってたけど、まさしくその通り!
主人公はほとんど何もしない。
それどころか、事件(?)から逃げようとしている。
昔だったら、考えられないような性格をしている。結局今がそんな時代だということなのか・・・
悪いとは言わないけれど、うーん何だかこんな時代でいいのか?
と、ちょっぴり心配してしまう私はもう歳なのでしょうか?

もちろん、だからといって、この主人公の性格が嫌いな訳ではなく、なかなか良い味を出していると結構気に入っているのです。

尾白や尾黒のような妖怪が我が家の木にいないものかと見上げてみるのだけど、みつかりません。
たとえいたとしても、霊感の全くない私には見つけるのは無理ですね。

ヘルタースケルター (岡崎京子)

2007-01-21 20:40:23 | 漫画家(あ行)
(FEEL YOUNG  1995年7月号~1996年4月号掲載)

平成15年度(第7回)文化庁メディア芸術祭 優秀賞受賞
http://plaza.bunka.go.jp/festival/backnumber/15/sakuhin/helter.html

第8回 手塚治虫文化賞 マンガ大賞受賞
http://www.asahi.com/tezuka/04a.html



実は・・・こういう絵柄は苦手です。
話も全身美容整形をしたモデルの話・・・などと聞くとちょっと読む気が失せます。

・・・が、有名な賞もとってるし、いい作品なんだろうな~とは思ってました。

ある日、古本屋で105円で売ってるのを見つけました。
読まず嫌いはいけないよな~って思って買ってみました。
しかし・・・
それから何ヶ月も中を見ずに放ってました。

・・・昨日、何か読むものないかな~?ってフト目にとまったのがこの本でした。


頭がくらくらするぐらい凄い作品でした。。。

この迫力は一体何だろう??

まず、<絵>の迫力!力強さ!!
線が太いわけではない。それなのに非常に力強い線!
意志の強さを感じさせる分厚く描かれた唇。
ぎらぎらしたパワー溢れる目。

そういうものが、これでもか、これでもか・・・っていう迫力で読む者にぐいぐいと迫ってくるのだ!

ストーリーだって、単なる<美しくなりたい>女の子の話なんかじゃない。

主人公のキャラの圧倒的な力強さ!存在感!!
かなり重いテーマを鋭い切り口で描ききった実に素晴らしい作品!!!


読まず嫌いはダメだと心の底から思いました。(深く反省)


超こち亀 (秋本治)

2007-01-03 20:33:13 | 漫画家(あ行)
(2006年発行)


[こちら葛飾区亀有公園前派出所]連載30周年記念出版


ジャンプで30年間連載を続けるなんて凄い!
少しでも人気が落ちると打ち切りになるのに、人気をず~~~っと保ってきたということだ。
その秘訣は何だろう?
・・・って、この本を読めばわかるんだよね~。


でね、これを買うかどうかちょっと悩んだんですよね。
2000円は高いよ~!ってネ。(笑)


しかも私のお目当ては<モンキーパンチ>!!


ルパン三世とのコラボ13ページの為だけに2000円!!!



結局、ルパンの誘惑に負けて(笑)
買ってしまったが、感想は
「やっぱり買って良かった~~~~~~!」
・・・という感じです。(笑)


ルパン以外のコラボもいいし、
読み応えたっぷり!!


「祝!連載30周年特別寄稿展」として、
多くの漫画家が1ページを使ってそれぞれこち亀とのコラボを描いてるけど、
面白いんだけどネ、こういう風に新人からベテランまでずら~っと描いてると、
絵やアイデアの上手い人、そうでない人が一目瞭然!
これらの新人の中で一体誰が30年残る事が出来るか、ちょっと考えてしまった。
30年後にこの本を読み直すのも面白いかもしれない。
しかし・・・30年後って、私何歳になってるかしら~?生きてるかな~?(笑)





エロイカより愛をこめて 34巻  (青池保子)

2006-12-22 15:34:07 | 漫画家(あ行)
(平成19年1月15日発行)

ケルティック・スパイラルもとうとう終了です。
伯爵も少佐も相変わらず馬面ですが・・・ま~、脳内変換でめちゃくちゃ美形にして読んでます~♪
え?そういう言い方は作者に失礼?
ごめんなさ~い!(笑)

今回は、登場人物たちの変装姿がいっぱい出てきて楽しめました♪
伯爵の女装は、いつもの事だけど
相変わらず、迫力あるおばさん姿がいいですね~。(笑)

少佐は変装を通り越してコスプレ状態だし・・・

Qは、まるで”夜回り先生”!!・・・

少佐の部下たちが交代で嫌々伯爵役をしてるのも面白いし・・・


まあとにかく、毎回おっさんたちが走り回ってるこの漫画、大好きです~♪

花田少年史 (一色まこと)

2006-12-17 20:01:23 | 漫画家(あ行)
(ミスターマガジン 1993年~1994年
アッパーズ特別編集「花田少年史」総集編4掲載)


1995年度 第19回講談社漫画賞受賞作品。

<フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』のあらすじより>
近所でも有名な腕白小僧、花田一路は悪戯を叱る母親から逃げようと道路に飛び出し、車にはねられてしまう。頭を9針縫いながらも、奇跡的に助かった一路であったが、これ以降なぜか幽霊が見え会話出来る様になってしまう。そして様々なオバケ達が生前の未練や願いを果たす為にと、自分たちと会話可能な一路の元にやって来て無理難題を押し付けられる事となった。



この作品、良さそうだと思いつつ、どうも絵柄が私の趣味ではないので買う気にはなれなかったのだ。
ごめんなさい。
先日、図書館で見つけて借りて読んだのだが、
「やっぱり、いい作品だった~~~!」
というのが正直な感想。



お金と置き場所の問題もあるので、気になっている漫画をすべて買うことは不可能だ。
そういう場合、図書館にあると非常に嬉しい。



まず、私の趣味ではないという絵だけど、
決して下手なわけではない。
ただ単に私が美しい男女が出てくる絵が趣味だっていうだけの話。(笑)



とても丁寧に描いていて好感の持てる絵だと思う。
キャラも実に個性的かつ魅力的。



ストーリーは幽霊が見える主人公、というパターン自体は目新しいものではないが、
主人公を取り巻く家族、友人、そして幽霊たちが魅力的で
作品全体に温かいものが流れていて、読んでるととっても心地よい。



最後はこういう場合の<お約束>・・・
幽霊が見えなくなってそれまでの幽霊たちとの記憶も全部なくなってしまう。


そして、少年は<男>になるのだ。


素直な直球勝負!っていう感じの気持ちのよい作品だと思う。

『エロイカより愛をこめて』の創りかた (青池保子)

2006-12-16 10:24:32 | 漫画家(あ行)
漫画「エロイカより愛をこめて」のファンなら、一読の価値あり!

少佐の五分刈り頭や幼少時など、書き下ろしカットが26点も入っている。
連載当時のカラーイラストも満載だし、サービス精神満点!!

内容に関しては、創作方法も非常に詳しく書いているし、作者自身の半生も書いていて、読み応えがある。
この本の表紙の少佐と伯爵は最高に素敵だし、(ちょっと馬面が直った?)(笑)
表紙の色は生原稿に近い色が出ているのかもしれない。
中に同じイラストがあるが、全然色が違う!!
全部のイラストの生原稿を見たいなー!

とにかく、作者が本当に真面目に創った本だなーって、感じるんですよね。
いい仕事してますねー。…と思わず言っちゃいそうになる本でした!(笑)

N・A・S・A  (浦沢直樹)

2006-12-10 18:35:05 | 漫画家(あ行)
(1988年発行)


初期短編集。


1981年から1986年ぐらいの間に描かれた作品が収録されている。


現在の浦沢作品しか知らない人が「Return」(1981年制作)などを見ると、
「えぇ~~~っ!?これが浦沢作品~!!うっそお~~~!!」
って思うかも知れない。(笑)


軽~く、あっけらかんとした作品が多いけど、
ちゃ~んと現在の浦沢作品の片鱗も見える。


中年男が”夢”の実現に向かって頑張る「N・A・S・A」。


108歳になる老女が立ち退きに抵抗する話「オールド・ウエスタン・ママ」。
この老女の若い頃の話をからめて描き、
ラスト、思わずホロリとさせる展開などは、完璧に浦沢節炸裂!!っていう感じだ。

踊る警官  (浦沢直樹)

2006-12-08 09:47:23 | 漫画家(あ行)
(1987年発行)

初期作品。
今とは絵柄も内容も全然違う。


「踊る警官」は7編からなる短編。
ロックバンドをやってる軽~いノリのおまわりさんの話。


これが書かれた時代が、こういう作品を描かせたんだろうな~と思う。
深く考えずに、軽~~~く読んで、楽しい気分を味わう。そんな感じ。


この本には、他に短編が4編載ってるのだが、その中で、
「さよならMr.バニー」が好きだ。
ほんのちょっぴりだがホロリとさせられる、こういう雰囲気が進化して今に至ったんだろうな~。。。

南くんの恋人 (内田春菊)

2006-12-07 09:45:25 | 漫画家(あ行)
(1985年アニメージュ増刊OZ掲載
1986年~1987年ガロ掲載)

これは二度ドラマ化されているのかな?
どちらも観ていない。


ある日突然、何故か身体が小さくなったちよみが恋人の南くんと暮らす話。


この作品のラストは、あれで良かったのかどうか賛否両論あるようだが、
私はあれで良かったと思う。
いや、あれはああいう風になるように最初から決まっていたのだ。
作品というのは作者が勝手に考えて描いてるようにみえて、実は何か不思議な力?的なものが作用することもあるのではないか・・・と、たまに思えることがある。
これは、そういう作品の一つのような気がする。



1993年版のあとがきで作者は

「『プラトニックな恋』などと言う人たちにもうんざりだった。
これで、元に戻ってめでたしめでたしとか、いつまでも幸せに暮らしましたとかじゃあ、今まで百万回もあった話と同じじゃないか。
あんたたち、そんなもんで満足なの?と腹が立ってきた。
(中略)
そんでこういうラストになった。
どう、興奮したでしょ?
これがいいんだよ、漫画だもん。」

と、語っている。
しかし、本当に作者はケロッとして胸の痛みを感じずにこのラストを描いたのかと思うとそうでもないようだ。

「しばらくは、ほんとに人ひとり殺したような気分になって、ぼーっとした。」



この作品は最初から、ある種の<哀しさ><淋しさ><不安><寂寥感>
・・・といったものが漂っている。
ちよみが死んでしまうって事が最初から決まってるような感じの作品なのだと思う。


ちよみが何故小さくなったかわからない。
しかし、ちよみも南くんもそれを結構すんなり受け止めて、
今の状態で何とか暮らそうと努力をする。
勿論元の状態に戻りたいと思ってはいるのだけれど、それ程必死でもなく、半ば諦めてもいる感じだ。


これって一体何だろう?・・・と思っていて、フト思った。


ああ、病気や事故で意識はあるけれども全身不随とかになってしまった状態に似ているのかもしれない。


そう思って読むと、ますます切なくなってくる。
自分の大切な人が、ある日突然自分ひとりでは生活出来ない身体になってしまう・・・
そんな風に思って読むと本当に涙が溢れて止まらなくなってしまう・・・。


ラスト、
胸ポケットにちよみを入れたまま、崖を転がり落ちてゆく南くん。
ちよみに怪我をさせまいと必死でちよみを衝撃から庇っている南くん。
・・・
そこから後はもう、涙なしには読めません。

童夢 (大友克洋)

2006-12-04 20:56:32 | 漫画家(あ行)
<第4回日本SF大賞受賞作品>

いやもう、素晴らしい!…と言うしかない作品。

この作品が発表された当時、
画力の無い漫画家は、ただただ、脱帽するしかなかっただろうし、
(自分で)画力がある(と思っていた)漫画家は、悔しくて悔しくてたまらなかっただろうと、
私は(勝手に)思っている。

まず、タイトルページ。
子供が6人描かれている。
斜め上から見た構図。しゃがみこんで何かをしている4人。
右下には上半身しか描かれていないが、どこかへ歩いて行こうとしている少年。
タイトル文字「童夢」の下に帽子を被って、ランドセルを背負った少年が歩いている姿。
背景はない。少年たちの表情もわからない。

読者はある種の不安感と共に今から始まるであろう物語の世界に期待を感じつつ次のページに進むのだ。
「背景が白っぽい」という人がいるかもしれない。しかし、これは決して手抜きではない。計算された空白なのだ。子供たちにはそれぞれちゃんと「影」が、ついている。一見手抜きにも見えつつ、妙に「存在感」があるのは、この「影」が効果的に描かれているからに違いない。

2ページ。
1コマ目。雑然とガラクタのような物がある部屋を中から窓に向かって描いている。部屋の中は真っ黒。窓から入ってくる光と窓の外は、白。
2コマ目。男の足の先のみ。
3コマ目。雑然と置かれたガラクタの山。

3ページ。
1コマ目。前ページの男の方から上。斜め上からの構図だから、顔は見えない。
2コマ目。扉の前に立つ男の全身の後姿。張り紙から、この扉は屋上に出る扉だとわかる。
(2・3ページのふきだしのセリフは、読者には、まだそれがなにを意味するのか、わからない。…が、何か、この作品の世界にぐいぐい引き込んでいくのに非常に効果的に使われている。)

4・5ページ。
見開きいっぱいに巨大な高層団地群らしき建物を上から見下ろした構図。
屋上に出る扉が開いている。一つだけあるふきだしは「どさッ」。(重量感のあるものが落ちたと推測出来る。何だか本当に耳に聞こえるような錯覚さえ感じる、ふきだしだ。)

以上がこの作品の導入部分。
たった5枚の原稿だが、ここまで計算され尽くされた事に感嘆するしかない。

詳しく見ていったら、素晴らしい所はいっぱいありすぎて、書ききれないので、主要部分のみにするが、とにかく、最高の「画力」があって、はじめてこの素晴らしい作品が出来上がったということは間違いないだろう。


高層団地群の素晴らしさ!どの角度からも描けるというのが「感動」さえ覚えてしまう!
30ページの建物など、よく見ると、真っ直ぐじゃなくて、斜めに立ってる。普通の凡人が考えると垂直に描いてしまうだろうに敢えてそうしないのは、その方が巨大な物を下から見上げたとき人間がそう感じるからだろうか?

38・39ページ。チョウさんが浮かんでいる。この描写。本当にふわっと浮かんでいる。ピストルを紐で縛って下に垂らしているのが、非常に効果的で、浮かんでいる、というのをより際立たせるものになっている。

70・71ページ。男のアップで異様さを表現し、靴を履いていない足。カッターナイフの音。(チキチキチキ)二人を下から見上げた構図。普通の凡人には、なかなか描けない構図だ。

チョウさんと、女の子(悦子)の超能力戦の画面は、もうその素晴らしさを敢えて説明する必要はないだろう。
この作品が発表されて、22年。いまだにその凄さは全く色褪せてないと思う。

ストーリー面でも、非常によく纏まっていると思う。
団地で何人もの変死者が出る謎。それをつきとめようとする刑事たち。団地の住人たち。
物語の三分の一を占める超能力戦の凄さもさることながら、そこへ行くまでの盛り上がり方、戦い終了後のまとめ方、どれをとっても文句のつけようが無い。

キャラも、それぞれ個性的で、とくに岡村部長などは、名俳優が演技しているかのような重厚感だ。

たったひとつ、ケチを付けるとしたら、…可愛い女の子が描けないって事かな?悦子ちゃん、もうちょっと可愛く描いてあげて欲しいなー。(笑)いや、あれが好きという人もいるかもしれないが…。それに、この作品だと、ああいう顔が一番似合っているのかもしれない。

失踪日記 (吾妻ひでお)

2006-12-01 09:52:21 | 漫画家(あ行)
手塚治虫文化賞 2006年度<マンガ大賞>受賞作品


確か私が中学生ぐらいの頃だったと思うが「エイトビート」という漫画を描いていたのがこの作者だった。
柔らかい描線に可愛い絵柄で、結構好きな漫画だった。
その後、「ふたりと5人」とか「やけくそ天使」あたりは、少しだけ読んでいたが、だんだん読む機会がなくなってきた。
それでも、不条理・SFものとかロリとか、いい作品を描いてるという噂?は耳に入っていて、何となく、ああ、頑張ってるんだなー。と思っていたら、失踪したらしいという噂!!
私に何の関係もない事なんだけど、ちょっと頭の片隅(笑)で心配してたのだ。

・・・で、失踪時の事を描いた本が出たって聞いて、本屋で探すと漫画なのに漫画のコーナーではない所でこの本を発見。
立ち読みしてみて、一瞬古書店で買う方が安いよなって思ったけれど、いやいや、ここで一冊でも買えば印税が作者に入るから、作者の為にも新刊で買うべきだ。・・・と思いなおして、新刊で買ったのだ。(笑)

かなり悲惨な自殺未遂・路上生活・肉体労働・アルコール中毒・強制入院の波乱万丈な日々を結構ソフトに描いている。
事実は、もっとかなり悲惨なんだろうが、本人が自分自身を第三者的な目で見て描いている為か、読みやすい作品になっている。
とり・みきが、「『漫画作品』として完成度が高く本当に面白い。」と、帯に書いているが、確かに面白い。本のカバーの裏にある「裏失踪日記」も面白い。

漫画を描くっていう事は、精神が内へ内へと向かうので、ある意味つらいと思う。
肉体労働は精神的には楽だろうが、人間関係が大変だと思う。
結局、生きるって大変な事なんだ。っていう話になっちゃうんだけど、人生って、そんなものだから仕方ない。
自分自身で楽なように考え方を持っていくしかないんじゃないのかなー??って、私自身、近頃思うようになった。

この作者には、面白い作品をもっともっと描いて貰いたいと一読者としては勝手に思っている。
・・・だから、つらいかもしれないが是非とも頑張って欲しいと思う。

ニッポンのマンガ (浦沢直樹 「月に向かって投げろ!」)

2006-11-28 08:50:00 | 漫画家(あ行)
これは、手塚治虫文化賞10周年記念で出版されたものだ。


大賞受賞者によるオール描き下ろしのマンガが5本。

どれも素晴らしい出来の作品だ!!


現在の漫画界のトップレベルの漫画家たちが描いたものだから当然といえば当然なのだが・・・。
こういうものを、漫画に偏見を抱いてる人に読んで欲しいと思う。
・・・が、そういう人たちにこの漫画のどこが素晴らしいのか理解出来るかな~?という疑問もあるが・・・。(苦笑)


この本には萩尾望都×浦沢直樹のスペシャルトークとか、興味深い読み物がいっぱい!
これで<本体1048円+税>は安い!!



まずは、浦沢直樹の作品
「月に向かって投げろ!」
12年ぶりに描いた短編。

たった30ページの作品なのに感動してしまった!
悔しいが、ラスト、じ~~んとしてしまった~!(別に悔しがる必要はないんだけどね・・・笑)


二度読み返してみた。
やっぱりラストに感動してしまう。


何故だ!?何故感動させられる??


りんごを盗って逃げる少年。
逃げる途中で出会った木の下に死んでいるかのように横たわっていた老人。
構図がいいんだよな~。
映画監督の本広克行氏も言ってるのだが、
「このまま撮れば映画になる!」


ロングからアップ・・・りんごのアップ、りんごを食べる口元のアップ・・・
再びロング。
そして・・・「目」。。。


「目」に力があるんだよね~~~。
ため息が出るくらい力のある「目」。
浦沢直樹の絵自体は申し訳ないが「美しい」という絵ではないと思う。
線が美しいわけでも、美男・美女が描けるわけでもない。
どちらかと言うと、一見、雑にささっと描いてるだけの線にすら見えなくもない。


しかし・・・生きてるのだ。
力があるのだ。。。


だから、じつに魅力的なのだ。


そして、キャラが立っている。
こんなに短い作品でもちゃ~んとそれぞれのキャラの性格は見事なまでに表現されている。


勿論、ストーリーは浦沢直樹お得意の「謎」「謎」「謎」・・・
読者は、話がどう展開していくのか気になって、読み出したらもう目を離すことが出来ない!!


伏線は、見事に全てひとつにつながり・・・


そして、ラスト・・・


凄いよ!凄すぎる!!


こんな凄い作品を描かれちゃあ、
10年間に二度も大賞を受賞したって、文句なんて言えなくなるじゃありませんか!?



もやしもん  (石川雅之)

2006-11-22 14:44:10 | 漫画家(あ行)
(イブニング 2004年16号~  )


菌が見える主人公が出てくる話・・・という事でちょっと読んでみたいな~と思っていたら昨日、某図書館で1・2巻を発見!
即、借りて読んでみた。



漠然とイメージしていたものとは違っていたが面白い。
「農大青春ウンチク漫画」・・・っていう感じ?(笑)



まず、菌たちが可愛い♪
特に沢木にくっついてる<A・オリゼー>が可愛い♪♪
まるでナウシカの肩にいるテトのように見える!!・・・なんて思うのは私だけだろうか?
乳酸菌も可愛いし、和風のL・ヨグルティも可愛い!
こういう感じで菌を見る能力があるっていうのも結構楽しいとは思うのだけど、
E・コリ(大腸菌)が手のひらでウジャウジャいるのが見える・・・っていうのは嫌かな?
見えない方が幸せなのかもしれない。(笑)



こういう農大生活って楽しそうだ。
勿論、現実にこういう農大が存在するとは思わないが、
2巻で行われる「春祭」・・・楽しそうだよね~。
「究極超人あ~る」でも楽しそうな学園祭だな~って思ったがこの「春祭」もなかなか魅力的だ。



菌に関するウンチクでも楽しめるし、大学生活も面白そうだし、キャラも個性的で実にいい!



ただ、女性の顔がどれも同じに見えてしまう・・・。
ま、そういう漫画は他にもいっぱいあるけどね。
女性の服とか靴などの表現がすばらしいだけに、ちょっと残念。



しかし・・・「風の谷のナウシカ」風の衣装だとか、「20世紀少年」のともだち風の覆面とか・・・こういう「遊び心」が楽しいね~♪