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本の迷宮

漫画感想ブログです。「漫画ゆめばなし」(YAHOO!ブログ)の中の本の感想部分だけを一部ピックアップしています。

エルメスの道 (竹宮恵子)

2007-05-21 19:08:51 | 漫画家(た行)
(1997年発行)

この「エルメス」は、あの有名なブランドの「エルメス」である。
私は残念ながら所謂ブランドものというものには興味がない。
まあ、貧乏人には縁が無いからね~。(笑)
それでも「エルメス」の名前程度は知っている。(爆)

・・・で、この作品なのだが、
「エルメス」の社長から中央公論社へ直接
「馬に乗れる人、馬が描ける人」という条件で社史を描くという依頼があったのだそうだ。
そして、その仕事を引き受けたのが竹宮恵子だったわけだ。

文章で描かれた社史さえも作っていない「エルメス」が、何故突然、日本の漫画でそれをやろうとしたのか?
勿論、営業戦略のひとつとして考えたのだろうが、かなりユニークな発想だと思う。
ああ、そういえば、確かセシールの社史的な漫画を里中満智子が描いてたっけ。
あの本はたぶん非売品だったと思うが図書館に寄贈本としてセシールから送られてたのを読んだ記憶がある。

この作品、もちろんエルメス社の歴史ではあるが、それ以前に欧州の歴史・職人の歴史にもなっている。
綿密な取材や膨大な資料を駆使して描きあげたものはエルメス社にとっても非常に価値のある社史になったと思われる。


これを読んだ後少しエルメスのファンになってしまった。
エルメス製品の(安いの・・・笑)ひとつぐらい買ってもいいかな~~って・・・。

う~~~ん。
エルメス社の社長はこういう風に興味のない人間にも自社製品を買ってもらう為に<漫画の社史>というものを考え出したんだね。
その営業戦略、大いに正解だと思いますね。(笑)

神々の山嶺 (作画:谷口ジロー 原作:夢枕獏)

2007-05-11 20:54:32 | 漫画家(た行)
(ビジネスジャンプ2000年~2003年 掲載)

今、読みかけの本、読んだけど感想を書いていない本が山ほどあるのよね。
真面目に感想を書こうとしている本ほど、なかなか感想が書けずにいる。
これも、そういう本のひとつ。
原作の方は何年か前に読んでいるのだけど、かなり前に読んだので細かい所は忘れている。
それに原作は後で出た文庫版と最初の本ではラストが違うらしいいし、
漫画版も原作のラストとは違うようだ。


・・・で、全部目を通してから感想を書きたいと思ってたんだけど…。
まあ、そんな事しているうちに、漫画を読んだ直後の感動を忘れかけている自分がいる事に気がついて、まずは漫画のみの感想を書こうと思ったのです。
原作との比較は今回はナシで・・・。

漫画版、いろんな人からいい作品だと聞いていたが、本当に素晴らしい作品です。

私は登山などはしたことがないので、山に登るという感覚が実際にはわかりません。
エヴェレスト級登攀の感覚などと言われると・・・もうお手上げです。
ありったけの想像力を駆使して思い描いても・・・イマイチよくわからない。

・・・が、谷口ジローの画力で表現されたエヴェレストは凄い!
目もくらむような高さ、空気の薄さ、空気の冷たさが、直に伝わってくる・・・圧倒的な迫力で、読むものにぐいぐいと迫ってくるのだ。
私のような者にさえ、まるでそこに自分もいるような錯覚に陥る事が出来るのだ。

そして、深町や野性味溢れる羽生など、山の男達はいかにもそういう顔だろうな、っていう感じで全く違和感がない。


原作の中で一番、私の記憶に残っている<羽生丈二の手記>のシーンは鳥肌が立つぐらい素晴らしく表現されている。


さびしいのか
きしよう
いってやっても いいけどな
でもな まだな なっとくが
できないような気がしてな
まてよ
もう ちょっと
きし
きしよう
そんなにかなしそうな
かおするな


夢枕獏の文章も非常にいいのだが、それに更に谷口ジローの絵がつくと最高に素晴らしいシーンとなって読者の眼前に迫ってくる。
夢枕獏って、幸せな小説家だなあって思う。
自分の作品をさらに高めるような漫画家に出会うことが出来たのだから。

最終話<未踏峰>は、漫画のみの話らしい。
ネタバレになってしまうので、どういうラストかは書かないが、実にいいラストだと思う。

この本は何日かかけて寝る前に数ページずつ読んだのだが、ラスト読み終えた時の充足感はまるで高い山を登りきった時の達成感を思わせるような気持ちだった。



「人は何故山に登るのか?」
「人は何故本を読むのか?」



その答えが何となくわかったような気がする。

パシパエーの宴 (とり・みき)

2007-04-22 09:49:49 | 漫画家(た行)
(2006年発行)

実は、とり・みきはギャグ漫画家だという認識しかなかったのです。
ごめんなさい。勉強不足でした。
シリアス系もかなり描いてたんですね。

そういえば、「WXⅢ機動警察パトレイバー」の脚本も書いてましたね。
映画を観に行って<とり・みき>脚本って書いてあって意外だと思った記憶があります。

この本に収録されている作品は、
<シリアス系伝奇・怪奇・SF作品>ばかり。
どれも面白い。

諸星大二郎とか藤子不二雄A「笑ゥせえるすまん」的な雰囲気の好きな人なら気に入る事間違いなし!

赤い花束 (高橋留美子)

2007-04-04 13:58:55 | 漫画家(た行)
(2005年発行)

情けないおやじがいっぱい出てくる。
情けないけど、愛すべきおやじたちだ。

女達は情けないおやじ達に比べてしっかりと現実に向き合ってるっていう感じ。
男はロマンを追いかけて、女は現実を知っている・・・。
本当は女だってロマンを追いかけたいんですよ。
でもね、そういうことをやってると生活やっていけないんです。


昔に比べて男女の役割がどんどん変化している。
そのうち、ロマンを追いかけるのが女で、現実に目を向けるのが男っていう風になるのだろうか?
いやいや、男とか女とか性別関係なく、各人の性格で違ってくるようになるのかもしれない。

ハッピーエンドではない。
かといって、アンハッピーエンドでは勿論ない。

収まるべきところに収まった。
そしてまた、淡々と普通に生活は続いて行く・・・そんな感じ。

これに近いような事はどこにでも起こり得るかもしれない、そんな話。


アドルフに告ぐ (手塚治虫)

2007-04-02 10:41:54 | 漫画家(た行)
もう、名作中の名作。

毎度の事ながら、手塚さん(馴れ馴れしく、勝手にそう呼ばせて頂いている。ごめんなさい。)の話の内容、話の組み立て方には脱帽する。
長編になると、よく使われる手法として、一見全然別の話が平行して描かれ、それらが最後に全て合わさるのだが、その合わさった時の「快感」!・・・何度味わっても気持ちがいい。
勿論、この「アドルフに告ぐ」でもその手法が使われている。
ただ、もう新たな快感に出会うことがないのは、非常に哀しい。
手塚さんが亡くなってもうかなりの年月が経った訳だが、あれからも漫画の世界は相変わらず続いている。当たり前だ。と、思われる方もいらっしゃるだろうが、あの訃報を聞いた時は、真剣に「日本の漫画界はどーなるんだー!!」と心配したのだ。

さて、この作品中で私が一番気に入っているのは、憲兵隊の上級将校の本多大佐。
実に渋いいい男だ。
他にも、魅力的な登場人物は数多いが、挙げているとキリが無いので、これだけにするが、手塚さんの持ちキャラ達も非常にいい悪人ぶり(いい悪人ぶりって何か変な表現だけどね)をみせている。

こんなに凄い作品なのに、思ったほど有名にならないのが、ちょっと残念な気がする。
若い人から見ると、どうしても絵柄が古く感じられて敬遠されるのだろうか??

絵柄がどんどん古くなるのは仕方ない。しかし、話はいい。・・・という事で「ブラック・ジャック」を他の漫画家たちに描かせた訳でもないかもしれないが・・・あれは、描いた漫画家さんたちには、非常に申し訳ないが、「ブラック・ジャック」のパロディか、ファンが作る同人誌程度にしか見えない。

手塚作品は所謂「ダイヤモンド」のようなものだ。
例え、年月が経って古くなったとしても、ダイヤはダイヤ。普通の漫画家の手におえるようなものではないのだ。
ダイヤモンドを加工するのにはダイヤモンドを使うように、手塚作品をリメイクするのにも、物凄い力量のある漫画家でなければ、無理なのだ。

・・・で、現在、それが出来ている唯一の漫画家が浦沢直樹氏であり「PLUTO」のみが手塚作品唯一のリメイク成功作品だと、私は思っている。(まだ完結していないので、成功と言うのは早すぎるかもしれないが・・・)

この「アドルフに告ぐ」なども、そういうリメイク版なら歓迎するが、これは、どちらかというと人間の演じるドラマ版がいいかもしれない。
2時間程の映画では、この魅力を表現するのは難しいだろうから、出来れば、1年間ぐらい、大河ドラマっていう感じですればどうだろうか?
いい監督、いい脚本家、いい俳優に恵まれれば、かなり凄いものが出来ると思うのだが、・・・無理かなぁーーー。


手塚治虫 ぼくの描いた戦争 (手塚治虫)

2007-03-28 12:59:56 | 漫画家(た行)
手塚治虫が亡くなってからも、彼の本はどんどん出版されている。
勿論、新しい作品ではなくて古い作品を色んな形で編集したものだ。

これも、そういった本のひとつ。

タイトルの通り、手塚治虫作品の中から戦争を扱ったものを集めている。

「カノン」「ジョーを訪ねた男」「紙の砦」「ブラック・ジャック-アナフィラキシー」「ゼフィルス」「やまなし」「ブラック・ジャック-
魔王大尉」「どろろ-法師の巻」「墜落機」「大将軍 森へ行く」「1985への出発」

実際に戦争を体験した者が描く戦争の話は実に説得力がある。
手塚治虫・ちばてつや・水木しげる・中沢啓治など、戦争体験を漫画作品にして子どもたちに戦争の悲惨さなどを訴えてきた漫画家も数多くいる。
しかし、時代は流れ、実際に戦争を体験した漫画家たちはすでにこの世を去ったり、かなりの高齢になっている。

これらの漫画は大切に次の世代に伝えていかねばならないものだと思う。

怪談 (高橋葉介)

2007-03-08 01:09:08 | 漫画家(た行)
”帯”に書かれている言葉を書いてみる。
”帯”に書いている言葉はたいていその作品をよく表現している場合が多い。
ま、それを読んで本を買ってくれー!というつもりなんだろうから当たり前だけどね。

さまざまな”愛”を描く、
高橋葉介の幻想オムニバス!
ロマンティックで残酷で、エロスと怪奇が、
いろいろな人生模様を炙り出す、鮮烈な大人の童話(メルヘン)!!


ついでに作者本人による”あとがき”を書き出してみる。

ややアダルト向けの怪談集を出してみたかったのですが、夢がかないました。
本当のことを言いますと、私は流行の怪奇現象だのにはあまり興味がありませんで、かといって人間の情念とか、怨念とか、屈折した心理描写とかを追及するともりもさらさらなく、ただ、”変な話”が好きなわけです。
ですから、内容がないとか、何が言いたいのか解らないと言われても困ります。ただ、”変な話”を描きたかっただけですから・・・。
今後、機会と場所と、物好きな読者に恵まれましたならば、またこの様な本を出してみたいものだと思っております。

と、いうわけなので、はっきり言って内容らしき内容はない。
高橋葉介ファンには「たまりませんわ!!」という感じだけど、
そうでない人には「訳、解らん!!」という感じかもしれない。

悪夢交渉人 (高橋葉介)

2007-03-06 22:53:58 | 漫画家(た行)
発行が平成16年だから、比較的新しい作品。

この人の絵柄はデビュー当時から、結構変化している。
一時期、私好みではなくなりかけていたが、このあたりから、また私の好みの絵柄になりつつある。
嬉しい限りだ。

・・・で、この作品。
主人公が「人々の悪夢を金で引き取る商売」をしている。という設定。
設定もいいし、主人公のキャラが結構魅力的なのに、たった4話しかない。
打ち切りになったのか、それともどこかの雑誌で連載中なのか?
ちょっと気になる。

これも、それ程は怖くない。と思うんだけど、どうなんだろう??

腹話術 (高橋葉介)

2007-03-05 04:39:08 | 漫画家(た行)
(昭和54年発行)

カバー折り返し部分の説明文より

新鋭の柔らかな感覚が、奇妙な世界を創り出す。
夢の中の散歩のように、無限の世界(イメージ)が広がっていく。
作画の妙、アイデアの新鮮さ!
さあ遊ぼう、幻想の巷に!
さあ酔おう、ロマンの美酒に!
ヨウスケの短編集第一弾。


高橋葉介の初期の作品が13編入っている。


この頃の筆のタッチは今見てもやっぱり素敵だ。

シリアスで不思議な世界もあれば、めちゃくちゃなギャグもある。
髪の毛の表現法なんて筆のタッチで変幻自在。
おどろおどろしい死者の群れも筆でさらさらっと描けばペンで描くよりずっと雰囲気が出る。


「腹話術」は
腹話術士師だった父親が死に、ひとりぼっちになった少年が健気にひとりで生きていこうとするのだが、結局雪の降る街かどで一人さびしく死んでいく。
という哀しい短編。
少年の台詞はない。少年の台詞は全て<腹話術>なのだ。

彼の周りのものたちが彼に話しかける。
ある時は死んだ父親、ある時はカラス、
大きな木も彼を励ますように語りかける。
「胸を張れよ
顔を上げて歩け
もっと大きな街へ行くんだ」

しかし、金もなくお腹もすき、街角で座り込んでしまった少年。
彼の周りのごみ、街灯、ねずみ・・・全てのものが彼に語りかける。
「さみしくなんかなかった」
「一人ぼっちじゃなかった」
「おれたちがいたから」

翌朝、少年は息絶えていた。
しかし、彼の死を悼むかのように街灯たち、周りのモノが唱える。

「アーメン」
「アーメン」
「アーメン」・・・


今読むと、いかにも初期作品だな~っていう感じがする。
初々しくて、作者が実に丁寧に心をこめて描いた作品、っていう感じだ。
読んでいる者の心に何か不思議な感情が湧き上がり、
じわ~っと、透明な哀しみが心の奥底に沈みこんでいく・・・そんな作品。


X-DAY  (田村由美)

2007-02-21 08:57:58 | 漫画家(た行)
(1993年発行)

<作品紹介より>

★人は間違える、人は思い込む、人には言葉があるのに…。
その「間違い」や「思い込み」ゆえに起きる恐るべき惨劇、4エピソードを描いた「X-DAY」。
別冊少女コミックの増刊号”花林”に掲載された、表題作をはじめとする4編の異色作を収録した作品集です。

この人の描く絵は少女マンガにしては、ごっつい感じがする。
最初は編集さんなどにいろいろと言われていたそうだが、これはこれで個性としていいのではないかと思う。
少女マンガはごっつい男はダメ・・・なんてことないですよね~。
青池保子なんて、登場人物ほとんどおっさんばかりで、しかも”馬面”!
それでも、ちゃ~~んと少女マンガですものね。(笑)

この短編集は、人間の内に潜む心理をテーマにしたもので、どれも結構面白い。
私は、この手のストーリーが好きだ。
この作者が描いている「BASARA」など長編もいいが、短編もなかなかいい。




・・・で、この作品には直接関係ないのだが・・・

紹介文にもある言葉
「人は間違える、人は思い込む、人には言葉があるのに…。」


人には言葉があるのに…。


若い頃は一生懸命に話せば相手は必ずわかってくれると信じていた。
しかし、年をとって経験も積み、いろいろ本も読み・・・
今では、残念ながら言葉は万能ではないとわかってきた。


どんなに一生懸命に説明しても自分の想いを完璧に相手に伝えることは出来ない。
相手の想いも一生懸命にわかろうとしても完璧に理解は出来ない。


だからこそ、常に相手の想いを少しでもわかるように努力したいと思うのだ。


言葉が万能だという考えは・・・もしかすると人間の思い上がりなのかもしれない。

いいひと。 (高橋しん)

2007-02-05 09:19:14 | 漫画家(た行)
(最終巻発行1999年)



今年の箱根駅伝を見てて、ふと「いいひと。」をもう一度読みたくなった。



全26巻を図書館で借りてきて毎日数冊ずつ読んでいったのだが、正直言ってちょっと疲れた。
以前読んだときは箱根駅伝の話がもっとあったように思ったのに今回読んでみると、思ったより少なかったのでちょっと驚いた。
いつのまにか私の頭の中では<「いいひと。」=箱根駅伝>という風になっていたみたいだ。
それだけ、私にとって箱根駅伝の章が一番印象に残っていたのかもしれない。



今回は何故疲れたのか?
主人公のゆーじはいい人だと周りの人たちに言われてるが本当にいい人なのか?
・・・という疑問を感じたのだ。
<いい人>という定義は何だろう?
自分が時間に遅れるかもしれないのに、迷子の親を捜したり、道に迷った人を案内することだろうか?
・・・では、ゆーじの面接をするために待っている面接官、或いは新人研修で遅刻せずに集まってる人たちを待たせるのはどうなるのだろう?
待っている人たちの事は考えないのはいい人なのか?
「自分の周りにいる人を幸せにしたい。」
すごくいい事を言ってるような気がするが、自分の目の前の人に親切にするともう少し離れた所にいる人が困るという状況になるのは、どうするのだろう?



つまり・・・いい人・・・なんて所詮<自己満足>なのではないだろうか?



などと、ちょっとひねくれた見方をしてしまったのだ。

勿論、漫画として描く場合、その性格をわざと強調することによって分かりやすくしている・・・っていう事はわかってるんだけどね。(笑)

以前読んだときはそんな事全く考えないで、素直に読んだのだけどね。
それだけ、私も年をとってしまったってことなのかな~?(笑)



<読者の皆さんへ。>より一部抜粋

作品のテーマが「ものごとの常識やノウハウに縛られないで、もう一度人として本当にいいことを思い出すことが出来たら」
(中略)
すなわち、主人公であるゆーじは媒体であり、本当の主人公はゆーじ以外のキャラクターすべてであること。ゆーじが最初に妙子に言った「おれは、変わらないから」を体現する形にすること。
「いいひと。」の「。」の由来を連載が始まってからいろいろな方にお話しました。
ゆーじを表す「いいひと」ではなく、言葉としてのいいひと、つまり「ゆーじの周りの、作品の中の確かに生きているたくさんの人々、その環境」それが「いいひと。」なんだという思いです。



作者はタイトルの「いいひと。」は、ゆーじを表す「いいひと。」ではないと書いてます。
でも、ゆーじがいい性格の人ではあるわけです。
他の登場人物たちもみんないい性格の人です。



とってもいい作品です。
作者自身もとってもまっすぐな性格の<いい人>のように思います。



変にひねくれて読まずに素直な気持ちで読まなければ・・・!
・・・と、年取ってひねくれてしまった私は反省するのでした。。。(笑)

おともだち (高野文子)

2007-01-08 00:45:07 | 漫画家(た行)
(1983年 綺譚社から発行 ここで使用している画像は1993年筑摩書房発行のもの)


高野文子は作品ごとにがらりと絵柄を変える。
絵柄だけではない、内容、テーマ、表現法・・・すべて変えてしまうという凄い漫画家だ。


この本に収録されている五編も全てイメージが違う。


どれもステキな作品なのだが、この中では一番「春ノ波止場デウマレタ鳥ハ」が気に入っている。


時代はたぶん大正時代ぐらい。
港町にある女学校で行われた開港記念祭でのだしもの「青い鳥」を演じる女学生たちを描いた作品。
彼女たちの心情を実に細やかに描いてるのは勿論のこと、
とにかく画面が非常に美しい!!!


絵柄は、大正時代頃の雰囲気を漂わしているレトロな感じ。
かと言って古臭さは微塵も感じられない。
古風と現代風が見事に調和した雰囲気。


少女たちの夢見るような眼差し。
哀しみ、喜び、憂い・・・どの表情もうっとりするぐらい美しい。
何気ない指の先まで美しい。


全編、どのコマも無駄のない美しさ!
特に、「青い鳥」の演劇シーンなどは鳥肌が立つぐらい美しい~!!


ラスト・・・
しっとりと余韻のある終わり方。


こんな素晴らしい作品を読めることが出来るなんて、自分は幸せ者だ~~!!
・・・と思ってしまう、そんな作品。

かの蒼空に (谷口ジロー・関口夏央)

2007-01-06 13:31:50 | 漫画家(た行)
(1992年発行)


『坊っちゃん』の時代 第三部。


第一部では夏目漱石、第二部では森鴎外が主人公だった。
そして今回は石川啄木。


関川・谷口コンビの素晴らしさに関しては言うまでもないので、今回は石川啄木像についての感想を少し書いてみる。


恥ずかしながら、勉強不足で啄木に関しては、
短歌をいくつか知っているっていうことと、貧しかったっていう程度しか知らなかった。


この作品の中の啄木像には驚かされることばかり!


確か、よく借金をしていたとは聞いてたけど、こんなにしてたのか~~!
・・・とか、
え~~~!!浅草に通い娼妓と遊んでた~!?・・・
ああ、そういえばローマ字日記とか聞いた事があるような・・・
金田一京助に、めちゃくちゃ頼ってたとか・・・
あれ~!金田一春彦のお父さんってこんな感じの人だったんだ~!
とっても人の良い人だったんだね。うん。金田一春彦もTVで見ただけだけど、いかにも人の良さそうな感じの人だったよね。父子似てるのかもしれないね。


等など・・・自分の無知さを暴露してしまうが、知らない事ばかりで新鮮な驚きでいっぱいだった。


これを読んでから『一握の砂』とか『悲しき玩具』を読めば、以前とは違った観点で味わうことが出来るかもしれない・・・。そう思った。

不機嫌亭漱石 (谷口ジロー 関川夏央)

2007-01-06 13:13:22 | 漫画家(た行)
(1997年発行)


これで「『坊っちゃん』の時代」全五部は完結する。


第一部の主人公であった漱石がここで再び主人公になる。


そして、今回は漱石ファンなら誰でも知っている<修善寺の大患>のエピソードが描かれている。


「修善寺の大患」とは、
胃潰瘍の療養のため伊豆の修善寺で転地療養しようとした漱石が、
そこで800gにも及ぶ大吐血をおこし、生死の間を彷徨う危篤状態に陥った事件を指す。
(30分間死んでいた)


最晩年の漱石は「則天去私」を理想としていたが、
この時の心境を表したものではないかと言われている。


蛇足になるが、松山市にある道後温泉の三階にある有料の休憩室に「則天去私」の掛け軸が掛かっているらしい。
そこには「小さな私を去って自然にゆだねて生きること」と解説がついてるそうだ。


「則天去私」の解釈についてはいろいろな説があるようだが、とりあえず一般的にはこの解説でよいと思う。


・・・で、その三十分間の<死>の間、漱石が見ていたかもしれないものをこの作品で描いてるわけなのだが、それが実にすばらしい!
ナルホド、本当にこういうものを見たかもしれない・・・そう感じさせられるものなのだ。


この巻での漱石の表情も実にいい。
不機嫌な表情、悲しい表情、困った表情、戸惑う表情・・・どれもリアルで、
本物の漱石もたぶんこういう感じだったんだろうな~って思ってしまう。
そのくらい説得力のある表情なのだ。


私はもともと漱石が好きだったのだが、この作品を読んでますます好きになってしまった♪(笑)


ラスト7ページは実に美しい。
日本列島全体から関東地方、東京へと画面は降りていく。
漱石の家の屋根。
そして鼻毛を抜いている漱石。(笑)
桜の木の上にいる黒猫。


第一部での導入部分と似た感じにしている。


ラスト1ページは漱石のアップ!!!
う~~~ん。
この漱石の表情・・・一体何を表してるのだろう???

1ポンドの福音 (高橋留美子)

2007-01-03 09:30:51 | 漫画家(た行)
(1989年~1996年発行)

<フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より>
初出は1987年。約20年かけて進んだ物語はヤングサンデー2007年3/4合併号にて完結。単行本も2007年3月に最終巻である4巻が刊行され、完結する予定。1988年にアニメ (OVA) 化もされている。
内容はラブコメディーともスポ根もの(ボクシングもの)とも取れ、かつどちらとも取れない様な作品になっている。



優しいけれど、意地っ張りで超ヤキモチやきの女を描かせたら高橋留美子の右に出るものはいない!(笑)
この作品にでてくるシスターアンジェラも、そのひとり。


主人公の耕作はシスターアンジェラが好きなのだが、相手は<シスター>!
結ばれるわけないじゃないですか~!


とはいえ、少しずつシスターの心も・・・。


これって、もしかして<スポ根漫画>!?
全く気がつかなかった~!
そういや、ボクシングしてたような・・・?(笑)
う~~~ん。
スポ根ものはどちらかというと苦手だが、こういうものなら楽しく読めます~~♪