ベルギーの首都ブリュッセルで22日発生した連続爆破テロは、米大統領選の候補指名争いに差し迫った試練を突きつけるでしょう。不安を抱える有権者は、こうした課題に対処し米国を守るために最も周到な用意があるのはどの候補者か判断しようとするからです。
ブリュッセルの連続爆発は、130人の死者を出したパリ同時多発テロの計画に関与したとされるサラ・アブデスラム容疑者の拘束からわずか4日後に発生しました。また、この日はアリゾナとユタの両州で予備選挙が実施されるほか、アイダホ州では民主党の党員集会が予定されています。
2016年大統領選へ向け活動が本格化した昨年以降、幾度かテロ攻撃が起こりました。14人が殺害された、12月のカリフォルニア州での銃乱射テロもその一つです。テロ事件が発生するごとに、大統領選の論調に影響が及びました。ただ、このところの選挙戦では、討論の焦点は貿易や移民政策、イスラエルとの外交関係へと移っていきました。
ブリュッセルの連続爆発を受け、候補者そして有権者の関心がにわかにテロの脅威へと引き戻される可能性があります。世界の情報機関や警察が手掛かりを求めて捜査を展開しているにもかかわらず、過去1年半で数百人がテロの犠牲となりました。
共和党の候補指名争いでトップを走るドナルド・トランプ氏は、テロとの闘いで強硬姿勢を取ると主張し、多くの支持を得ました。過激派組織「イスラム国」(IS)に人々が加わらないよう、テロリストの家族に対し措置を講じるとし、戦闘員とおぼしき者を罰したり情報を引き出すために厳しい尋問手法を用いたりすることも検討すると表明しました。さらに、大半のイスラム教徒の入国を一時的に禁止することを提案し、賛否両論を呼んだのです。
トランプ氏は昨年12月2日のカリフォルニア州サンバーナディーノのテロ攻撃から数日後にこうした政策提案を行った際、多数の共和党員のあざけりを受けましたが、その後も自らの主張を固持し、これまでの予備選では支持者の多くがこの案に賛成すると言明しました。トランプ氏はさらに、ISがコミュニケーションと戦闘員勧誘の手段にインターネットを使用しており、ISのネット接続を切断したいと語っていました。
また、メキシコとの国境に1000マイル(約1600キロメートル)の壁を建設するとも言明。これが招かれざる不法移民の米国への流入を防ぐ手段だとしていました。
共和党候補指名争いでトランプ氏の対抗馬として勢いを保っているテッド・クルーズ上院議員(テキサス州)も、テロ組織との闘いへ迅速に手を打つと断言しています。近ごろ選挙陣営に迎えた複数のアドバイザーはいずれもイスラム教徒に批判的で、過激派組織とテロのつながりに厳しい目を向けています。
残る第三の共和党候補者、オハイオ州のジョン・ケーシック知事の政策提案はより慎重ではありますが、過去に連邦議会議員として国防と中東問題に関わることで得た経験に根ざすところが大きいのです。
一方、民主党本命候補のヒラリー・クリントン氏は、国務長官時代に安全保障問題で上げた実績を前面に押し出しています。21日には米国イスラエル公共問題委員会(AIPAC)で演説し、世界が米国の次期大統領に求めているのは「冷静さ」だと述べました。これはトランプ氏の血気盛んな弁舌や、時に自己矛盾する安全保障政策に対する批判とも受け止められます。クリントン氏は、ISの世界各地での資金移動を困難にし、インターネット上の勧誘を阻止するとともに、米国内のイスラム教組織と密に協力して過激化を防ぐ策を提案しています。
国務省での経験から、クリントン氏は外交政策に関し他の候補者より多くの実績と人間関係を持っています。しかし、そのことは同時に、オバマ政権下で2009〜13年の任期中にISの台頭を抑え中東不安を鎮めるための対策を十分打たなかったとの批判にさらされる理由ともなっています。
軍事専門家や外交・情報機関専門家は、テロ組織がここ1年に欧州を標的とする攻撃を計画できたのは、シリアとイラクで広大な地域を実効支配し、指揮統率する作戦拠点を得たためだと指摘しています。米政府と同盟国はテロ組織の支配地域縮小に取り組んできましたが、成果は乏しいものであります。これはつまり、米次期大統領はシリアとイラク、リビアの広大な混乱地域や、ともすれば至る所で活動を続けるテロ組織に対処しなければならない公算が大きいということです。(ソースWSJ)
ブリュッセルの連続爆発は、130人の死者を出したパリ同時多発テロの計画に関与したとされるサラ・アブデスラム容疑者の拘束からわずか4日後に発生しました。また、この日はアリゾナとユタの両州で予備選挙が実施されるほか、アイダホ州では民主党の党員集会が予定されています。
2016年大統領選へ向け活動が本格化した昨年以降、幾度かテロ攻撃が起こりました。14人が殺害された、12月のカリフォルニア州での銃乱射テロもその一つです。テロ事件が発生するごとに、大統領選の論調に影響が及びました。ただ、このところの選挙戦では、討論の焦点は貿易や移民政策、イスラエルとの外交関係へと移っていきました。
ブリュッセルの連続爆発を受け、候補者そして有権者の関心がにわかにテロの脅威へと引き戻される可能性があります。世界の情報機関や警察が手掛かりを求めて捜査を展開しているにもかかわらず、過去1年半で数百人がテロの犠牲となりました。
共和党の候補指名争いでトップを走るドナルド・トランプ氏は、テロとの闘いで強硬姿勢を取ると主張し、多くの支持を得ました。過激派組織「イスラム国」(IS)に人々が加わらないよう、テロリストの家族に対し措置を講じるとし、戦闘員とおぼしき者を罰したり情報を引き出すために厳しい尋問手法を用いたりすることも検討すると表明しました。さらに、大半のイスラム教徒の入国を一時的に禁止することを提案し、賛否両論を呼んだのです。
トランプ氏は昨年12月2日のカリフォルニア州サンバーナディーノのテロ攻撃から数日後にこうした政策提案を行った際、多数の共和党員のあざけりを受けましたが、その後も自らの主張を固持し、これまでの予備選では支持者の多くがこの案に賛成すると言明しました。トランプ氏はさらに、ISがコミュニケーションと戦闘員勧誘の手段にインターネットを使用しており、ISのネット接続を切断したいと語っていました。
また、メキシコとの国境に1000マイル(約1600キロメートル)の壁を建設するとも言明。これが招かれざる不法移民の米国への流入を防ぐ手段だとしていました。
共和党候補指名争いでトランプ氏の対抗馬として勢いを保っているテッド・クルーズ上院議員(テキサス州)も、テロ組織との闘いへ迅速に手を打つと断言しています。近ごろ選挙陣営に迎えた複数のアドバイザーはいずれもイスラム教徒に批判的で、過激派組織とテロのつながりに厳しい目を向けています。
残る第三の共和党候補者、オハイオ州のジョン・ケーシック知事の政策提案はより慎重ではありますが、過去に連邦議会議員として国防と中東問題に関わることで得た経験に根ざすところが大きいのです。
一方、民主党本命候補のヒラリー・クリントン氏は、国務長官時代に安全保障問題で上げた実績を前面に押し出しています。21日には米国イスラエル公共問題委員会(AIPAC)で演説し、世界が米国の次期大統領に求めているのは「冷静さ」だと述べました。これはトランプ氏の血気盛んな弁舌や、時に自己矛盾する安全保障政策に対する批判とも受け止められます。クリントン氏は、ISの世界各地での資金移動を困難にし、インターネット上の勧誘を阻止するとともに、米国内のイスラム教組織と密に協力して過激化を防ぐ策を提案しています。
国務省での経験から、クリントン氏は外交政策に関し他の候補者より多くの実績と人間関係を持っています。しかし、そのことは同時に、オバマ政権下で2009〜13年の任期中にISの台頭を抑え中東不安を鎮めるための対策を十分打たなかったとの批判にさらされる理由ともなっています。
軍事専門家や外交・情報機関専門家は、テロ組織がここ1年に欧州を標的とする攻撃を計画できたのは、シリアとイラクで広大な地域を実効支配し、指揮統率する作戦拠点を得たためだと指摘しています。米政府と同盟国はテロ組織の支配地域縮小に取り組んできましたが、成果は乏しいものであります。これはつまり、米次期大統領はシリアとイラク、リビアの広大な混乱地域や、ともすれば至る所で活動を続けるテロ組織に対処しなければならない公算が大きいということです。(ソースWSJ)