投資家らはドル高シナリオをまた引っ張り出してきた。
ドルは29日、3週間ぶりの高値をつけました。米連邦準備制度理事会(FRB)が早ければ9月にも利上げする可能性があるとの期待を反映しています。金利が上がればドル建て資産の投資妙味が増すことになります。
市場参加者らは、ドルが円やユーロ、あるいは一部の新興国通貨に対して一段と上伸する兆候に目を光らせています。今年のドル相場は、多くの国々の低調な景気回復に阻まれてきました。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のドル指数は年初来4%低下し、2016年のドル高を予想した多くのアナリストらの顔をつぶしています。
米商品先物取引委員会(CFTC)とスコシア銀行の資料によると、8月23日までの週におけるドル高を想定した持ち高は71億8000万ドルで、7月下旬よりも150億ドル近く減っています。スコシア銀行のチーフ為替ストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は、「(投資家らは)現在、ドルの持ち高を低めにとっている」と指摘しました。
ドル相場が大きく動くと、米国株から新興諸国の債券、さらにはドル安を追い風としてきた多くの資源(コモディティー)相場が混乱する可能性があります。
その一つのきっかけとなり得るのが、9月2日に発表される8月の米雇用統計です。雇用統計が強ければ、FRB当局者らが先ごろ指摘した利上げの根拠が強まる可能性があります。26日にFRBのイエレン議長とフィッシャー副議長は、米経済は今年最初のフェデラルファンド(FF)金利引き上げを正当化するほどの強さがあると語りました。これらの発言を手掛かりに、16通貨のバスケットに対するドル相場を示すWSJのドル指数は1日としては2カ月ぶりの大幅な上昇となりました。
BNPパリバの北米為替戦略責任者、ダニエル・カジブ氏は「今後はドル高の期間になる」と指摘しています。
ドル高は、米国への輸入品を割安にし、米国の消費者や企業の購買力を高め、物価を押し下げます。しかし、国外事業を大規模に展開している米多国籍企業の利益も打撃を受けます。この業種は規模が大きく、米国内の成長が弱いなかで注目を集めています。また、インフレ率がここ数年、FRBが長期目標とする水準を下回り続けている中で、物価にはさらに下ぶれ圧力がかかります。
ドル高は、今年最初の2カ月で多くの資産クラスが世界的に売り込まれたことからも明らかな通り、米国以外の国々にとってはさらに問題をはらんでいる。
原油をはじめとする資源相場はドル建てなので、ドルが強くなると米国以外の買い手にとってはさらに割高になります。このため資源需要が抑えられ、物価の下落循環につながる可能性があります。そして世界の需要軟化は、世界経済の健全性に対し弱気なシグナルを発しかねないのです。
一方、長年にわたり低成長と低インフレに悩まされてきた欧州と日本にとっては、ドル高は朗報になり得えます。これらの国々の通貨高は、金融緩和政策を通じて競争力を高めようとする取り組みを邪魔してきました。
しかし、ドル高は、今年巨額な投資資金流入を受けているブラジルやトルコなどの新興諸国にも打撃となる公算が大きくなります。新興諸国の企業は多くがドルで借り入れを行っており、ドル高になると返済が厳しくなるため、幅広く無秩序な売りにつながる可能性への懸念が高まっているのです。
同時に、FRBの利上げをあてにすることをためらう投資家も多いのです。FRBは昨年12月に1回利上げした後は現状維持を続け、多くの投資家が予想したよりもはるかにゆっくりとした金融引き締めの姿勢をとっています。FRBはまだら模様な米経済の回復を拙速な利上げで損なうことを嫌うと同時に、米国の利上げが世界の市場を混乱させることを恐れているのです。
BNPパリバでは、年末までに円安・ドル高が6%進みドルは108円をつけると予想しています。
しかし、FRBが今年利上げすると予想する投資家でさえ、その後の追加利上げがすぐに続くかについては疑っているようです。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の資料によると、FF金利先物が織り込む来年7月までにFRBが2回利上げする確率はわずか30%です。
カナダのトロントを拠点とするAGFインベストメンツの運用担当者、トム・ナカムラ氏は、FRBの今後の利上げ方針を巡る不透明感がドル高相場を抑えると予想しています。同氏は新興国通貨とカナダドルに対する強気見通しを維持しています。「市場にとって、FRBがどのような経路をたどるか考えるのは難しくなっています。ドル相場は大丈夫だと私たちも思いますが、大きな上げ相場にはならないだろう」と語っています。(ソースWSJ)
ドルは29日、3週間ぶりの高値をつけました。米連邦準備制度理事会(FRB)が早ければ9月にも利上げする可能性があるとの期待を反映しています。金利が上がればドル建て資産の投資妙味が増すことになります。
市場参加者らは、ドルが円やユーロ、あるいは一部の新興国通貨に対して一段と上伸する兆候に目を光らせています。今年のドル相場は、多くの国々の低調な景気回復に阻まれてきました。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のドル指数は年初来4%低下し、2016年のドル高を予想した多くのアナリストらの顔をつぶしています。
米商品先物取引委員会(CFTC)とスコシア銀行の資料によると、8月23日までの週におけるドル高を想定した持ち高は71億8000万ドルで、7月下旬よりも150億ドル近く減っています。スコシア銀行のチーフ為替ストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は、「(投資家らは)現在、ドルの持ち高を低めにとっている」と指摘しました。
ドル相場が大きく動くと、米国株から新興諸国の債券、さらにはドル安を追い風としてきた多くの資源(コモディティー)相場が混乱する可能性があります。
その一つのきっかけとなり得るのが、9月2日に発表される8月の米雇用統計です。雇用統計が強ければ、FRB当局者らが先ごろ指摘した利上げの根拠が強まる可能性があります。26日にFRBのイエレン議長とフィッシャー副議長は、米経済は今年最初のフェデラルファンド(FF)金利引き上げを正当化するほどの強さがあると語りました。これらの発言を手掛かりに、16通貨のバスケットに対するドル相場を示すWSJのドル指数は1日としては2カ月ぶりの大幅な上昇となりました。
BNPパリバの北米為替戦略責任者、ダニエル・カジブ氏は「今後はドル高の期間になる」と指摘しています。
ドル高は、米国への輸入品を割安にし、米国の消費者や企業の購買力を高め、物価を押し下げます。しかし、国外事業を大規模に展開している米多国籍企業の利益も打撃を受けます。この業種は規模が大きく、米国内の成長が弱いなかで注目を集めています。また、インフレ率がここ数年、FRBが長期目標とする水準を下回り続けている中で、物価にはさらに下ぶれ圧力がかかります。
ドル高は、今年最初の2カ月で多くの資産クラスが世界的に売り込まれたことからも明らかな通り、米国以外の国々にとってはさらに問題をはらんでいる。
原油をはじめとする資源相場はドル建てなので、ドルが強くなると米国以外の買い手にとってはさらに割高になります。このため資源需要が抑えられ、物価の下落循環につながる可能性があります。そして世界の需要軟化は、世界経済の健全性に対し弱気なシグナルを発しかねないのです。
一方、長年にわたり低成長と低インフレに悩まされてきた欧州と日本にとっては、ドル高は朗報になり得えます。これらの国々の通貨高は、金融緩和政策を通じて競争力を高めようとする取り組みを邪魔してきました。
しかし、ドル高は、今年巨額な投資資金流入を受けているブラジルやトルコなどの新興諸国にも打撃となる公算が大きくなります。新興諸国の企業は多くがドルで借り入れを行っており、ドル高になると返済が厳しくなるため、幅広く無秩序な売りにつながる可能性への懸念が高まっているのです。
同時に、FRBの利上げをあてにすることをためらう投資家も多いのです。FRBは昨年12月に1回利上げした後は現状維持を続け、多くの投資家が予想したよりもはるかにゆっくりとした金融引き締めの姿勢をとっています。FRBはまだら模様な米経済の回復を拙速な利上げで損なうことを嫌うと同時に、米国の利上げが世界の市場を混乱させることを恐れているのです。
BNPパリバでは、年末までに円安・ドル高が6%進みドルは108円をつけると予想しています。
しかし、FRBが今年利上げすると予想する投資家でさえ、その後の追加利上げがすぐに続くかについては疑っているようです。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の資料によると、FF金利先物が織り込む来年7月までにFRBが2回利上げする確率はわずか30%です。
カナダのトロントを拠点とするAGFインベストメンツの運用担当者、トム・ナカムラ氏は、FRBの今後の利上げ方針を巡る不透明感がドル高相場を抑えると予想しています。同氏は新興国通貨とカナダドルに対する強気見通しを維持しています。「市場にとって、FRBがどのような経路をたどるか考えるのは難しくなっています。ドル相場は大丈夫だと私たちも思いますが、大きな上げ相場にはならないだろう」と語っています。(ソースWSJ)
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