★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ヨセフ・スークのベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第9番「クロイツェル」/第5番「春」

2023-08-03 09:41:14 | 室内楽曲(ヴァイオリン)


ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第9番「クロイツェル」
        ヴァイオリンソナタ第5番「春」

ヴァイオリン:ヨセフ・スーク

ピアノ:ヤン・パネンカ

発売:1974年5月

LP:日本コロムビア(SUPRAPHON) OP‐7048‐S

 このLPレコードは、ヴァイオリンのヨセフ・スーク(1929年―2011年)とピアノのヤン・パネンカ(1922年―1999年)の名コンビによる名演奏を聴くことができる、恰好の録音である。ヨゼフ・スークは、チェコのプラハ生まれのヴァイオリニスト。祖母はドヴォルザークの娘、祖父は同名の作曲家でヴァイオリニストのヨゼフ・スークという恵まれた音楽環境に生まれ、幼い頃から英才教育を受け天賦の才能を開花させていった。プラハ音楽院と音楽アカデミーを卒業後、ソロ、室内楽、指揮にも活躍。ボヘミア・ヴァイオリン楽派に属するヨセフ・スークのヴァイオリン演奏は、端正で、美しい音色が特徴である。決して人工的な装飾をするようなことはせずに、流れるように歌うようなそのヴァイオリン奏法は、一度聴くと強い印象をリスナーに与えずにはおかない。音色の美しいヴァイオリニストは、往々にして、演奏内容はというと希薄になりがちだが、スークに限ってはそのようなことは微塵もなく、一本筋の通った確固たる信念で曲の真髄に迫る演奏には迫力を感じる。そのヨセフ・スークも既に他界してしまい、寂しい限りである。しかし、このLPレコードを含め、多くの録音を遺してくれたことは、今となってはリスナーへのまたとない贈り物になっている。一方、ピアノのヤン・パネンカは、チェコ、プラハ生まれ。プラハ音楽院とレニングラード音楽院で学ぶ。1951年の「スメタナ国際コンクール」で第1位を獲得、注目を集めた。1972年にはベートーヴェンのピアノ協奏曲の演奏で国家賞を受賞している。ヤン・パネンカは ピアノ演奏の技巧については、超一流の腕を持っていたが、現役時代はソリストというより室内楽の一員としての存在感が強く感じられた。その意味でもヨセフ・スークとコンビを組むとその力を遺憾なく発揮し、現にこのLPレコードを聴くと、スークとの相性の良さが強く印象に残る。ヤン・パネンカは、ヴァイオリンのヨセフ・スーク、チェロのヨゼフ・フッフロと3人でスーク・トリオを結成し、数多くの録音も残している。このLPレコードでのベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第9番「クロイツェル」の演奏は、スークとパネンカの持つ特徴が遺憾なく発揮されており、聴き終わると端正な奥深さに加えて、清々しい印象を強く受ける。ヴァイオリンソナタ第5番「春」は、「クロイツェル」以上に成功した演奏内容と言ってもよく、文字通り“春”の香りが匂い立つような名演となっている。(LPC)


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