フランク:ヴァイオリンソナタ
フォーレ:ヴァイオリンソナタ第1番
ヴァイオリン:ジャック・ティボー
ピアノ:アルフレッド・コルトー
LP:東芝音楽工業 ANGEL RECORD GR-25(COLH-74)
このLPレコードは、文字通りの典型的な歴史的名盤の1枚である。録音は、フランク:ヴァイオリンソナタが1929年5月、フォーレ:ヴァイオリンソナタ第1番が1927年6月であり、今から90年以上前となる。いずれもSPレコードからLPレコードへと音源が移行されたものであり、現在の録音の音質レベルとは比較することはできず、現在において鑑賞に耐えうるかどうかはリスナー次第としか言いようがない。ところが、音質はともかく演奏自体は、これら2曲の古今の録音の中でも1位、2位を争う名盤中の名盤ということができる。ジャック・ティボーのしなうような微妙な弓遣いのヴァイオリンの幽玄な響き、それに、アルフレッド・コルトーの詩的で妖艶な趣を漂わせたピアノの音色が、相互に絡み合い、ある時は、互いに頷きあうように協調し、また、ある時は、それぞれの持ち味を存分に発揮し合う。要するに、室内楽として求められる全ての要素を、この二人の名手は、この録音で遺憾なく発揮しているのである。聴き始めは、その録音の古さに、少々たじろぐが、聴き進むうちに、そんな録音の古さなどは、徐々に忘れ去り、リスナーは二人の名演に、ただただ聴き惚れることになる。フランク:ヴァイオリンソナタは通常、力強く一気に演奏されることが多いが、ティボーとコルトーは、むしろこの曲の持つ移ろいやすい陽炎のような情緒を存分にリスナーに送り届けてくれる。フォーレ:ヴァイオリンソナタ第1番は、フォーレの曲の持つ詩的な部分はそのままに、他の演奏では、あまり聴けないような輪郭のはっきりした演奏に徹する。ジャック・ティボー(1880年―1953年)は、フランス出身のヴァイオリニスト。独奏者として活躍する傍ら、1905年、アルフレッド・コルトー、パブロ・カザルスとともに三重奏団(カザルス三重奏団)を結成。1943年には、現在、若手演奏家の登竜門として知られる「ロン=ティボー国際コンクール」をマルグリット・ロンと共同で創設した。一方、アルフレッド・コルトー(1877年―1962年)は、フランス出身のピアニスト。当初、ピアニストとして楽壇にデビューしたが、ワーグナーの作品に傾倒し、バイロイト音楽祭の助手を務めたこともある。1902年頃からは指揮者としても活動し、ワーグナーの「神々の黄昏」のフランス初演を行うなどした。ピアニストとしては、特にショパン弾きとしての名声を博した。(LPC)
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