★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ウィーン・フィルハーモニー弦楽四重奏団のモーツァルト:弦楽四重奏曲第20番「ホフマイスター」/第22番「プロシャ王第2」

2023-05-18 09:43:49 | 室内楽曲(弦楽四重奏曲)

 

モーツァルト:弦楽四重奏曲第20番「ホフマイスター」
         弦楽四重奏曲第22番「プロシャ王第2」

弦楽四重奏:ウィーン・フィルハーモニー弦楽四重奏団

         ウィリー・ボスコフスキー(第1ヴァイオリン)
         オットー・シュトラッサー(第2ヴァイオリン)
         ルドルフ・シュトレンク(ヴィオラ)
         エマニエル・ブラベック(チェロ)

発売:1979年

LP:キングレコード GT9253

 このLPレコードのモーツァルト:弦楽四重奏曲第20番「ホフマイスター」と弦楽四重奏曲第22番「プロシャ王セット第2」は、有名な弦楽四重奏曲「ハイドンセット」や弦楽五重奏曲、それにクラリネット五重奏曲などの他の室内楽曲と比べると地味な存在であるし、それほど演奏される曲でもない。しかし、その地味な存在であるこの2曲の弦楽四重奏曲をじっくりと聴いてみると、その奥底に潜むモーツァルトの豊かな音楽性が息づいているのが聴き取れ、何とも心豊かな一時を過ごすことができるのだ。弦楽四重奏曲第20番「ホフマイスター」について、モーツァルトの権威であるアルフレッド・アインシュタインは「モーツァルトがウィーンの楽譜出版社ホフマイスターからの借金の代償としたのではないか」と推測するほど、他の弦楽四重奏ほど重きを置かれていない曲ではある。しかし、その内容は緻密で、いたるところにモーツァルトらしい機知に富んだ楽想が組み込まれており、聴けば聴くほど親しみが湧いてくる曲である。アメリカに帰化したドイツの音楽学者のアルフレッド・アインシュタイン(1880年―1952年)は、この第20番「ホフマイスター」について「ハイドンセットの特質を総合するとともに、和声の色彩豊かな扱いの点ではシューベルトを予感させる」と書き遺している。一方、弦楽四重奏曲第22番「プロシャ王第2」は、チェロの演奏に長じていたプロシャ国王フリードリッヒ・ウィルヘルム2世の依頼を受け作曲した3曲(「プロシャ王セット」)のうちの2番目の曲。この「プロシャ王セット」の3曲がモーツァルトの最後の弦楽四重奏曲となった。大王がチェロを得意としていたことを意識し、チェロが高音域でソロ的に旋律を担うなど、3曲ともチェロ・パートが第1ヴァイオリンと互角に活躍するという特徴を有している。その頃モーツァルトは貧困のどん底にあった。この曲を書き上げたのが1790年5月であり、死の前年である。貧しさと健康の悪化の中で書き上げられたこの曲ではあるが、そんなモーツァルトの苦悩の姿は微塵も感じられず、ただひたすらに音楽だけを追求するモーツァルトの姿が浮かび上がり、モーツァルトの偉大さを改めて思い知らされる曲なのである。ウィーン・フィルハーモニー弦楽四重奏団は、バリリ四重奏団が当時のウィーン・フィルのコンサートマスターのウィリー・ボスコフスキーを迎え入れて名称を代えた弦楽カルテット。このLPレコードで演奏するウィーン・フィルハーモニー弦楽四重奏団の奥深く、しかも優雅な表現には敬服させられる。(LPC)


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