★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ヨゼフ・カイルベルト指揮ハンブルク国立フィルのブルックナー:交響曲第9番

2023-03-27 10:19:11 | 交響曲


ブルックナー:交響曲第9番(原典版)

指揮:ヨゼフ・カイルベルト

管弦楽:ハンブルク国立フィルハーモニー管弦楽団

発売:1978年

 LP:キングレコード GT 9180

 このLPレコードは、ドイツの名指揮者であったヨゼフ・カイルベルト(1908年―1968年)を偲ぶ1枚である。カイルベルトは、ドイツ人として生まれ、ウィーン近郊の地バーデンで活躍し、そしてプラハでチェコ音楽を学んだ。第二次世界大戦後のドレスデンまたベルリンにおいて、主にオペラ指揮者としてその才能を開花させ、バイロイト祝祭劇場において名声を確固なものとした。そして終焉の地は、ミュンヘンのバイエルンのオペラ劇場であった。ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」を振りながら、崩れるように倒れ、間もなく息を引き取ったという。カイルベルトの指揮ぶりは、派手な所がないというよりは、地味な指揮そのものである。音楽自体もごく自然に鳴り響き、奇を衒ったところは微塵も感じられない。凡庸な指揮者なら、ただそれだけで終わるのであるが、カイルベルトのつくり出す音楽は、ただ、それだけで聴くものに強烈な印象を与えるところが凄いのである。これはカイルベルトが、その曲の真髄を誰よりも深く理解していることに他ならない。つまり、ただ表面的な激情を小手先だけでつくり出すような指揮者とは最も遠い存在だったのである。心の奥底からその曲に共感し、そして、脚色することなしに自然な形でリスナーに語りかけてくる。このLPレコードのブルックナー:交響曲第9番の指揮は、このカイルベルトの特徴がよく発揮されており、聴き終わったときのリスナーの感動は、他のどの指揮者にも増して大きなものに感じるのである。これは多分、カイルベルトが、古き良き時代を生きた指揮者だったからなのではなかろうか。ブルックナーは、交響曲第9番を1889年に着手し、第1楽章を書き上げるのに3年の年月を要した。第3楽章は1894年11月に完成したが、終楽章を完成させることなく、この世を去ってしまう。ブルックナーが最後にたどり着いたのが第9交響曲であったが、ベートーヴェンの第九と同じくニ短調で書かれていた。初演は、何と死後6年後の1903年にウィーンで行われたという。ブルックナーが生きていた時代は、ブルックナーの交響曲はなかなか理解されず、演奏不能といった理由で演奏を拒否されることもあったという。ブルックナーの交響曲の真価は20世紀に入ってから次第に認識され始め、1930年以降広く演奏されるようになり、現在では、マーラーのそれと並び、ブルックナーの交響曲は、演奏会にはなくてはならない作品となっている。(LPC)


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