★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇バルトーク弦楽四重奏団のバルトーク:弦楽四重奏曲第5番/第6番

2024-04-04 10:30:54 | 室内楽曲(弦楽四重奏曲)


バルトーク:弦楽四重奏曲第5番/第6番

弦楽四重奏:バルトーク弦楽四重奏団

LP:ビクター音楽産業(ΣRATO) ERA‐2056(STU‐70398)

 バルトーク(1881年―1945年)は、全部で6曲の弦楽四重奏曲を作曲している。最初の第1番が1909年の作で27歳の時、そして最後の第6番が1939年の作で58歳の時と、生涯を通して作曲されたことが分る。そして、その内容は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲に匹敵する高みに達した曲として、現在高く評価されている。これは、思索的な深さ、発想の独自性、技術的な完成度の高さのどれをとっても、近代の弦楽四重奏曲の白眉であることを指しているわけである。第1番は、ドイツ・ロマン派的な傾向と民俗音楽が融合しており、美しい旋律に満ちているが、ある意味では、ドイツ・ロマン派の影響からまだ抜け出していない作品と言える。第2番は、シェーンベルクの無調音楽の影響も見ることができ、バルトークの作風の転換を示す過渡的な作品。第3番は、単一楽章からなり、対位法による打楽器的な演奏が要求され、感情を作品中に反映させる表現主義に基づいた作品。第4番は、その構成の緻密さ、有機的な統一性においてベートーヴェンの弦楽四重奏曲にもなぞらえる作品で、荒々しいリズムと不協和な和声とを、より先鋭化する特殊奏法が駆使され、演奏技巧上、弦楽四重奏曲中屈指の難曲とされている。そして今回のLPレコードに収納された晩年の第5番、第6番へと続く。第5番は、全部で5つの楽章からなり、それまでの難解な表現主義的な傾向を捨て去り、再びロマン派的な作風への回帰が見られる作品。簡潔な分かりやすさ、調性感の明確さが際立つ。第6番は、母の死により、全体がメスト(悲しげに)と指定された曲で、悲しげな感情を通し、バルトークの人間性が結実した精神性に富んだ曲。知的なものと情緒的なものが新しい平衡感覚をつくり上げている。このLPレコードでのバルトーク弦楽四重奏団による第5番/第6番の演奏は、緻密であると同時に、精神的に深く掘り下げられた内容を持ち、さらに躍動感溢れた内容となっており、ともすれば難解なバルトークの弦楽四重奏曲の世界を、リスナーに分りやすく演奏しており、非常に好感が持てる。バルトーク弦楽四重奏団は、ハンガリーの首都ブタペストのリスト・フェレンツ音楽院の卒業生をメンバーにより、1957年結成された。「バルトーク」という名称が付けられたのは、バルトーク:弦楽四重奏曲の演奏における素晴らしい功績が認められ、バルトーク未亡人およびハンガリー政府から贈られたもの。(LPC)


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