★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇クレンペラーのモーツァルト:交響曲第38番「プラハ」/歌劇「フィガロの結婚」序曲/交響曲第39番

2020-08-06 09:42:12 | 交響曲(モーツァルト)

モーツァルト:交響曲第38番「プラハ」
       歌劇「フィガロの結婚」序曲
       交響曲第39番

指揮:オットー・クレンペラー

管弦楽:フィルハーモニア管弦楽団
    ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(歌劇「フィガロの結婚」序曲)

録音:1962年3月6日~8日、26~28日、キングスウエイ・ホール
                 (交響曲第38番「プラハ」/交響曲第39番)
   1964年10月29日~28日、11月9日、14日、アビー・ロード・スタジオ
                 (歌劇「フィガロの結婚」序曲)

LP:東芝EMI EAC‐40048

 このLPレコードは、20世紀を代表する指揮者の一人である巨匠オットー・クレンペラー(1885年―1973年)が、フィルハーモニア管弦楽団を指揮して、モーツァルトの交響曲を演奏したものだ。ドイツ出身の指揮者らしく、クレンペラーが得意としていたのは、ドイツ古典派・ロマン派の作品である。クレンペラーは、フランクフルトのホッホ音楽院で学び、22歳でマーラーの推挙を受け、プラハのドイツ歌劇場の指揮者に就任。さらにクロル歌劇場の音楽監督に就任するが、その後、ナチス政権を嫌い、アメリカへ亡命することとなる。アメリカでは、ロサンジェルス・フィルやピッツバーグ交響楽団を指揮し、両楽団の再建に大いに貢献する。しかし、1939年に脳腫瘍を患い、これによりアメリカにおける活動の場は絶たれてしまう。第二次世界大戦後になると、クレンペラーは、ドイツの市民権を回復。そして、1959年このLPレコードで指揮しているフィルハーモニア管弦楽団の常任指揮者に就任し、以後、同楽団とのコンビで一連の録音を行い、戦前の知名度の復活にものの見事に成功するのである。しかしながら、英国EMIのレコード録音専門のオーケストラであったフィルハーモニア管弦楽団は、その後、フィルハーモニア管弦楽団の創立者であるウォルター・レッグが同楽団を売却したことで、存続できなくなり、楽団員が自主経営し、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団と名称が変わる。その後、またもとの名称に戻るのであるが、この時、クレンペラーは会長に就任して、両者の関係はそのまま継続されることとなった。クレンペラーの指揮ぶりは、一般的に「表面的な美しさよりも、遅く、厳格なテンポにより楽曲の形式感・構築性を強調するスタイル」とよく言われるが、このLPレコードのクレンペラーの指揮は、正にこの言葉どおり、ゆっくりとしたテンポで、武骨なほど力強く、曲の全体の構成をことさら強調するような演奏内容である。現在では、このような演奏をする指揮者は少なくなってしまった。つまり、クレンペラーの指揮は、ある意味では大時代がかった、現代感覚とは逆行するような演奏内容とも言える。しかし、そうであるからこそ、今、クレンペラーの指揮の独自性に耳を傾けることは重要なことではあるまいか。そこには、現代の指揮者が見落としている、音楽の本質が隠されているように思われてならない。このLPレコードに収められたクレンペラーのモーツァルトの演奏を聴きながら、ふと、そんなことが頭をよぎった。(LPC) 


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