★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇スメタナ四重奏団+ヨゼフ・スークのモーツァルト:弦楽五重奏曲第2番/第6番

2024-08-26 09:57:53 | 室内楽曲

 

モーツァルト:弦楽五重奏曲第2番/第6番

演奏:スメタナ四重奏団              

      イルジー・ノヴァーク(第1ヴァイオリン)
      リュボミール・コステツキー(第2ヴァイオリン)
      ミラン・シュカンパ(第2ヴィオラ)
      アントニーン・コホウト(チェロ)

      ヨゼフ・スーク(第1ヴィオラ)
 
録音:1981年6月15日~21日、プラハ、芸術の家ドヴォルザーク・ホール

発売:1981年

LP:日本コロムビア OF‐7011‐ND

 モーツァルトの弦楽五重奏曲は、有名な第3番と第4番を含んで全部で6曲ある。第1番は、モーツァルトが17歳の時のザルツブルグ時代の曲である。何故、モーツァルトが弦楽四重奏曲でなく、弦楽五重奏曲を作曲したのかは、未だもって明らかにはなっていない。五声部の曲にチャレンジをしたかったのか、あるいは誰からかの依頼を受けたのかもしれない。第2番はその14年後に作曲された、管楽器のためのセレナーデハ短調KV388を編曲した曲。そして名曲として名高い第3番、第4番が連なる。さらに、力強く活発な内容を持つ第5番を経て、死の年に作曲した洗練された美しさが特徴の第6番へと続く。このLPレコードでは、第2番と第6番とが収められている。弦楽五重奏曲第2番の原曲は、1782年に作曲された、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴット各2本の管楽八重奏曲によるセレナードである。セレナードといっても当時のセレナード様式とは大分かけ離れた内容となっており、非娯楽的な要素が強い。弦楽五重奏曲への編曲は1787年に行われた。弦楽五重奏曲第1番は、1773年の作曲であり、この第1番から遅れること14年もの歳月が流れて、第2番の弦楽五重奏曲が完成したことになる。そのためか、第2番は第1番に比べて、内容が格段に充実したものになった。しかも、原曲となった管楽八重奏曲によるセレナードよりも優れたものに仕上がったことは、続く、弦楽五重奏曲の傑作である第3番および第4番の登場を予言する内容とも取ることができる。一方、弦楽五重奏曲第6番は、モーツァルトの死の年に当る1791年に作曲された曲。全部で6曲ある弦楽五重奏曲の中では、情緒的な雰囲気が排除され、内面的な求心力が勝ったような内容の曲と言える。最高度に洗練された美しさに覆われ曲となっている。演奏は、スメタナ四重奏団に第1ヴィオラとしてヨゼフ・スーク(1929年―2011年)が加わったメンバーによるもので、第3番/第4番に続いての録音。スメタナ弦楽四重奏団は、1945年から1989年まで存在したチェコの弦楽四重奏団。結成当初の名称はプラハ音楽院弦楽四重奏団で、1945年にスメタナ弦楽四重奏団と改称。このLPレコードでの演奏内容は、実に緻密そのものであり、流麗を伴った憂いを含んだ表情が印象に強く残る。モーツァルトの弦楽五重奏曲を、このように静寂さをもって演奏した例を私は他に知らない。(LPC)


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