★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇オイストラフ&オボーリンの名コンビによるベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第8番/第2番/第4番

2024-09-09 09:47:53 | 室内楽曲(ヴァイオリン)


ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第8番/第2番/第4番

ヴァイオリン:ダヴィド・オイストラフ

ピアノ:レフ・オボーリン

録音:1957年、パリ

発売:1977年

LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) X‐5690

 ヴァイオリンのダヴィド・オイストラフ(1908年―1974年)は、ロシアのオデッサ生まれ。オデッサ音楽院で学び、同音楽院を1926年に卒業後、直ぐに演奏活動を開始。1935年「ヴィエニアスキ国際コンクール」第2位、そして1937年には、「イザイ国際コンクール(現エリーザベト王妃国際音楽コンクール)」に優勝して、世界的にその名を知られることになる。1938年にはモスクワ音楽院の教授に就任。1949年までは旧ソ連内での活動に留まっていたが、1950年以降になると西欧各国での演奏活動を積極的に展開するようになる。その優れた技巧と音色、そしてスケールの大きな演奏により、西欧でも名声を不同なものとして行く。1974年10月に客演先のアムステルダムのホテルで逝去した。享年66歳。一方、ピアノのレフ・オボーリン(1907年―1974年)は、モスクワ生まれ。モスクワ音楽院で学び、1927年に同音楽院を卒業した翌年の1928年、第1回「ショパン国際ピアノコンクール」に優勝。以後西欧各国から招かれ、その第一級の腕を高く評価された。1935年にモスクワ音楽院教授に就任。ピアニストで今は指揮者として活躍しているアシュケナージも教え子の一人という。1938年からはオイストラフとコンビを組み二重奏の演奏を開始。さらにチェロのクヌシェヴィッキーを加えたトリオの演奏でも高い評価を得た。1974年1月にモスクワで死去。この2人のコンビでベートーヴェンのヴァイオリン全集が録音されたが、その中から3曲を収めたのが今回のLPレコードである。ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第8番は、中期を前にした曲で、明るくまとまりの良いヴァイオリンソナタとして知られる。第2番は、初期の作品であり、モーツァルトの影響も見られ、内容の充実度というよりは、新鮮な内容が特徴。第4番は、ベートーヴェン独自の個性が発揮され始めた頃の作品。2人によるこれら3曲の演奏内容は、いずれも緻密な計算の上に立ち、高い技巧で表現されているのが特徴。一部の隙のない演奏ではあるが、人間味のある暖かみがベースとなっているので、聴いていて自然に心が和んでくる。完成度の高さは極限まで追究している一方で、音楽の心は決して忘れてはいない。やはり、2人は不世出の名コンビだったということを、改めて思い知らされたLPレコードであった。(LPC)

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