★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇カスリーン・フェリアー&ワルターによるシューマン:歌曲集「女の愛と生涯」/マーラー:リュッケルトの詩による3つの歌

2022-08-22 09:44:37 | 歌曲(女声)


シューマン:歌曲集「女の愛と生涯」

        1.彼に会って以来  
         2.彼は誰よりも素晴らしい人
         3.分からない、信じられない
         4.わたしの指の指輪よ
         5.手伝って、妹たち
         6.やさしい人、あなたは見つめる
         7.わたしの心に、わたしの胸に
         8.今、あなたは初めてわたしを悲しませる

マーラー:リュッケルトの詩による3つの歌

        1.わたしはこの世に忘れられ 
        2.ほのかなかおりを 
        3.真夜中に

コントラルト:カスリーン・フェリアー

ピアノ&指揮:ブルーノ・ワルター

管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

録音:1949年9月、エディンバラ音楽祭のBBC放送による

発売:1978年

LP:キングレコード MX 9044

 このLPレコードは、世界のクラシック音楽界の声楽と指揮をそれぞれ代表する2人が歴史的な出会いの後に生まれた貴重な録音である。英国生まれのコントラルト(アルト)歌手のカスリーン・フェリアー(1912年―1953年)は、普通高校において勉学し、卒業後に郵便局に入り、電話交換手の職にありつく。この時、高校で習っていたピアノ演奏で、地方のコンクールに入賞したり、音楽放送に出演するなどの余技的な活動を続けていたが、ある歌手の伴奏をしたことで、歌手としてのレッスンを受けることになる。1940年、ヘンデルの「救世主」の独唱者として公式に歌手としてのデビューを飾る。そして、1947年のエジンバラ音楽祭が2人の運命の出逢いとなる。ワルターはこの時、マーラーの「大地の歌」を指揮することになっており、推薦人を介してカスリーン・フェリアーと出会い、この時ワルターは「幼時の無邪気さと貴婦人の威厳を併せ持ち、そしてこと芸術に関しては、謙虚さと自信と同時に、常に初心者のような感動を忘れない人」とカスリーン・フェリアーを高く評価したのである。しかし、その後カスリーン・フェリアーは、当時はまだ不治の病であった癌に罹り、1953年、41歳の若さでこの世を去ってしまう。このため残された録音は、数こそ多くはないが、その1曲1曲が不朽の名盤揃いなのである。このLPレコードでも、シューマン:歌曲集「女の愛と生涯」とマーラー:リュッケルトの詩による3つの歌において、コントラルトならではの深い情念を持った、類稀な表現が聴くものに感動を与えずにはおかない。歌曲集「女の愛と生涯」は、シューマンが“歌曲の年”といわれる1840年に作曲した連作歌曲で、詩はアーデルベルト・フォン・シャミッソーによる。当時のシューマンは、クララ・ヴィークとの結婚という、自らの経験が作曲の背景にあったのは確かなこと。ピアノの独立性が高く、声楽と対等な立場で音楽表現が特徴で、シューベルトの影響を離れて新しい時代に入ったことを印象付ける作品。一方、マーラーは、フリードリッヒ・リュッケルトの詩により、当時としては画期的なオーケストラ伴奏による歌曲集「亡き子をしのぶ歌」に続き、「最後の七つの歌」を作曲したが、このLPレコードでは、よく歌われる「わたしはこの世に忘れられ」「ほのかなかおりを」「真夜中に」の3曲が取り上げられている。ワルターはピアノと指揮とで、カスリーン・フェリアーの伴奏役に徹し、見事な一体感をつくり出している。(LPC)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする