~ドビュッシー ピアノ名曲集~
ドビュッシー:喜びの島
前奏曲第1巻 第8曲「亜麻色の髪の乙女」
第10曲「沈める寺」
第11曲「パックの踊り」
第12曲「ミンストレル」
レントより遅く
「ピアノのために」より「プレリュード」
「サラバンド」
「トッカータ」
練習曲 第11曲「アルペジオのための曲」
ベルガマスク組曲 第3曲「月の光」
第4曲「パスピエ」
ピアノ:サンソン・フランソワ
LP:東芝EMI EAC‐30060
サンソン・フランソワ(1924年―1970年)は、フランス出身の名ピアニスト。コルトーにピアノの才を見い出され、パリ音楽院に入学し、マルグリット・ロンに学ぶ。1943年に第1回「ロン=ティボー国際コンクール」で大賞を受賞。日本には都合3回来日し、その名人芸を披露している。私は当時、サンソン・フランソワのショパン演奏のLPレコードおよびCDを必死に聴いたものだ。その頃の私は、ショパン演奏に関してはサンソン・フランソワ以外あり得ないという固い信念を持っていた。ところが当時は、サンソン・フランソワのドビュッシーはあまり聴いた覚えがなかった。今回このLPレコードを聴いてみて、その演奏がショパンの演奏に劣らず、それぞれの曲の核心を突いた名演であることを思い知らされた。このLPレコードに収められたドビュッシーのピアノ独奏曲は、大変馴染のある曲が多く収められている。「喜びの島」は、18世紀に活躍した画家アントワーヌ・ワトーの作品「シテール島への乗船」をヒントに作曲されたと言われている曲。「前奏曲」は第1巻、第2巻各12曲からなり、第1巻は1910年に完成し、異国的な作風を持つ小品集。第2巻は1913年に完成し、不思議な感覚と幻想的な雰囲気が特徴。このLPレコードには第1巻から4曲が収められている。「 レントより遅く」は、1910年に作曲され、3拍子でワルツ風に書かれており、広く親しまれている曲。「ピアノのために」は、ドビュッシー独特の語法が取り入れられており、クラブサン音楽を思い起こさせる。「練習曲」は、全12曲からなりショパンに捧げられている。このLPレコードには第11曲目のアルペジオのための曲が収められている。1890年に完成した「ベルガマスク組曲」は全4曲からなり、クラブサン音楽の優雅な雰囲気と官能的な性格が見事に融合されている。このLPレコードには月の光とパスピエが収められている。サンソン・フランソワは論理的に演奏するタイプでなく、直感的な一瞬の閃きでピアノを演奏するのが身上であるが、その長所がこのLPレコードからも聴き取れる。一般にドビッシーのピアノ曲というと何処か幻想的であり、演奏家もそのことをいたずらに強調し勝ちである。ところがこのLPレコードのサンソン・フランソワのドビッシーは、そんな曖昧模糊とした演奏とは懸け離れた、一瞬の閃きの只中に身を置いているような、天才的なピアノ演奏を聴かせる。CDではなかなか聴き取れないフランソワの微妙なピアノタッチの音も、LPレコードでは生々しく聴き取ることができる。(LPC)