バルトーク:2台のピアノと打楽器のためのソナタ
2台のピアノのための7つの小品(「ミクロコスモス」より)
1 ブルガリアのリズム
2 和声のトリルのエチュード
3 ペルペートゥム・モービレ
4 短いカノンと転回
5 新しいハンガリア民謡
6 半音階的インヴェンション
7 オスティナート
ピアノ:カティア・ラベック/マリエル・ラベック
打楽器:シルヴィオ・グァルダ/ジャン=ピエール・ドゥルーエ
発売:1976年
LP:RVC(RCAコーポレーション):ERX‐4006(STU‐70642)
1973年に書かれた、バルトークの「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」は、現代音楽の雰囲気が存分に漂い、モーツァルトやベートーヴェン、ブラームスなどの古典派やロマン派の音楽とは、大分雰囲気が異なるが、ワグナーやマーラー、さらにはシェーンベルクの作品の延長線上にある音楽と考えると何やらその位置づけが分ってくるようにも思われる。この前年、バルトークは、「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」を書いており、一般にはこちらの曲の方が伝統音楽に根差しているだけに聴きやすい。この「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」を聴くと、抽象的な音の羅列に戸惑うリスナーもいると思う。ただし、そこは天才バルトークの作品だけあって、激しいリズムの音楽の中に知らず知らずのうちに引きこまれ、緊張感を持って最後まで聴き終えてしまうことになる。この曲は現代音楽の扉を開いたと言う意味で記念碑的作品であり、現在では「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」とともにバルトークの最高傑作という評価がなされている。2台のピアノは、木琴、小太鼓、大太鼓、シンバル、トライアングルなどとともに打楽器的に扱われるところが、何とも斬新な試みだ。全体は3つの楽章からなっており、いずれの楽章も抽象的な音が乱舞しているような印象に包まれているが、2台のピアノと打楽器は対立する関係ではなく、お互いの表現力を高め合う関係にある。この曲は、国際現代音楽協会のために書かれたものでもあることからも分るが、要するに現代音楽への扉を開いた、バルトークの独創性が開花した作品の一つなのだ。しかし、その後、バルトーク以後の現代音楽は、現在に至るまで必ずしも成功を収めたは言えないところに、現代音楽が置かれた立場の微妙さが際立つのである。一方、「2台のピアノのための7つの小品」は、ピアノ独奏曲のための小品集「ミクロコスモス」を、バルトーク自身が2台のピアノの作品へ編曲したもの。「ミクロコスモス」は、1926年から1937年までかけて完成させた153曲からなるピアノ小品集で、次男のベーテル・バルトークのために作曲した教育的作品であり、今日では6巻に分けて出版されている。優れたピアニストでもあったバルトークの才能が、ちりばめられたようなピアノ小品集である。演奏は、これらの2曲ともいずれも名人芸に達しており、その完成度は非常に高い。そして、意外にも、打楽器とLPレコードの相性がそう悪くないことが聴き取れることができる録音でもある。(LPC)