★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇グリュミオー・トリオ&マクサンス・ラリューのベートーヴェン:セレナード(作品8/作品25)

2020-05-18 09:53:13 | 室内楽曲

ベートーヴェン:セレナード 作品8(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのための)
        セレナード 作品25(フルート、ヴァイオリン、ヴィオラのための)

弦楽三重奏:グリュミオー・トリオ
         
        アルテュール・グリュミオー(ヴァイオリン)
        ゲオルク・ヤンツェル(ヴィオラ)
        エヴァ・ツァコ(チェロ)

フルート:マクサンス・ラリュー

録音:1968年9月13日、15日

発売:1979年

LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) 13PC‐46
 
 ベートーヴェンは、バガテルや民謡のような小品も数多く作曲している。それらの作品は、滅多に演奏会では採り上げられないし、録音も少ないので、一般のクラシック音楽ファンは聴くチャンスに恵まれない。今回のLPレコードのセレナードも、それらの小品と同じとは言わないが、あまり聴くチャンスがない曲であろう。このLPレコードのライナーノートで藁科雅美氏がベートーヴェンのセレナードを解説しているので、これを参考に紹介しよう。ベートーヴェンは、20歳半ばの彼のウィーン時代の初期に、三重奏のための「セレナード」2曲を作曲した。作品8がヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの弦楽三重奏曲であるのに対し、作品25では、チェロの代わりにフルートが用いられている。2曲ともセレナードの様式に則った、モーツァルト風な優美さが特徴。しかし、そこには幾分なりともベートーヴェンの個性が含まれ、モーツァルトのセレナードとはいささか趣が異なっているのである。そこがこの2曲のセレナードにユニークな美感を与えている。作品25は、「フルートとピアノのためのソナタ(セレナード)」作品41としても出版されているが、ベートーヴェン自身による二重奏への編曲でないことが定説となっている。セレナード ニ長調 作品8は、セレナードの定型どおり、楽師たちの登場するマーチで始まり、同じくマーチ調で結ばれる5つの楽章からなっている。一方、セレナード ニ長調 作品25は、作品8と似た曲想ではあるが、全7楽章は、フルートの繊細で透明な音が独特の彩を添えている作品。この2曲のセレナードは、あまり知られていない曲とはいえ、それぞれの第1楽章を聴くと、以前聴いたことのある曲だなと思うリスナーも少なくないであろう。この2曲をこのLPレコードに録音したグリュミオー・トリオのヴァイオリン奏者のアルテュール・グリュミオー(1921年―1986年)は、フランコ=ベルギー楽派の流れを汲み、そのヴァイオリンの音は限りなく美しく、構成がきちっと整った正統派の演奏スタイルに特徴があり、わが国でも多くのファンを有していた。このLPレコードでのグリュミオー・トリオの演奏は、互いの息がぴたりと合い、特に緩徐楽章の美しさは、この世のものとも思えないほど。フルートのマクサンス・ラリュー(1934年生まれ)は、南フランス、マルセイユの出身。1954年ジュネーヴ コンクール第2位入賞したフルートの名手。マクサンス・ラリューとグリュミオーとヤンツェルの3人の演奏は、フルートの音色が輝かしく鳴りわたり、暫し室内楽の愉悦に浸れる。(LPC)


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