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★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ベルリン弦楽四重奏団員によるベートーヴェン:弦楽三重奏曲第2番/第3番/第4番

2025-01-30 09:36:56 | 室内楽曲

ベートーヴェン:弦楽三重奏曲第2番 ト長調Op.9‐1
              第3番 ニ長調Op.9‐2
              第4番 ハ短調Op.9‐3

弦楽三重奏:ベルリン弦楽四重奏団員
          
          カール・ズスケ(ヴァイオリン)
          カール=ハインツドムス(ヴィオラ)
          マティアス・プフェンダー(チェロ)

LP:日本コロムビア(eurodisc) OQ‐7112‐K

発売:1976年4月

 ベートーヴェンは、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロによる作品として、弦楽三重奏曲4曲とセレナーデ1曲の合計5曲を遺している。これらはいずれもベートーヴェンの20歳代の初期の作品に当る。これらの中で、1798年に完成したOp.9の3曲は、初期の作品とはいえ、モーツァルトの世界から抜け出し、いよいよベートーヴェンらしい顔を覗かし始めた頃の作品である。この3曲の弦楽三重奏曲は、中期から後期にかけてベートーヴェンが作曲した傑作の森の陰に隠れ、あまり話題に上ることもなく、また、演奏の機会も決して多くはない。しかし、改めてこの3曲を聴いてみると、後年花開くベートーヴェンの才能の最初の萌芽が聴き取れ、実に興味深い作品であることに気づく。ベートーヴェンは、以後弦楽三重奏曲は書かず、もっぱら弦楽四重奏曲に傾倒する。これは、ベートーヴェンが、より深い音色を弦楽器の求めた結果であることが推測される。弦楽三重奏曲第2番ト長調Op.9‐1は、隅々まで眼の行き届いたがっちりとした構成力が印象に残る初期の力作。同第3番ニ長調Op.9‐2は、詩的な雰囲気を漂わせ、哀愁味も持ったロマン的な作品。そして、同第4番ハ短調Op.9‐3は、初期の器楽作品の中でも傑作と目される曲で、緊張感が全体を包み込み、曲の盛り上げ方も非凡なものが感じ取れる。これら3曲を、このLPレコードで演奏しているのは、ベルリン弦楽四重奏団員のヴァイオリン:カール・ズスケ、ヴィオラ:カール=ハインツドムス、チェロ:マティアス・プフェンダーの3人である。ベルリン弦楽四重奏団とは、1965年に、ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサートマスターを経て、ベルリン国立管弦楽団の第1コンサートマスターを務めていたカール・ズスケ(1934年生まれ)を中心に結成された旧東ドイツ屈指のカルテットのこと。当初は、ズスケ弦楽四重奏団と称していたが1970年に改称し、以後ベルリン弦楽四重奏団として活躍することになる。1973年には来日も果たしている。カール・ズスケは、モーツァルトのヴァイオリンソナタなどの名録音も遺しているが、音色に透明感があり、常にきっちとした構成美で演奏し、日本でも多くのファンを持っていた。このLPレコーでの演奏は、卓越した演奏技術に貫かれた安定感のある演奏内容となっており、それに加えて、音色が美しく、爽やかな印象を醸し出し、実に魅力的な演奏だ。それにしても今後、ベートーヴェン初期の、これら3曲の魅力的な弦楽三重奏曲の演奏機会が増えることを願うばかりだ。(LPC)


◇クラシック音楽LP◇クレメンス・クラウス指揮ウィーン交響楽団のモーツァルト:セレナード第7番「ハフナー」

2025-01-27 09:46:42 | 管弦楽曲

モーツァルト:セレナード第7番「ハフナー」 KV250(248b)
         
         1.アレグロ・マエストーソ~アレグロ・モルト
         2.アンダンテ
         3.メヌエット
         4.ロンド・アレグロ
         5.メヌエット・ガランテ
         6.アンダンテ
         7.メヌエット
         8.アダージョ~アレグロ・アッサイ

指揮:クレメンス・クラウス

管弦楽:ウィーン交響楽団

録音:1951年

LP:ワーナー・パイオニア H-5061V
 
 モーツァルトのセレナード第7番は、「ハフナー」という愛称で親しまれ、一般的に「ハフナー・セレナード」で通用している。初演は1776年で、ザルツブルクの富豪で、市長でもあったハフナー家の結婚披露宴のためにモーツアルトが作曲した作品。後年、モーツァルトはハフナー家のためのセレナードをもう1曲作曲しており、その曲は、交響曲第35番「ハフナー」に使われている。このLPレコード指揮をしているのは、ウィーン出身の名指揮者クレメンス・クラウス(1893年―1954年)である。クレメンス・クラウスは、ウィーン・フィルが毎年1月1日に楽友協会大ホールで行う、「ニューイヤーコンサート」を1939年に開始したことでも知られている。ニューイヤーコンサートのプログラムは、主にヨハン・シュトラウス一家のワルツやポルカで構成される。クレメンス・クラウスの死後は、、ウィーン・フィルのコンサートマスターであったウィリー・ボスコフスキー(1909年―1991年)に引き継がれ、現在では、世界の有力な指揮者たちによって持ち回りで行われている。クレメンス・クラウスの父は、オーストリア皇室と姻戚関係がある大貴族。母は、後にウィーン・フォルクスオーパーの舞台監督を務めた女優でソプラノ歌手であった。1929年にウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任。さらに翌年、フルトヴェングラーの後任としてウィーン・フィルの常任指揮者に就任。1935年にベルリン国立歌劇場の音楽監督、また1937年にはバイエルン国立歌劇場の音楽監督に就任することになる。第二次世界大戦後は、ナチスに協力した容疑で演奏活動の停止を命じられたりしたが、暫くしてウィーン・フィルに復帰、さらにバイロイト音楽祭などでも活躍した。しかし、戦前のように重要なポストに就くことはなかった。このことが、フルトヴェングラーや同世代の指揮者のカール・ベームなどに較べ、知名度が高くない原因なのかもしれない。そんな実力派のクレメンス・クラウスが遺した数少ないモーツァルトの録音が、このモーツァルトの「ハフナー・セレナード」である。ここでのクレメンス・クラウスの指揮ぶりは、誠に明快そのものだ。リズミカルで明るく、颯爽とした曲づくりは、モーツァルトの「ハフナー・セレナード」の演奏には正に打って付け。ハフナー家の華やかな結婚披露宴が目の前に浮かび上がってくるようだ。フルトヴェングラーやベームの録音が大量にCD化されているのに比べ、この録音がCD化されることもなく、永久にお蔵入りとなるのは残念至極。(LPC)


◇クラシック音楽LP◇スメタナ弦楽四重奏団のシューベルト:弦楽四重奏曲第14番「死と少女」 /ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲「アメリカ」

2025-01-23 09:53:17 | 室内楽曲(弦楽四重奏曲)

シューベルト:弦楽四重奏曲第14番「死と少女」
ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲「アメリカ」

弦楽四重奏:スメタナ弦楽四重奏団

録音:1954年(「死と少女」)/1958年(「アメリカ」)

発売:1977年7月

LP:日本コロムビア OW-7708-S
 
 このLPレコードで演奏しているスメタナ弦楽四重奏団は、1943年にプラハ音楽院の学生のリベンスキー(第1ヴァイオリン)、コステツキー(第2ヴァイオリン)、ノイマン(ヴィオラ)、コホウト(チェロ)の4人により、最初プラハ音楽院四重奏として結成され、1945年になり、スメタナ弦楽四重奏としてデビューを果した。得意のチェコ音楽をはじめ、モーツァルト、ベートーベン、ハイドン、ブラームスやドビュッシーなど、幅広いレパートリーを持ち、世界各地での演奏活動によって多くのファンを魅了した。確固とした技巧に裏付けられた、その流れるような美しい表現力は、当時のカルテットの中でも一際抜きんでた存在であった。全員が暗譜で演奏するそのスタイルでも話題をさらったものだ。1958年には初来日し、その優れた演奏を聴かせ、以後16年間に渡り日本での演奏活動を行い、日本の多くのファンから愛されたカルテットであった。1988年最後の日本ツアーが行なわれ、翌年の1989年に解散した。スメタナ弦楽四重奏団の演奏は、全てが自然な流れの中に身を置くような演奏スタイルであり、聴いていて何の抵抗感がない。かと言って、当然ただ漠然と演奏するわけではなく、微妙なニュアンスを大切にし、幽玄の美といったような至高の芸術にまで高めることに真骨頂があった。どこか、日本的な要素もあり、日本のクラシック音楽ファンにとっては、非常に親近感が湧くカルテットではあった。そんなスメタナ弦楽四重奏団の演奏で、弦楽四重奏曲の古今の名曲「死と少女」と「アメリカ」の2曲が聴けるのが、このLPレコードである。シューベルト:弦楽四重奏曲第14番「死と少女」で、スメタナ弦楽四重奏団は、精緻を極めた演奏を繰り広げる。何と豊かで、同時にこのカルテットでしか表現しえないような静寂さが込められている演奏となっている。少しも表面的な表現に流されることはなく、常に精神の内面を覗き込むような強靭な求心力を秘めた演奏となっている。一方、ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲「アメリカ」の演奏は、シューベルトの時とはがらりと演奏スタイル変え、明るく、歌うように演奏を盛り上げる。もうこうなると、「この四重奏曲は我々の曲」とでも言いたげな雰囲気さえ醸し出す演奏だ。スメタナ弦楽四重奏団の根底には、どうも民族的音楽の情熱がたぎっているように私には聴こえる。今もって、スメタナ弦楽四重奏団を超える叙情味溢れる演奏を聴かせてくれるカルテットは存在していないと言っても間違いなかろう、と私は思う。(LPC)


◇クラシック音楽LP◇バックハウス・カーネギー・ホール・リサイタル(1954年3月30日)第2集

2025-01-20 09:40:39 | 器楽曲(ピアノ)


~バックハウス・カーネギー・ホール・リサイタル(1954年3月30日)第2集~

ベートーヴェン:ピアノソナタ第32番
        ピアノソナタ第25番「かっこう」
シューベルト:即興曲Op.142-2
シューマン:幻想小曲集Op.12より第3曲「なぜに?」
シューベルト(リスト編曲):ウィーンの夜会第6番
ブラームス:間奏曲Op.119-3

ピアノ:ウィルヘルム・バックハウス

録音:1954年3月30日、ニューヨーク、カーネギー・ホール

発売:1972年

LP:キングレコード(ロンドン・レコード) MZ 5099
 
 このLPレコードは、ドイツの大ピアニストのウィルヘルム・バックハウス(1884年―1969年)が、ニューヨークのカーネギー・ホールで行ったコンサートのライヴ録音の第2集(第1集は別掲)である。この夜のコンサートは、バックハウスのアメリカにおける実に28年ぶりの演奏であった。実際のコンサートでの演奏曲順は、このLPレコードとは異なり、ベートーヴェン:ピアノソナタ第25番に続き、ピアノソナタ第32番が演奏され、最後にアンコールに応えて4曲の小品が演奏された。一般的に言って、当時のライヴ録音は音質が悪く、鑑賞には向かないものが多いが、このLPレコードは、ライヴ録音ながら何とか鑑賞に耐え得る音質となっている。バックハウスは、ドイツ・ライプツィヒ出身(1946年にスイスに帰化)。16歳(1900年)の時にデビュー。1905年、パリで開かれた「ルビンシュタイン音楽コンクール」のピアノ部門で優勝を果たす。第二次世界大戦中は、ヒトラーがバックハウスのファンであったためにナチスの宣伝に利用され、これが戦後に禍し、ナチ協力者として米国でバックハウスの来演を拒否する動きが起こった。このことが、このLPレコードの「アメリカにおける実に28年ぶりの演奏」の真相であったのだ。そう思ってこのLPレコード聴くと、聴衆の熱狂の真の意味を理解することができる。このニューヨークでのコンサートの後、同年4月5日~5月22日に訪日を果たし、日本のファンの熱烈な歓迎を受けることになる。バックハウスは、1969年6月28日にオーストラリアでのコンサート演奏中に心臓発作を起こす。しかし、医師の忠告を聞かず、最後まで弾き終え、運ばれた病院で亡くなった。このコンサートの最後に弾いたのが、このLPレコードにも収められているシューベルト:即興曲Op.142-2であった。バックハウスは、よく“鍵盤の獅子王”と言われるが、バックハウスの技巧の素晴らしさを言い表したもの。このLPレコードのA面に収められているベートーヴェン:ピアノソナタ第32番は、正に“鍵盤の獅子王”に相応しく、威風堂々と曲に真正面から取り組み、スケールの大きな表現でこのベートーヴェン後期の大作が持つ、深い精神性を余すところ無く表現し尽している。一方、第25番は、ベートーヴェンの中期の比較的簡素なピアノソナタであるが、バックハウスは、決して手を抜くことはせず、全力で一気呵成に弾きこなす。こんなところがバックハウスの魅力なのでろう。アンコールで弾いた4曲は、いずれもこれらの曲に込められたバックハウスの深い愛情が聴き取れる優れた演奏となっている。(LPC)


◇クラシック音楽LP◇ロベール・カザドシュのサン=サーンス:ピアノ協奏曲第4番/フォーレ:ピアノと管弦楽のためのバラード、前奏曲第1番/第3番/第5番

2025-01-16 09:59:20 | 協奏曲(ピアノ)

サン=サーンス:ピアノ協奏曲第4番

フォーレ:ピアノと管弦楽のためのバラード
     前奏曲より第1番/第3番/第5番

ピアノ:ロベール・カザドシュ

指揮:レナード・バーンスタイン

管弦楽:ニューヨーク・フィルハーモニック

録音:1961年10月30日/12月14日、ニューヨーク

発売:1978年

LP:CBS/SONY 13AC 400

 このLPレコードは、フランスを代表する作曲家サン=サーンスとフォーレの曲を、フランスの名ピアニストであったロベール・カザドシュ(1899年―1972年)が演奏し、フランスの香りが馥郁とするところが魅力となっている。カサドシュは、パリ音楽院で学び、1913年に首席で卒業。以後、世界を舞台に演奏活動を行う。ギャビー夫人と息子ジャンとの共演により、モーツァルトの「2台ピアノのための協奏曲」や「3台ピアノのための協奏曲」のLPレコードも遺されている。かつて、パリ音楽院やエコール・ノルマルからは、アルフレッド・コルトー、マルグリット・ロン、イブ・ナット、サンソン・フランソワ、ディヌ・リパッティそしてロベール・カザドシュと、“フランス・ピアノ楽派”とでも言える一連の優れたピアニストを輩出し続けた。ロベール・カザドシュは、この“フランス・ピアノ楽派”の最後を飾る大ピアニストであったのだ。その演奏は、フランス音楽の粋を徹底して極めたもので、デリケートであり、抒情味溢れたもので、しかも透明感が際立っていた。少しも無骨なところは無く、印象派の絵画を思わせるような、全体に光が散りばめられたような演奏内容は、一度聴くと忘れられない。ただ、演奏スタイルそのものは、古典的でオーソドックスなもので、この意味では、今聴くと一種の古さを感じるかもしれない。しかし、それを上回る優雅さや品のよさは、今聴いても万人を納得させる説得力を持っている。サン=サーンスは、全部で5曲のピアノ協奏曲を作曲したが、ピアノ協奏曲第4番は、サン=サーンスが作曲家として最も充実した時期に書かれた作品。2楽章構成で、さらに各楽章が2つの部分に分かれた構成を取っている。次のフォーレ:ピアノと管弦楽のためのバラードは、オリジナルは1880年に出版されたピアノ曲で、翌年フォーレの手によって管弦楽を伴う形に編曲された。最後のフォーレ:前奏曲は、全部で9つある曲から第1番、第3番、第5番が録音されている。フォーレの前奏曲は、あまり知られた曲ではないが、コルトーは「苦も無く千変万化するピアノの多様性で人の心を奪う」と高く評価している。これら3曲を演奏するロベール・カザドシュは、その持ち味である正統的で端正な切り口を持った演奏を存分に聴かせる。あたかも抒情詩を朗読でもするかのように、一つ一つ味わうように演奏するすスタイルは、今ではほとんど聴くことができないものだけに、貴重な録音である。バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルの伴奏も深みがあって聴き応え充分。(LPC)