★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇モーツァルト:フェレンツ・フリッチャイ指揮ウィーン交響楽団のモーツァルト:交響曲第29番/第39番

2020-05-14 09:55:26 | 交響曲(モーツァルト)

モーツァルト:交響曲第29番/第39番

指揮:フェレンツ・フリッチャイ

管弦楽:ウィーン交響楽団

録音:1961年3月13、23、25日、ウィーン、ムジークフェラインザール

LP:ポリドール(ドイツグラモフォン) MGW 5177
 
 モーツァルトの交響曲第29番は、1773年の暮れからから翌年の春にかけて作曲された9曲の交響曲の中の一曲。5曲目までがイタリア風序曲の形式であるのに対し、残りの4曲はウィーン風の4楽章で構成され、第29番はこの3番目の曲として、ザルツブルクで作曲された。当時、この地にいたハイドンの5歳年下の弟のヨハン・ミヒャエル・ハイドン(1737年―1806年)の影響を強く受けた作品と言われている。ヨハン・ミヒャエル・ハイドンは、宮廷及び大聖堂オルガニストを務め、交響曲もモーツァルトと同じく40曲あまり遺している。交響曲第29番は、若きモーツァルトの傑作交響曲と目され、将来のモーツァルト像を予見することができる作品として、現在でもしばしば演奏されている。一方、1788年に作曲された交響曲第39番は、明るくおおらかな交響曲として、この曲も現在でもしばしば演奏される名曲。当時モーツァルトは、極端な貧困に陥っていたことを忘れるほど、ウィーン情緒満点の優美さを備えた交響曲ではあるが、時折、明るさのかげに暗いかげが忍び寄っていることも聴き取れる。このモーツァルトの2曲の傑作交響曲を演奏するのが、フェレンツ・フリッチャイ指揮ウィーン交響楽団。フェレンツ・フリッチャイ(1914年―1963年)は、第二次世界大戦後を代表する指揮者の一人。ハンガリーのブタペストに生まれ、ブタペスト音楽院でコダーイとバルトークに師事する。1949年からベルリンの市立歌劇場とRIAS交響楽団の首席指揮者を務める。1961年からはベルリン・ドイツ・オペラの総監督に就任するが、これから円熟期に入ろうとする1963年2月20日に48歳という若さで亡くなってしまう。フリッチャイの指揮ぶりは、求心力があり、力強くてスケールの大きい構成力が身上であるが、このLPレコードの交響曲第29番の指揮では、従来のフリッチャイのイメージを一新させるように、優雅で軽々と軽快なテンポで演奏している。特にオーケストラの自主性に期待しているかのような指揮のため、第29番特有の楽しさがリスナーにストレートに伝わってくる。一方、交響曲第39番の演奏は、従来のフリッチャイの特徴に戻り、スケールを大きく構え、集中力を高めた演奏となっており、聴き終わった後、リスナーは大きな満足感に浸ることができる。それでも、ここでのフリッチャイの指揮は、いつもよりは抑え気味に進行させているように私には聴こえる。このことが結果的に、第39番の持つウィーン情緒を色濃く前面に出すことに成功しているようだ。この2曲の代表的名盤であり、録音状態も素晴らしい。(LPC)


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