★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇忘れ去られた名指揮者ケンペン指揮ベルリン・フィルのベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」

2020-06-04 09:35:42 | 交響曲(ベートーヴェン)

ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」

指揮:パウル・ファン・ケンペン

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

録音:1953年5月26日~28日、ベルリン

LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) 13PC‐260
 
 これは、オランダとドイツで活躍した名指揮者パウル・ファン・ケンペン(1893年―1955年)の雄大な指揮の有様を存分に鑑賞できる貴重なLPレコードである。私は最初に、このケンペンの「英雄」のLPレコードを聴いた時、「これはフルトヴェングラーの指揮のレコードの間違えではないのか」と疑ったほどである。よく“フルトヴェングラーの前にフルトヴェングラーなし、フルトヴェングラーの後にフルトヴェングラーなし”と言われるぐらいフルトヴェングラーは傑出した指揮者で、誰も真似などできないと信じられていた。しかし、このLPレコードを聴く限り、「フルトヴェングラーの後継者は実は居て、その名はケンペンだ」と言っても、あながち見当はずれでないのではなかろうかとも思われるほど、この「英雄」のケンペンの指揮ぶりは、空前絶後とも言えるほどスケールが大きく、力強さも申し分ない。ベルリン・フィルも、ケンペンに引きずられるように、一糸乱れぬ熱演を聴かせる。フルトヴェングラーが指揮台に立つだけで辺りの雰囲気が緊張感に包まれたといわれるが、このケンペンの「英雄」の緊張感もただごとではない。今、このような指揮をすると、「大時代がかっている指揮」とか「古臭い指揮」とか言われて嫌われることがしばしばだ。しかし、そんな今に時代だからこそ、逆にケンペンのような、“皆俺について来い”的な力強い指揮者の復活が望まれると考えるのは、私だけであろうか。ちなみに、この録音はCD化(ユニバーサルミュージック)されているようなので、一度お聴きになってみることをお薦めしたい。パウル・ファン・ケンペンは、オランダのハーグに近いライデンで1893年に生まれた。アムステルダム音楽院でヴァイオリンを学び、たった17歳でメンゲルベルクが音楽監督を務めていたアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団のコンサート・マスターに就任したというから驚きだ。1942年からはカラヤンの後任としてアーヘン国立歌劇場の音楽総監督に就任する。第二次世界大戦後の一時期、戦時中にナチスに協力したということでオランダでの演奏活動を禁止されたが、1949年には解除され、オランダ放送フィルの常任指揮者として復活を遂げた。さらに1953年にはブレーメン市立劇場音楽監督に就任し、ドイツにも戻ることができた。ようやく、本格的活動のスタートを切ったと思わた矢先、1955年に突然の死を迎え、帰らぬ人となる。享年62歳であった。今ではケンペンは、忘れ去られた指揮者となってしまった。実に悲しいことだ。(LPC)


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