★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ゼーダーシュトレーム&アシュケナージのラフマニノフ:歌曲集

2021-02-18 09:37:16 | 歌曲(女声)

~ラフマニノフ歌曲集~

ラフマニノフ:歌わないで、美しい人よ op.4-4
           おお、私の畑よ op.4-5
       ここは素晴らしい op.21-7
       夜、私の庭で op.38-1
       彼女のもとに op.38-2
       ひなぎく op.38-3
       笛吹き op.38-4
       夢 op.38-5
       おーい! op.38-6
       ミューズ op.34-1
       嵐 op.34-3
       きみは彼を知っていた(詩人) op.34-9
       その日を私は忘れない op.34-10
       なんという幸せよ op.34-12
       不協和音 op.34-13
       ヴォカリーズ op.34-14

ソプラノ:エリーザベト・ゼーダーシュトレーム

ピアノ:ウラディーミル・アシュケナージ

発売:1976年

LP:キングレコード SLA 6121

 あまり日本では知られてはいないが、ラフマニノフは80曲以上もの歌曲を書いている。それらの中で一番有名な曲が「ヴォカリーズ」(op.34-14)であろう。ヴォカリーズは、1912年に書かれた「14の歌曲」の14曲目に当たる曲だ。当初はピアノ伴奏だったが、後に管弦楽編曲され、初演時はこの管弦楽版だったようだ。初演者のソプラノ歌手であるアントニーナ・ネジダーノヴァに献呈されている。これは、ネジダーノヴァにアドバイスを受けて、この歌曲を完成させたことによるもの。このヴォカリーズには歌詞がなく、歌手は「アー」といった母音だけで愁いを含んだ調べを歌い上げ、ピアノ伴奏が和音と対旋律を奏でていく。このヴォカリーズは、ラフマニノフが存命中から高い人気があり、現在ではピアノ伴奏の歌曲のほか、管弦楽伴奏版、ピアノ独奏版、チェロやヴァイオリンなどの独奏楽器とピアノ伴奏によるデュエット版など、さまざまな演奏形態が取られている。このLPレコードには最後の曲目として、このヴォカリーズが収録されている。ラフマニノフが作曲した歌曲集としては、1894年~96年の「12の歌」(op.14)、1900~02年の「12の歌」(op.21)、1912年の「14の歌曲」(op.34)などがある。これらの歌曲は、主にロシアの詩人の詩を歌詞とし、ロシア古典派として名高いグリンカやチャイコフスキーの影響を強く受けた曲想の歌がその内容となっている。このLPレコードで歌っているエリザベート・ゼーダーシュトレーム(1927年―2009年)は、スウェーデン出身の名ソプラノ。スウェーデン王立音楽院で学ぶ。1948年、ストックホルム王立歌劇場にデビュー。1950年代から80年代という長い期間第一線で歌い続け、本国のほか英米独など世界各国の歌劇場で広く活躍した。ピアノ伴奏は、わが国でもお馴染みのウラディーミル・アシュケナージ(1937年生まれ)。1955年「ショパン国際ピアノコンクール」第2位、1956年「エリザベート女王コンクール」優勝、1962年「チャイコフスキー国際コンクール」優勝というピアニストとして輝かしい実績を持つ。その後、指揮者に転向。このLPレコードでのゼーダーシュトレームの歌声は、よく通る美しい響きを持っており、さらに加え落ち着いた雰囲気は、ラフマニノフの歌曲の世界を表現するには打って付けのソプラノである。聴くたびに広く荒涼と広がるロシアの大地が目の前に広がる想いがする。アシュケナージのピアノ伴奏は、ラフマニノフと同邦人であることもあってか、深いところで共感しているような趣が強く感じられる。(LPC)

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