★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇スヴェトラーノフ指揮ボリショイ劇場管弦楽団のラフマニノフ:交響曲第2番

2021-02-01 09:43:57 | 交響曲

ラフマニノフ:交響曲第2番

指揮:エフゲニー・スヴェトラーノフ

管弦楽:ボリショイ劇場管弦楽団

録音:1964年、モスクワ

LP:ビクター音楽産業 VIC‐5186

 ラフマニノフは、モスクワ音楽院でピアノと作曲とを学んだが、西欧的で、しかも保守的な傾向が強い、当時のモスクワ音楽院の本流とも言うべき作風であった。このこともありチャイコフスキーからは高い評価を得ていたという。一方、同じ頃モスクワ音楽院で学んだスクリャービンは、常に革新的立場の作風で、両者はモスクワ音楽院を卒業する時には、同音楽院を代表する作曲家として共に将来を嘱望されていたが、その作風はかなり異なっていた。ラフマニノフは、3つの交響曲を残しているが、このLPレコードは、その中で一番有名な第2番が収録されている。第1番の交響曲は、1897年に初演されたが、完全に失敗に終わってしまう。ラフマニノフは、このことがもとで精神障害に罹り、一時は作曲を全くできなくなる事態にまで陥る。ラフマニノフは、それだけ交響曲第1番の成功に期待していたということだったに違いない。病が癒えて新たな作曲に意欲を見せ始めたラフマニノフは、ピアノ協奏曲第2番を書き、1901年に初演された。これが大好評を得たため、ようやくラフマニノフは、本来の作曲意欲を取り戻すことになる。そして、不評であった第1番から10余年経った1906年から翌年にかけて、あらたな交響曲の第2番を書き上げた。このLPレコードで指揮をしているエフゲニー・スヴェトラーノフ(1928年―2002年)は、ロシア出身の指揮者。モスクワ音楽院に学び、1955年からボリショイ劇場で指揮を執る。1962年に同歌劇場の首席指揮者に就任。さらに1965年からソ連国立交響楽団(現ロシア国立交響楽団)首席指揮者に就任した。スヴェトラーノフは、ラフマニノフの交響曲を全てを録音しており、第2番を録音したときにはまだ30代後半の若さにあった。もともとスヴェトラーノフは、ラフマニノフの演奏にかけては定評があった指揮者。それは、ラフマニノフの作品に対する強い共感と、深い洞察力に根差したものであったからである。このLPレコードでのスヴェトラーノフの指揮ぶりは、ロシアの魂が宿ったような、情感あふれる演奏を展開し、他の指揮者を寄せ付けないような集中力の凄さにただただ聴き惚れる。決して表面的な演奏をするのではなく、内面に向かって深淵な世界を構築するような指揮ぶりだ。ロシアの高原にただ一人たたずむラフマニノフの姿が目の前に現れるような演奏内容だ。ボリショイ劇場管弦楽団は、重厚な響きを聴かせるので、余計に深みのある演奏内容となっている。これこそが本場のラフマニノフ:交響曲第2番である、といった説得力のある演奏内容である。(LPC)

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