★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇バルトーク弦楽四重奏団のバルトーク弦楽四重奏曲第3番/第4番

2021-02-04 09:40:29 | 室内楽曲(弦楽四重奏曲)

バルトーク:弦楽四重奏曲第3番/第4番

弦楽四重奏:バルトーク弦楽四重奏団

         ペーター・コムローシュ(第1ヴァイオリン)
         シャーンドル・デヴィッチ(第2ヴァイオリン)
         ゲーザ・ネーメット(ヴィオラ)
         カーロイ・ボートバイ(チェロ)

LP:RVC(ΣRATO) ERX‐2055(STU-70397)

 これは、バルトーク弦楽四重奏団が録音したバルトーク:弦楽四重奏曲全曲集(第1番~第6)の中から第3番と第4番を収録したLPレコードである。バルトークは、ピアノの名手であったことでも分かるように、古典派やロマン派の作品を完全に消化した土台に立って、無調音楽に代表される現代音楽の作曲技法を身に着け、さらに自ら収集したハンガリー民族音楽を駆使して作品を完成させていった。特に6曲からなる弦楽四重奏曲に、このことが見事に結実している。弦楽四重奏曲はベートーヴェンが頂点を極めてしまい、その後、シューベルト、シューマン、ブラームスなどの名だたる作曲家が何度も挑戦しても、ベートーヴェンの域に達することはできなかった。そんな中、バルトークは唯一、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲に拮抗しうる作品を残したのである。バルトークは、古典派とロマン派のクラシック音楽から出発し、民俗音楽それに現代音楽という要素を組み込み、独自の音楽の世界を切り開いて行った。そしてその頂点にあるのが6曲かなる弦楽四重奏曲であるということができよう。第3番は、複雑な対位法とリズムの込み入った組み合わせによって構成されている。技術的に見て高度なものへの挑戦と、抽象的な表現が、往々にしてこの曲を難解にしがちである。しかし、その中にバルトークの新しい音楽の地平線を求める並々ならぬ情熱が隠されており、独自の魅力を持った作品に仕上がっている。一方、第4番は、その構成の緻密さと統一感により、ベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲にも匹敵する内容を持った作品と評価されている。このLPレコードで演奏しているバルトーク弦楽四重奏団は、ハンガリーの首都ブタペストのリスト・フェレンツ音楽院を卒業したメンバーにより1957年に結成された。バルトーク弦楽四重奏団の名称は、その演奏の素晴らしさに対し、バルトーク夫人およびハンガリー政府から贈られたものという。1964年に、ベルギーで開かれた「世界弦楽四重奏団コンクール」で優勝を飾り、一躍その名を世界に知られることとなった。1970年には、ハンガリーで最高の文化功労賞「コシュート・プライズ」を受賞している。最初の来日は1981年で、その後しばしば来日を果たした。このLPレコードでのバルトーク弦楽四重奏団は、実に緻密で、同時に起伏に富んだ深い内容の演奏を披露してくれる。音自体に広がりがあり、弦楽四重奏曲というジャンルを飛び越えたようなスケール感が何とも言えない。優美であると同時に、バルトーク独特の鋭さも合わせ持ったところに、この四重奏団の真骨頂を見て取れる。(LPC)

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