今何処(今の話の何処が面白いのかというと…)

マンガ、アニメ、特撮の感想ブログです。

今週の一番『神のみぞ知るセカイ』 第2話

2008年05月07日 | マンガ


http://www.websphinx.net/manken/come/wek1/wek10358.html(今週の一番)

LD >> いいノリですよね。「同じ血が流れていない!」でドクロ子がぱくっと指から血を吸いに言ったのは「場を変える」威力が出ていますね。
ルイ >> 血を吸うのは上手かったですねえ。
LD >> いや、血を吸うネームは本当に評価できますね。展開の“悪い流れ”ってヤツをあのワンアクションで完全にひっくり返している(感心)…「アルバトロス」の時もそうだったんですが、若木先生、連載のとっかかりの組み方は相当上手いですよ?



地獄から逃げ出した悪人の魂を集めるために主人公の桂馬と共闘する事になった悪魔・エルシィが、「桂馬の妹」という偽装をして桂馬の家に住み込もうとしたところ桂馬から「設定が甘い!」と険もほろろに拒絶されるシーンです。血がつながっていないのが許せない!と指さした桂馬の指に即座に噛みついて、血を吸ってしまう。そして「これで同じ血が流れました」とやり返すんですねw
若木先生のネームって元々僕は好きなんですが、このシーンはかなり良かったです。第一話の段階でエルシィのキャラが既に組まれていて(当然だけど…)前向きではあるんだけど、あくまで天然で、意識的には乱暴強引な手段には出るような娘ではない事が分かるんですね。少なくとも突然、人の指を咥えて噛むなんていう“はしたない事”をする娘ではないとw

それが二話にしてそのキャラ・ルールを崩してなおキャラがブレていないってのは、第一話でかなりしっかりキャラを積んだ証左なんですけど、要するにこの時、エルシィは凄く必死なんですよね。契約を履行し立派な悪魔になる事に誇りをかけていて、瞬間的に無い知恵を絞って“無我夢中”で桂馬の指に食いついている。その必死さが良く伝わっています。(それがまたキャラを積む…)

“無我夢中”の気持ちが、あ~だこ~だ理屈をこね回して「エルシィの在る物語の展開」を拒んでいる桂馬の流れ(悪い流れ)から一気に逆転を呼び込んでしまっている。「同じ血が流れていない」以外にも桂馬が出した懸案事項はあるんですけど、この一話真ん中の、このシーンでエルシィの流れは直感できてしまう。もう大丈夫だとw頓知とは言え「同じ血が~」って最大の難関をもう既に超えてしまっていますし、それが瞬間的にひっくり返り、しかもエロい!わけです。ちょっとブルッと感動してしまいますねw


速度論
このブログでは僕がよく使う「速度」の話もまとめて行こうと考えていますが、ちょっと先にここでもその視点を添えておこうかと思います。
…要するにこのネーム、桂馬がビシッと止めに指さしたその指を即座に“打ち返して”逆転している流れがキレイなんですよね。それがあまりに上手く行っているので、たとえとして凄く野暮ったく聞こえるかもしれませんが……最大の難関である「血のつながり」の解決部分は、普通にプロットを組むと(エルシィのキャラに沿って)何かの事故(ドジ?)で飲んでしまった…という選択もあり得ると思うんです。最大の難関なんですから最後のオチに使いましょうか?そうすると、そこまで展開を持ってきて→エルシィ「わあ!これで全部の条件クリアですね?落とし神さま?」→桂馬「ば、ば、ば、ばかなあ~!?」→をラストカットにするようなストーリーをちょっとイメージしてみて下さい。……………(赤面)…い、い、い、いいいんですよ!!良いネームの前には凡なプロットは色褪せるもんなんです!!(汗)

…そうすると中盤での桂馬の流れはそのままに「そもそも同じ血が流れてないだろーが!!」って指さしには、ガーン!となってもらって一旦スゴスゴ引き下がってもらう事になりますかね?まあ、その展開に1ページ使われて?クライマックスに偶然、血を飲んでしまう展開を形成するのにさらに2ページくらい使いますかね?全体像としては大体こんなイメージになるかと思います。
…これ「そもそも同じ血が流れてないだろーが!!」と言われて→パク!!→カリッ!→って展開と、→スゴスゴ引き下がってしまう展開…、比べてみて後者が「遅い」という感覚は分かってもらえるでしょうか?パク!!→カリッ!は、それらの展開を全て凝縮して、血を飲むという2コマに詰めています。そうする事によってエルシィの“無我夢中さ”も載って、なおかつ、別のクライマックスや情報も載せて行く事になるわけなんです。

こういう凝縮された感覚を僕は「美しい」と思ってしまうんですが「速度論」というのは大体こういう感じの話が大元になっています。まあ他にもいろいろ理屈をつけているんですが…。こういう詰められたネームの美しさが感じられると、週刊連載の一回に対しても色々観えてくるものがあるんじゃないかと思っています。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿