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今週の一番『ナンバ・デッドエンド』さりげない芝居の良さが人情劇を造る

2011年03月09日 | マンガ
【2月第3週:この彼女はフィクションです。 第2話 こんな女に誰がした 】
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『ナンバデッドエンド』の剛と兄の和解のシーンがとてもよかったです。『ナンバデッドエンド』(作・小沢としお)は一家そろってヤンキーの家族に生まれ、中学時代までは近隣にその名を轟かせたヤンキーだった難波剛くんが、そんな生活にいや気がさして、高校からは普通の学生生活を送ろうと真面目一辺倒の白百合高校に入学する。しかし、運命のなせる業なのか不良にまつわるトラブルに次々巻き込まれるという物語。

今週の一番『ナンバデッドエンド』どうしてこうなった?(´・ω・`)


最近の展開としては、この話の一番の問題点だった、両親(と家族)を騙して白百合高校に通っているという事は露見しつつも、徐々に家族の理解を得て行き、遂に親子和解という感じになって。次に来た展開が、あとはもう卒業間近という時になってナンバくんが特服の不良だという事が(学校を守る)暴力事件と共に、学校にバレてしまいます。一度は退学に決まりそうだったのですが、ナンバくんのクラスメートたちががんばって抗議して処分を転換させると。そんな感じに総て丸く納まる大団円と向かっているように見えたんですが……。

最後の最後に、ナンバくんを嫌っていた教師の桐山が、内申書の書き換えで入学した事を材料に、ナンバくんに自主退学を迫るんですね。事に関わった恩ある長谷川先生の責任が問われる事を恐れたナンバくんは、遂に桐山に屈して自主退学してしまうんです。…で、退学後のナンバくんはやけくそになって(↑)のようなビフォア・アフターになっているんですが…(汗)

(↑)最近の展開についてはこの記事で言及していますね。しばらく相当荒んでいた剛くんですが、ようやく、立ち直り、自分が巻き込んで危うくヤクザの手下にされそうになった仲間たちを救って、今、自分の生き甲斐というか、やりたい事を見つけた兄に会って和解して行きます。

元記事の方で言及している事は、もう少し様子を観て、考えてから大体の結論に入ろうと思いますが…人は“奇跡”というか、その場のどんでん返しがなくても立ち直る事はできるんだよ。いや、荒む結果を呼んだのがそもそもこの事件なのだから、絶望からも這い上がれるというか、そういう物語として在ったのかな…と今は考えています。



しかし、今回、ここを取り上げたのは物語的に、展開的に「よかったね剛」という意味合いより、その場面で描かれた人情劇の芝居の良さに感銘を受けたからです。なんて事無いボロボロのラーメン屋で、兄貴がお世話になっているオバチャンが出したラーメンをすする。…そして、それまでの自分たちの“すれ違い”をポロポロと洗い流すように語ってゆく…「よかったね剛」が前提ではあるんですが、その芝居の一つ一つがすごく胸に染みました。

セリフだけを抜き出せば「よかったじゃん、やりたい事が見つかって」とか「オメーは?オメーもいろいろあんだろやりてぇこと?」とか、当たり前のホームドラマな会話なんですが…それがいい。剛が兄貴の前にケンカで腫れた顔で現れた時、もうそこで兄貴は剛が立ち直った事を察して、荒れていた時にかける事もできなかった“自分の言葉”を探しているんですよね。
…謝りたい。自分が、普通の高校に行くことを許さないような人間だったから、剛は書類を偽ってけっかあとちょっとで卒業だったのに退学になってしまった。…それはもうどうにもならない事だけど。何かあの時、かけられなかった言葉をかけたい。…剛もまた、荒れていた自分が家族に迷惑をかけた…というか心配をかけてしまった事に何か言いたくて来ている。その二人が、何気ない世間話というか近況報告の会話の中でポツリ、ポツリ、と気持ちを乗せて行く。
ラーメン屋の食堂でそれを聞いているお客もいれば、聞いていない(であろう)客もいる。その食堂の空気が、何とも言えず染みるんですね。二人とも不器用な所があるから、二人向かい合うんじゃなくって、仕事中でもないと思っている事の言葉が出てこないというか。

ラーメン屋のオバチャンや、剛の隣にすわっているオヤジの芝居がまたいいんです。等身大の不良マンガ『ナンバ』シリーズが、こういう地味な芝居の良さに裏打ちされて、作られているという事があらためて分かった一回でした。


ナンバデッドエンド 11 (少年チャンピオン・コミックス)
小沢 としお
秋田書店


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