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ホテルの質と福祉国家

 福祉国家とは何か。観念的福祉国家論者に特に見られる傾向であるが、概念を定義せず、いわゆる「福祉国家」として議論を展開することが多い。これはすこぶる非生産的である。社会学の方法論を用いて、スウェーデンの高齢者ケアを実証的に研究するキョトンCとしては、まず定義から入ることにしよう。これを定義主義と言う(言っているのは私だけ?)。テーゲー主義とは、全く異なるので注意が必要(言っているのは私だけ?)。

 さて、福祉国家とは、全ての国民にQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を保障している国家のことである。
 QOLとは何か。一人ひとりの人間が、生命の質、生活の質、人生(生涯)の質という3つの次元に関して全て十全な状態にあること。
 こう定義してみると、福祉国家といい、構成概念であるQOLといい、どちらも目標概念であることが分かる。

 スウェーデンもデンマークも福祉国家の代表格に位置づけられることが多いが、どちらも「相対的な意味において」福祉国家であるに過ぎない。どちらの国もユートピアではない。

 今回の海外出張で、相対的福祉国家を訪問し、平均的なホテルに宿泊したわけであるが、ストックホルムの糸コンニャク1本ホテル(4つ前の記事参照)は、小生の生命の質(へたをすれば風邪を引いていたかもしれない)および生活の質(風邪を引き、その後の10日間のインタビュー調査が実行できなかったかもしれない)を著しく脅かした。

 あのようなホテルが存在すること自体、福祉国家スウェーデンにはそぐわない。何もおのぼりさんだけでなく、ビジネスで宿泊しているスウェーデン人も多数いたことを考えると、彼らスウェーデン人のQOLを阻害していることは明白だ。国民のQOLを脅かすような国は、相対的な意味でも福祉国家と言うことはできない。

 翻って日本はどうか。スウェーデンやデンマークの半額あるいは、半額強の宿泊費を支払うだけで、日本中いたるところで、QOLの高いホテル生活が満喫できる。ホテルによる格差は極めて少ない。当たりはずれはなく、ヒット率100%。今回の海外出張では、当たり、はずれ、当たり、はずれであり、ヒット率50%。
どちらの国が本当の意味での相対的に望ましい福祉国家であろうか。

 今後、色んなアリーナを対象に比較していこうと思う。
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