玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

たんぽぽさんと斉藤さん

2008年01月20日 | 「水からの伝言」
左翼・リベラル系政治ブログ界の一部で起きた「水からの伝言」騒ぎを見ていて「まるで『斉藤さん』だな」と思った。
「斉藤さん」とは日本テレビ系列で水曜10時に放送されているドラマである。

斉藤さん 公式サイト
うるさかろうが、煙たかろうが、斉藤さんは正義の道をゆく。

悪いことを悪いと言って、何が悪い?
ムレない、へつらわない、絶滅珍種“NOと言える日本人”
斉藤さんに今、世の女性たちから大絶賛が寄せられています。

「KY」(空気読めない)という言葉がはやるように、いまの日本、何事もまわりの様子をみながら行動するのが無難で当たり前という風潮。そこに斉藤さんは斬り込みます。

「空気なんて読むな」
こんな「斉藤さん」のそばにあなたがいたら…
味方ですか?敵ですか?それとも知らんぷり?
このドラマは「斉藤さん」とそのそばにいてしまった人たちの物語です!

これでは斉藤さんが「女性たちから大絶賛」される完璧なヒロインのようだが、二話までのドラマでは「空気の読めない・自分勝手な・乱暴な・友達のいない」はぐれ者として描かれている。ヒロインというよりトラブルメーカー扱いだ(やがて状況が変わるのだろうが)。
下は原作マンガの書評の一例。

本とテレビと映画のブログ | 小田ゆうあ 斉藤さん
斉藤さんだって、好きでひとりでいるわけじゃない。友達だって、本当は
ほしいんです。でも、嫌われることより、ひとりになってしまうことより、
「悪いことを悪いと思えない人をほっとく方が怖い。そんな人たちばっか
の社会が、自分の子供の未来だなんて怖い」。そう言えるのが、斉藤さん。


Amazonの読者レビューでは賛否両論だ。

斉藤さんのような内部志向型(リースマン「群衆の顔」)の人間は幼稚園ママグループのような他人指向型の人たちには異常に見える。ヒロインであるはずの彼女がトラブルメーカー扱いされる(そして斉藤さん自身も半ばそれを受け入れている)描写にはリアリティーがある。プロットは変だけど(高校生が幼稚園児に嫌がらせするか!?)。

「水からの伝言」をめぐる今回の騒ぎでは、たんぽぽさんが「斉藤さん」の役回りである。
「『水からの伝言』は科学的にはトンデモであり道徳的にも問題だ」という正論を言ったことで「らんきーブログ」ぶいっちゃん氏と彼の支持者たちから強い反発を受けた。

第1話
衝撃的な出会いが、若葉に強い影響を与えることになる。それは、ゴミ収集所で規則を守らない年配主婦に物申す、勇敢な女性の姿・・・そう、この人こそ、相手が誰でも「ダメなものはダメ!」と、ハッキリ物申す、『斉藤さん』こと、斉藤全子(観月ありさ)。面倒な事に巻き込まれたくないと去る若葉だったが、尊が入園する、こばと幼稚園で、息子・潤一(谷端奏人)を連れた斉藤さんと再会することになる。
斉藤さんは、こばと幼稚園でも、トラブルメーカー扱いされ、園ママ達からは敬遠されている。それどころか、身体中に刺青を入れるヤクザだとか、若い男と不倫しているとか、評判は散々。

そういえば斉藤さん、じゃなくてたんぽぽさんを「共産党の手先」であるかのように中傷したSOBA氏のような人物もいた。
幸いなことに、たんぽぽさんに味方するブロガーが続々と現れてそれぞれに論陣を張った。たんぽぽさん一人でも負けることはありえなかったと思うが、衆を頼んで威圧する手合いには数の力が効くのも事実だ。
馴れ合いと罵倒は得意でも対話と論争は不得手な「らんきー」一派はすっかりおとなしくなってしまった。そのかわり自称「中立」の人たちが「どっちもどっち」「批判の仕方に問題がある」とブツブツ言っている。

あっさり揉め事が収束したようで私のような野次馬には物足りないのだが、「らんきー」一派や自称中立の人たちはたんぽぽさんの正論に納得したわけではないだろう。被害者意識を溜め込んで、やがてどこかに噴き出すはずだ。
そのエネルギーが外部の敵に向くのか、それとも内ゲバになるのか、あるいは明後日の方向でトンデモや陰謀論に結びつくのか。予想するのは難しい。


ドラマの斉藤さんはどうなるのだろうか。
第二話の最後で友達が一人できたけれど、それ以上仲間が増える気配はない。しばらくは孤独な戦いが続きそうだ。
私はありきたりなハッピーエンドにしないほうがいいと思う。
斉藤さんの生き方・考え方が簡単に理解され園ママたちが喜んで仲間になる、なんていうのは都合が良すぎて嘘臭い。正論を通すのはほとんどの場合つらく苦しいことだ。自分も他者も傷つけるイバラの道である。だから、「真昼の決闘」のように苦味の利いたエンディングがいい。

真昼の決闘 - Wikipedia
ウィル・ケインはハドリーヴィルという町の保安官。彼は結婚したばかりで、その日を最後に退職する予定であった。そのウィルの元に、以前彼が逮捕した悪漢フランクが釈放され、正午の列車でハドリーヴィルに到着するという知らせが舞い込む。フランクは彼の仲間と共に、ウィルに復讐するつもりであった。

ウィルはエミイと共に逃げようとするが、思い直して引き返す。父と兄を殺された経験を持つクエーカー教徒のエミイは、正義よりも命の方が大事だと説得するが、彼の意思は固い。ウィルは仲間を集めに奔走するが、誰も耳を貸さない。判事は早々に町から逃げ出した。保安官補佐のハーヴェイは腕はいいが精神的に未熟な若者で、ウィルの後任に自分が選ばれなかった恨みと、かつてはウィルやフランクの恋人だった婚約者のヘレンとの因縁もあって協力を断る。酒場の飲んだくれ達はウィルよりもフランク一味を応援している始末。教会では意見が分かれて議論になるが、結局ウィルが町を去るのが一番良いという結論が出る。保安官仲間たちは居留守や怪我を理由に辞退する。結局一人も集まらないまま、フランクの乗った汽車が到着し、4人の悪党相手にウィルの孤独な戦いが始まった。

ヘレンはハーヴェイにも町にも愛想を尽かし、エミイを連れて汽車に乗ったが、銃声が鳴り響くと、エミイは飛び出して戻っていった。ウィルは建物に隠れながら応戦し、2人を倒したが、肩を撃たれてしまう。そこへエミイが来て1人を撃ち倒すが、フランクに捕まってしまう。フランクは彼女を人質にとってウィルを誘い出すが、エミイが抵抗してひるんだ隙にウィルに撃たれる。住民が集まるなか、ウィルはバッジを投げ捨てると、エミイと共に去っていった。