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牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

子牛市を生かす

2009-02-15 13:42:21 | 子牛


昨日は、肥育牛の共進会効果について記述したが、同様に以前は子牛市場出荷前に子牛の品評会が行われていた。
最近は、その様な品評会の話は伝わってこなくなった。
しかるべき会場に子牛たちを引き出す手間や経費を考えると、その目的意図が不要に至ったのであろう。
それに、第三者的に言わせて貰うなら、係る子牛たちを審査して序列を付けても、子牛の競り価格には連動しても、育成後の繁殖や肥育成績に反映しない可能性を否定できないことも現実の問題であろう。
共進会や品評会がなくなっている現状からは、自らの子牛生産については、子牛市場での計量結果に基づいて、生時からのDG(1日当たりの増体量:《計量値-生時体重》/日令)、発育度(肩での体高値)、栄養度、競り価格などを市場名簿に記録して、自らの子牛が置かれているレベルを考慮することにより評価できる。
同時に、生産者仲間から、親牛を含め仔牛の飼い方について、具体的に尋ねるなど意見交換することが、良い子牛生産を推し進めるには、効率よい効果が期待できる。
加えて、購買者が競り開始前に、下見に廻る際、どのような子牛を一番欲しがっているかなどを積極的に聞くことも良いチャンスである。
その際、なかなか口を割らない購買者もいるかもしれないが、懇切丁寧に話してくれる購買者は必ずいるはずである。
聞けたら、一人でも二人でもしめたものである。
一方購買者は、子牛を名簿の情報に基づいて下見して、この牛は将来どのレベルに成長するかを直感的に判断しなければならない。
購買者の直感能力如何で肥育成績や差益に大きく左右される。
それらの結果が、競り価格として現れる。
それらの価格が、何故高いか低いかを市場名簿を通して様々に判断して、生産に生かして貰いたいものである。


子牛の餌付け

2009-01-29 19:47:34 | 子牛



最近、父親から繁殖牛の管理を任された若者から電話があり、「2月の子牛市に出すのに、餌をなかなか食い込んでくれないが」というものであった。
詳細に聞いてみると、生後数ヶ月目の頃から、乾草と稲わらを半々にして与え、子牛育成用のペレットを与えているという。
粗飼料を与えることはよいが、競り市以前に稲わらを与えていることに、食い込みの悪さの原因があると判断した。

最近の子牛の管理については、以前ブログで紹介したが、3年前だっか、徳之島で200頭近い繁殖牛を家族で管理されている牧場を見させて頂いたことがある。
其処では、生後数日で離乳して、その後3ヶ月間は哺乳ロボットで保育していた。
この間、粗飼料は一切与えず、人工乳と哺乳時用のペレットのみで育てていた。
人工乳には、下痢防止などの添加剤が混ぜられており、殆ど下痢や肺炎などに罹らないとのことであった。
数10頭がいるクリープ房が2箇所有り、それぞれに一箇所の哺乳ロボットが設置されていた。
子牛たちには、ロボットが哺乳量や哺乳時間などを感知させるためのセンサーが装着され、一箇所のロボットに向かって子牛たちが、一列横隊に順番を待っている。
センサーで個体管理が出来ていて、決められた量を飲んでしまえば、ストップされ、順番を割り込んでも、その授乳時間が来なければミルクは出ない仕組みになっている。
次第に、子牛たちはその仕組みを学習するようになり、実に上手に授乳していた。それらの様子は、見ていても楽しくなるような光景であった。
3ヶ月間は、胃袋の中に異物や雑菌などを入れないために、粗飼料を与えない。
人工乳とペレットのみで、胃内にストレスを与えないことから、胃も順調に発達し、子牛も順調な発育をするという。
3ヶ月が過ぎてから、良質の乾草を徐々に与え、増量して粗飼料の利用性を高めることで、ルーメン内環境が順調に発達して、健康な状態で順調な発育が得られるというものであった。

子牛を母乳で育てれば、子牛は生後1月も経てば、母牛の餌を食べることから始まるケースが一般的である。
この様な場合は、生後1~2ヶ月経った頃から子牛専用の飼槽で哺乳時用のペレットを置き餌として慣らし、3ヶ月目から良質の乾草を与える。
子牛市に出す頃までの子牛には、乾草を2~3kgを食い込むようにして、育成用の配合を過食させない程度に与え、繊維が荒く、タンパク質(DCP)の少ない稲わらの給与は、胃に負担となり効率の良い給与法とは言えない。

肥育素牛となった子牛たちには、仕上げ用配合飼料を給与開始する生後15ヶ月目までの粗飼料は、乾草のみとするケースが一般的で、その後から徐々に稲わらに切り替え、1月くらいで本格的に稲わらだけを与えるようにしている。
だから、若者が稲わらを子牛に与えているというのは、乾草だけの場合より、胃にストレスと成りやすく、発育が劣ることになる。
導入牛の中には、乾草よりも稲わらを好んで摂取する子牛がいる。
この場合も、早い内から稲わらが与えられているためであろうと判断している。
乾草を順調に食い込んでくれないと、優れた素牛ではないのである。




盗み飲み

2009-01-16 20:18:31 | 子牛



80頭の繁殖用雌牛で子牛生産している牧場で撮った写真である。
生後3ヶ月令までは母乳を利用しているために、朝夕の授乳時間になれば、繋いで給餌中の母牛たちの房内に子牛たちを入れる。
和牛の場合、乳房に貯留される母乳の量は個体差があるために、母乳が少ない母牛の子牛たちは、母乳の比較的多い牛の母乳を盗み飲みし始める。
ひとたび盗み飲みした場合は、その母牛を覚えておき、実母より先にそちらで飲むようになる。
盗み飲みされる母牛はそのことを感知していて、後肢で蹴るなどして追い散らそうとするが、子牛たちは、その様なことに屈することなく執拗に食いついて飲み続けるため、親の方も根負けして写真のようになってしまう。
盗み飲みされる親と子は、次第に痩せたり、発育が鈍くなり、盗む子牛は、順調に発育する。
この様なことになるから、最近の子牛育成は、生後直後に初乳を数日間飲また後は、人工保育に切り替えている。
ここでは、生産費の低コスト化のために、上記のような育成法を取っている。
盗み飲みは、酷い時には、後方から2頭、横から1頭と3頭もぶら下がっている場合もある。
広い運動場付きの房に放し飼いであっても、結構盗み飲みしている。
子牛に盗み飲みさせることは、高い育成技術とは言えない。
双子であればやむを得ないが、それ以外は、親1子1のコンビが授乳を切っ掛けとする親子関係であるのが正常である。
基本的には、生産者個々の体験を生かし、飼養標準などの給与モデルを生かすのが極無難な育成法であろう。