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牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

牛は雪の上で寝るのです。

2009-02-08 01:10:27 | 予防治療


昨日の写真と同時に、今から20年前当時の職場で撮った写真である。
牛は、暑さに弱く寒さには強いと専ら聞いてきたことである。
寒さは、さらに20年以上遡った頃の方が厳しいものであったが、この写真を撮るまでは、牛が雪の上で横になるなど考えたこともなかった。
その年は、豪雪であったが、この畜舎は屋外飼育をしていた訳ではなく、屋内に自由に出入りできるタイプの牛舎である。
横になるのであれば、何も雪の上でなくても、屋内の大鋸屑の上の方が良いはずである。
なのに、この繁殖雌牛たちは、屋外の雪の上を好んで休息を取ったのである。
何故だろうかと、色々考えたものである。
一つには、好天で、日だまりの方が心地よかったと言うことであり、もう一つは、大鋸屑である。
乾いている大鋸屑は、問題はないが、降雪時は、気温が低く、湿気ておれば、その低温が大鋸屑を冷えさせているために、雪とそれほど冷たさが変わらなかったのではないかであった。
畜舎廻りの雪をローダーで除雪して置いておくと、次第に溶けるが、雪の表面は大鋸屑で覆われ、そうなると大鋸屑の下にある雪は、1月も2月も一向に溶けずに残る。
大鋸屑は、畜舎に入れる時に廻りにこぼれていたものである。
また、以前は夏の氷を溶かさないために大鋸屑の中に入れて置いたものである。
このように、大鋸屑は、低温を保持する特徴があるらしい。
それを考えれば、厳寒期に牛房内に大鋸屑を入れるのは、考えものなのかも知れない。
この雪上で休息する姿は、それ以来見かけたことはなく、珍しい光景であった。
豪雪地帯では、見かけることがあるのだろうか、それとも、牛を外に出す習慣があるかないかであるが・・・・。

新聞を読んで

2009-02-06 23:57:59 | 予防治療


農家育ちの筆者は生まれた時から牛がいて、以来今日まで和牛に関わってきた。
毎朝、牛が餌をはむ姿を見ると、家族と顔を合わせた時のような心地良さを感じる。
旅行先で思わず和牛に出くわした時も同様の感が湧いてくる。
その他でも、テレビや新聞に牛の写真が掲載されていれば同様にそれを注視しがちである。
恐らく和牛関係者なら誰しもが同様であろう。
今朝の日本農業新聞の一面には、飛騨牛の雪中行軍の写真と記事があり、同様に朝日新聞には京都府の和牛を貸し出すレンタカウ制度の記事があった。
今年の干支の丑年がらみの記事であったが、牛たちに元気を与え、牛たちの本質を生かし役立てると言うもので、牛と人との関わりの深さを思い起こさせられた。
これが未年であれば羊の、午年であれば馬の雪中行軍の様子が紹介されるのであろうとも思えてくる。
具に思い起こせば、牛の足腰を鍛えると言うが、この様な光景は、国や自治体の牧場ならではで、産業と直接関わっていない箇所でしか見ることはない長閑な情景である。
また、レンタカウでは、不耕起田放牧であれば、その思いつきは良いかも知れないが、レンタル以前に畜主になって貰いたいものだ。
そして、国や府県所有の牛が何10万頭もいて、それが産業に結びつくのであれば、合点もいくが、高々数頭の話に、国も後押ししているという。
和牛を取り巻く厳しい折に、手放しで拍手喝采とは、お恐れながら致しかねる。
増頭支援策などが山積しているのではないだろうか。

牛飼いが思うこと

2009-01-27 22:01:51 | 予防治療


コメントを頂戴した。
資金力だけで畜産分野を翻弄させてほしくないという主旨には、筆者も同感である。
牛飼いのプロであって始めて資金力は生かされ、かかる産業に貢献できるからである。
多頭化には、相当数の人材が必要不可欠であるが、それらに従事するには、当然のことながら個々の牛たちから目を反らすことのない牛飼いのプロであることが要求される。
相場低迷期こそ千載一遇のチャンスと記したが、それには、それらを意識すべきが欠落していたかもしれないが、経営の現状に照らし合わせた上でのチャンスだと考えている。
大型牧場が危ないという話があったが、その危機感については他人事ではない同様の気配を感じている。
原油高、飼料高騰、前年度までの素牛価格、それに枝肉価格の低迷は、想像以上に深刻な状況下に至っている。
技術は経営に最大の味方になるが、優れた技術があっても、経営に対する熱意と研究心がなければ、ただの技術に過ぎない。
良く聞く話であるが、牛が死んでも数日間気が付かないレベルのケースがあると。
この様なケースでは、牛の事故率がかなり高いことが予測できる。
仕上がり間近の肥育牛は、1頭当たり80万円以上の欠損にもなる。
事故率は1%未満に抑えなければ経営は成り立たないとも言われている。
この様な厳しい状況下で、離職者を就農させるべしの機運があるが、全くの部外者がいきなり就農では、再度の離職者に成りかねない。
行政施設等で、分野別技術指導や就農支援をそれらの前提とすべきである。
また肝心の枝肉価格についての現状は、枝肉重量が480kgで枝肉単価が1,500円の枝肉価格は72万円に留まってしまう。
素牛価格が65万円であれば、40万円程度の赤字が残ることになる。
この単価が1,800円であっても20万円の赤字である。
大規模であればあるほど、年間千頭を出荷することで、2億円の赤字を抱え込むことになる。
この様な肥育経営は、対岸の火事ではなく、やがては、肥育産業の低迷から、子牛販売相場に跳ね返ってくることになりかねない。
肥育経営者と繁殖経営者間に壁を意識するようでは、お互いが共倒れの事態を供用することに成りかねない。
この両者が肉用牛に係る産業をより発展させることが、自らの経営安定にも繋がると信じてやまない次第である。

ET子牛の増産を考える

2009-01-07 22:21:05 | 予防治療


昨年末に酪農家から聞いた話である。
「F1子牛ならいいが、乳牛の子牛が生まれても、引き取り手がない」とのことであった。
また、「和牛のET子牛も、先月までは、1頭16万円であったが、今月から13万円で引き取られた」というものであった。
最近は、ET子牛は、生後約1ヵ月令で育成農家に引き取られて、生後約10ヵ月令で子牛市場に出されている。
当初の頃は、複数人数が寄り合って入札方式で引き取られ平均価格は、25万円程度であったが、近年は、単独の業者との相対で引き取られているという。
そして「交配父牛が悪い」も安価の理由にしているという。
酪農家も厳しい状況だと力説する。
そこで、交配内容が悪いと指摘されるなら、酪農家自身が和牛の子牛市場に足を運んで、市場名簿から、ET牛の血統・月齢・体重と競り価格との関係を詳細に調べて対処すべきではないかと進言した。
一方、和牛の繁殖頭数は、横ばい状態が続いている。
ET子牛を引き取った側の推定採算は、素牛代13万円、飼料代等10万円、子牛市での競り予想価格が45万円で、差益は22万円となることから、素牛価格を5万円程度高く引きとることで、酪農家のET子牛の生産頭数が伸びるはずである。




初夢

2009-01-05 19:46:46 | 予防治療


DNA(Deoxyribonucleic acidの略語)は、親子判定や個体判別や犯罪捜査など人間にとってその遺伝情報を確認する手法に取り入れられ、一般的に応用されるようになってきた。
畜産分野に於いては、種雄牛の登録検査時に両親判定が義務づけられており、採取した血液から血液型を調べて判定されているが、DNA判定を用いることでその精度はより高められるはずである。
DNAの判定には、血液だけでなく、唾液や毛髪や肉片などからも判定は可能である。
このDNAは、タンパク質のアミノ酸配列が関わっているため、これらが存在するものは個体判別が可能であると言われている。
これらのことを念頭に見た初夢を述べてみたい。
筋肉や血液や毛髪などのDNAやRNAなどの調査を駆使することで、増体や肉質情報に加えて、筋肉・体脂肪・骨などの分布や、体脂肪である皮下・筋間・内臓・筋肉内など各脂肪の分布、さらに筋肉内脂肪では、BMS値など脂肪交雑の蓄積割合に加えて、脂肪酸各組成の量と分布割合、不飽和脂肪酸など、肉の味に関する諸々の要素が把握できることである。
その過程では、該牛の両親・性別・月齢・産地なども把握できる。
つまり、個体能力が把握できると言うことは、審査標準など審査法の策定事態の有無に繋がり、子牛市場では、素牛選定で競り価格の範囲が想定できる。
また仕上がった肥育牛からは、その牛がそれまでに摂取した各種栄養分やミネラルやビタミン類の含有分布を把握することと、それに関連してその牛が摂取した餌や水などの種類や生産地や量が推定できて、BMS値の数値毎にそれらの値が求められるというものである。
進む科学技術は日進月歩、リトマス試験紙ではないが、毛髪を判定機にかければ、諸々の値がたちどころに画面に現れるというものである。
現れた数値を基に、個体毎の効率的な給与管理により、目的通りの肥育が実現することになる。
このことは、肥育期間の短縮や飼料資源の効率的利用が実現することにもなる。
正しく究極的な肥育技術である。
若い学者や研究者には、こんな未熟な夢ではなく、独自性のある豊かな夢を描き、やがて実現して貰いたいものである。

新年のご挨拶

2009-01-01 00:06:55 | 予防治療


丑年1月1日 2009'

あけましておめでとうございます。
皆様には迎春如何お過ごしでしょうか。
旧年中は、拙いブログ「牛コラム」を開いて頂き、誠に有難うございました。
今年も、牛飼いに関わる様々なテーマを探し求めながら頑張りますのでよろしくお願いします。

子年は、牛飼いにとり、悲喜こもごも、色々な出来事がありました。
今年は、丑年ならではの「上向きでっせ」のとおり景気回復と経営の安定化が実現することを願っております。

皆様の経営の安定とご多幸を祈念しながら、新年のご挨拶とさせて頂きます。


牛の性格は人に似る

2008-12-23 20:01:01 | 予防治療



犬猫だけでなく、牛でも、相手が危害を加えるか否かを直感的に判断しているようである。
一方人同志の場合、顔に現れる表情や、語り口、様々な癖などから、ある程度の性格判断ができる。
牛の場合は、人なつこさに差があったり、角で威嚇したり後肢で蹴るなどの有無や複数飼い時に強弱関係があったりする。
また、舎外にいる人や動物への反応が神経質で敏感なのとそうでないのもいる。
これらの反応は、危害と感じる場合と甘えからの場合とにそれぞれ異なっている。
牛毎に、反応が積極的な牛と臆病な牛もいる。
つまり、これらの反応は知的かそうでないかの違いはあるが、人の場合と差ほどの違いはなさそうである。
これらは、日頃人がどのように接しているかによって、個々に差がある。
よく、牛だけでなく犬猫でも、餌を与えている人には、人なつこくなると聞くことがある。
しかし、それは必ずしも正解ではなく、与える人の性格によって若干異なる。
餌を与えなくても、なついてくる場合も多々ある。
牛とのコミュニケーションに無関心な飼い主の場合や、ことある毎に怒る飼い主の場合、牛も上記したような近付き難い様々な性格になる。
もともと子牛の時から性格の悪い牛はあまりいないはずで、牛は、飼い主の性格を概ね引き継いでいるように思われる。
牛の性格は温順であり、神経質でない方が、餌の食い込みも良く、常に安心して就寝したり反芻するために、増体速度も速く、肥育成績も良好であると判断している。





寄り添って

2008-12-22 22:49:27 | 予防治療



気温が昼間でも一桁台に下がる。
それでも天井に吊された畜産用換気扇は稼働し、舎房の床面へ向かって冷たい風が舞い降りてくる。
当然牛たちにも同様に風が当たる。
アンモニアガスを吹き飛ばすためと、敷き料の大鋸屑の水分を飛ばすためである。
冬場の寒い時に、換気扇は牛にはストレスとなろうからスイッチを切るか、風力を弱めるべきではと、メーカーに問えば、寒くても回転数は落とさない方がいいと言い張る。
夏であれば、暑気払いのため換気扇の風の中心に牛たちは、寄り添って寝ている。
ところが冬でも風を差ほど気にするようでもなく、群飼いの牛たちはしっかりと寄り添って寝ている。
風をそれほど気にはしていないようである。
夏は牛同志が重なり合うことは無いが、気温が低い冬場は、写真のように頭部を他の牛の背中などに重ね合っている風景が多く見られる。
肥育牛は、就寝時に反芻することが一般的だが、身体を重ね合って寝ている時は、熟睡していて、反芻しているのは見かけない。
人と同様に、寄り添う時は安心感から熟睡に繋がるのであろう。
肥育的には、「寝る子は育つ」でこの状態は非常に好ましいことである。



小学生の見学

2008-11-29 00:01:17 | 予防治療



筆者は小学生たちを相手に話をしたことがない。
しかし、小学生を相手に牛飼いの話をして行脚したいとも思っている。
それは、子供の内に家畜の話をしたり、見学させたりすることで、彼らが成人した時に牛飼いのことを思い出し興味を抱き、就農してして貰うことが狙いである。
まだある。今学校では「食育教育」として学外の講師を呼んで作物を作ったり、料理を指導する授業が行われている。
子供らもその授業に大変興味を持ち、真剣に対応していると聞いている。
子供たちに生産品などの食材について理解させることは大事なことであると判断している。
いつの日か、是非実現したいと思っている。

ところで、子供に話をすると言うことは、大人同様の内容では理解されない。
大人は、耳学もあって理解度は高い。
その点、子供たちには基本的なことから教えなければならない。
例えば、繁殖や肥育経営のことを話すには、その具体的な内容や言葉遣いが不可欠である。

当面の問題として、近々小学生の親子10組が見学に来ることになった。
食育教育を意識した説明をせねばと今から心弾ませているところである。
それと、肥育牛たちへの飼養環境や牛肉の安全性への取り組みなど、話題には枚挙に暇がない。


近畿東海北陸連合肉牛共進会(2)

2008-11-27 00:42:23 | 予防治療



近畿東海北陸連合肉牛共進会に出荷している6府県が導入している生産地別の導入頭数とBMS no.の平均値は次の通りであった。

│産地 │去勢頭数 │Av.BMS │雌頭数 │Av.BMS │雌雄頭数 │Av.BMS │
│宮崎 │60 │8.25 │31 │7.81 │91 │8.10 │
│兵庫 │45 │7.22 │28 │7.29 │73 │7.25 │
│鹿児島 │16 │7.06 │13 │7.15 │29 │7.10 │
│熊本 │6 │8.33 │16 │7.21 │22 │7.52 │
│岐阜 │0 │0 │13 │8.00 │13 │8.00 │
│福井 │8 │8.75 │3 │6.33 │11 │8.09 │
│京都 │4 │4.25 │7 │8.00 │11 │6.64 │
│長崎 │1 │7.00 │5 │6.60 │6 │6.67 │
│沖縄 │4 │6.25 │0 │0 │4 │6.25 │
│北海道 │1 │9.00 │3 │7.33 │4 │7.75 │
│佐賀 │0 │0 │4 │8.75 │4 │8.75 │
│静岡 │3 │8.67 │0 │0 │3 │8.67 │
│三重 │2 │5.50 │1 │5.00 │3 │5.33 │
│滋賀 │1 │8.00 │2 │8.50 │3 │8.33 │
│岩手 │0 │ 0 │2 │10.00 │2 │10.00 │
│長野 │0 │0 │2 │11.50 │2 │11.50 │
│宮城 │ 0 │0 │2 │9.00 │2 │9.00 │
│愛知 │1 │10.00 │0 │0 │1 │10.00 │
│大分 │0 │0 │1 │3.00 │1 │3.00 │
│岡山 │0 │ 0 │1 │7.00 │1 │7.00 │
│栃木 │0 │0 │1 │8.00 │1 │8.00 │
│Total │152 │7.67 │135 │7.59 │287 │7.63 │

素牛導入頭数に関して、当該共進会へ自県産の素牛を出荷したのは、兵庫県のみであった。
導入主産地で最も多いのは、全体の31.7%を占めた宮崎県で、次いで兵庫県の25.4%で、この2県だけで57.1%であった。
また導入先が21府県に広がり、以前はなかった北海道・東北・沖縄などが参入している。
肉質成績では、BMS no.について、導入頭数が10頭以上では、雌雄間にバラツキが多い中、雌7.81、去勢8.25と宮崎県産が安定的に高い成績を示した。
三重県が導入した岐阜県産の雌牛13頭も8.0と好成績を示している。
新に導入され頭数は少ないが、長野・岩手・宮城・愛知の素牛は好成績を示し、今後に期待を伺わせている。
新たな傾向としては、素牛を肥育センタ自体が生産する傾向が見られ、出品6府県全てから自産素牛が増加することを予測している。