まず、この話は採取された民話なのか? それともマーシュの創作なのか?
翻訳者は「by John V.Marsh」を「マーシュ作」と訳しているので、創作と考えているのかも。
これについてはとりあえず棚上げして、どちらの場合も想定して気がついたことを列挙していきます。
1)
そして砂歩きは、その日自分が男であることを知り(107p)
既に女も知っているかれが、どのように男であるのを知ったのか、具体的にはよく判りませんが、
東風は言った。「それを女の髪できつく結んで、やがて腐って落ちた。(・・・)」(147p)
と対応させているのは明らか。「それ」とはもちろん男性器だろう。
なぜなら、175pで砂歩きは東風に言います。
おまえは男じゃないし、おまえなぞすぐにでも殺せる。
2)東風と砂歩きは夢世界では繋がっている。
これは第一部の父と「わたし」、あるいはクローン一族の中の個人の存在を説明するための設定だろう。
3)本篇は、地球人がサント・アンヌに上陸する直前の物語で、この物語を信ずるならば、地球人上陸以前に地球より(ムーやアトランティスが暗示される)飛来した者たち(影の子)がおり(けだしそれは神武侵攻以前に大和にニギハヤヒがいたようなものか)、アボは既に先発種を真似て変身が完了していた、ということになる。
4)影の子は7人で、あるいは5人で、あるいは3人で一人の集合存在「老賢者」をもっている。これは5人のクローンがマーシュによって一人の存在と見なされたのに対応する。
7人、5人、3人で個々の名前は変わるが、一人になったとき、
今の名前は一人の名前だ。彼の名前、老賢者の名前だけは決して変わらない(170p)
で、その名前はというと、
「狼」(170p)
ということになるのです! つまり「ウルフ」!
こういうあからさまなほのめかしは、この物語がマーシュの創作であることを大いに疑わせます。
5)ジーニー叔母は、ヴェール説が正しいとするとアボは地球人上陸以前に変身能力を失ってしまう矛盾を説明したが(36p)、この物語では地球人上陸以前に変身能力を失ったということがあったとしても、そのとき獲得していた形質は「地球人」のものだったわけで、結果的にヴェール説の正しさと、地球人に変身し固定化したアボという存在は共存しうることを描いていることになる。
6)
「湿地人の星歩きは言っていた。(・・・)ぼくはそう教わった」(151p)
これは砂歩きの発言だが、砂歩きがそんな経験をしているはずがなく、東風の経験を自分の経験と勘違いしている。
自分と他者との勘違いはこの後頻出する(後述)。
7)影の子(ムー人?)が上陸し、強く影響を受けたアボが地球人外観を模倣し固定化されたいきさつが語られる。(155p)
砂歩きは聞く。それはわかった。ではなぜ影の子は地球人外観を失ったのかと。最初の説明はほとんど負け惜しみで説明になっていない。
納得しない砂歩きに老賢者が口から出して見せたのは、アボの間では毒草として知られている草。これは食えば毒だが、噛むだけなら素晴らしい至福を味合わせてくれる、と老賢者は言う。しかし――
「このために、我らはすべてを諦めた。」(157p)
マリファナのような向精神性の植物が、彼らの形質まで変えてしまった、という、これもいいわけのような説明で、それが証拠に、おまえも噛めという長老の言葉を最後まで聞かず、砂歩きは関心を失う。
翻訳者は「by John V.Marsh」を「マーシュ作」と訳しているので、創作と考えているのかも。
これについてはとりあえず棚上げして、どちらの場合も想定して気がついたことを列挙していきます。
1)
そして砂歩きは、その日自分が男であることを知り(107p)
既に女も知っているかれが、どのように男であるのを知ったのか、具体的にはよく判りませんが、
東風は言った。「それを女の髪できつく結んで、やがて腐って落ちた。(・・・)」(147p)
と対応させているのは明らか。「それ」とはもちろん男性器だろう。
なぜなら、175pで砂歩きは東風に言います。
おまえは男じゃないし、おまえなぞすぐにでも殺せる。
2)東風と砂歩きは夢世界では繋がっている。
これは第一部の父と「わたし」、あるいはクローン一族の中の個人の存在を説明するための設定だろう。
3)本篇は、地球人がサント・アンヌに上陸する直前の物語で、この物語を信ずるならば、地球人上陸以前に地球より(ムーやアトランティスが暗示される)飛来した者たち(影の子)がおり(けだしそれは神武侵攻以前に大和にニギハヤヒがいたようなものか)、アボは既に先発種を真似て変身が完了していた、ということになる。
4)影の子は7人で、あるいは5人で、あるいは3人で一人の集合存在「老賢者」をもっている。これは5人のクローンがマーシュによって一人の存在と見なされたのに対応する。
7人、5人、3人で個々の名前は変わるが、一人になったとき、
今の名前は一人の名前だ。彼の名前、老賢者の名前だけは決して変わらない(170p)
で、その名前はというと、
「狼」(170p)
ということになるのです! つまり「ウルフ」!
こういうあからさまなほのめかしは、この物語がマーシュの創作であることを大いに疑わせます。
5)ジーニー叔母は、ヴェール説が正しいとするとアボは地球人上陸以前に変身能力を失ってしまう矛盾を説明したが(36p)、この物語では地球人上陸以前に変身能力を失ったということがあったとしても、そのとき獲得していた形質は「地球人」のものだったわけで、結果的にヴェール説の正しさと、地球人に変身し固定化したアボという存在は共存しうることを描いていることになる。
6)
「湿地人の星歩きは言っていた。(・・・)ぼくはそう教わった」(151p)
これは砂歩きの発言だが、砂歩きがそんな経験をしているはずがなく、東風の経験を自分の経験と勘違いしている。
自分と他者との勘違いはこの後頻出する(後述)。
7)影の子(ムー人?)が上陸し、強く影響を受けたアボが地球人外観を模倣し固定化されたいきさつが語られる。(155p)
砂歩きは聞く。それはわかった。ではなぜ影の子は地球人外観を失ったのかと。最初の説明はほとんど負け惜しみで説明になっていない。
納得しない砂歩きに老賢者が口から出して見せたのは、アボの間では毒草として知られている草。これは食えば毒だが、噛むだけなら素晴らしい至福を味合わせてくれる、と老賢者は言う。しかし――
「このために、我らはすべてを諦めた。」(157p)
マリファナのような向精神性の植物が、彼らの形質まで変えてしまった、という、これもいいわけのような説明で、それが証拠に、おまえも噛めという長老の言葉を最後まで聞かず、砂歩きは関心を失う。
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