ほぼ是好日。

日々是好日、とまではいかないけれど、
今日もぼちぼちいきまひょか。
何かいいことあるかなあ。

『オリガ・モリソヴナの反語法』

2007-06-22 | 読むこと。


     オリガ・モリゾヴナの反語法
         米原 万理


今までロシアが舞台の小説というのは、ほとんど読んだことがありません。

というのも、学生のころ何を思ったか『カラマーゾフの兄弟』を読み始めて、
最初のあたりで挫折した苦~い経験があるのです。
それ以来ロシア文学とは縁がなくて・・・

この米原万理さんの『オリガ・モリソヴナの反語法』が、
ずっと気になっていながら読んでいなかったのも、
ロシア人の名前とか地名になじみがなくて、
覚えるのが苦手だったからかもしれません。

ところが。

前回彼女のエッセイ『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』を読んで、
すっかり彼女のファンになってしまった私。
彼女の書いた小説なら、絶対おもしろいに違いない!

そして、期待通り、いやそれ以上のおもしろさでした!!!


読む前にどんな小説なのかあらすじを調べていたら、
主人公が、小学生の頃プラハ滞在中に通ったソビエト学校で出会った、
舞踊の先生オリガ・モリソヴナの半生を辿り、深まる謎を解いていく、
というようなことが書いてありました。

それがどういうことなのか、もひとつピンとこなかったのですが、
読み進んでいくうち気づくのは、彼女の数奇な人生と、
そこから見えてくるソ連という国の為政者たちの残酷さ、
激動の歴史の中で犠牲になっていった人々の悲劇でした。

こんなふうに書くと、暗くて重そう・・・
といったイメージを抱かれるかもしれませんが、
それが米原万理さんの軽妙な文章と、
オリガという強烈でかつ魅力的なキャラクターのせいか、
全く暗い内容じゃないんです。

それに、オリガという女性の謎がだんだん明るみになるにつれ、
もう途中でやめることなんて不可能。
後半は一気に読んでしまいました。


作者自身の体験がもとになっているのは、
『嘘つきアーニャと真っ赤な真実』を読んだあとだけにすぐ気づくのですが、
それだけにどこまでが事実で、
どこからフィクションなのかわからなくなって、
だんだんすべてが本当のことのように思えてきます。

作者自身が、オリガという実在の人物の謎を解いているように錯覚し、
(モデルとなった人物はいたのでしょうか?)
よけいに強制収容所での悲惨な描写が生々しく感じられました。

ひとりの人物を描くことでその時代を浮き彫りにする、
という手法はよくありますが、
この作品はそういう点でも非常にうまく出来ていると思います。

スターリン、粛清、ラーゲリ、ソ連共産党、KGBなど
教科書に載ってる単語くらいでしか知らなかったソ連の歴史。

その歴史の陰でいったいどれほど多くの罪のない民衆が、
愛する家族と引き離され、収容所に送られ、
極限の生活の中で人生を狂わされ死んでいったか。

オリガの謎を追うことで浮かび上がってくる過去は、
彼ら彼女らの悲惨な歴史でした。

それが国家ぐるみで行われていたという事実に、
なんとも言いようのない恐ろしさと怒りを感じます。

だからこそ、その裏をかいたオリガの生き方が痛快で、
魅力を感じてしまうのでしょう。


タイトルにもなっている「反語法」。
それは、彼女が人(生徒)を大袈裟に褒めたとき、実は罵倒の裏返し、
という彼女独特の言い回しからきています。


読み応えたっぷりで、をつけるとしたら
ですね~。



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (jester)
2007-06-26 19:06:21
読んだことあるかしら?とおもってましたが、どうも読んでないみたい。
記憶がありません(爆)
今度読んでみます!
ご紹介、ありがとうございます~
おもしろかったですよ (くっちゃ寝)
2007-06-27 09:21:50
最初は軽~い感じで読んでいたのですが、謎が明らかになるにつれ、目が離せなくなります。
それに加えて強制収容所の悲惨な描写が、これまで観た戦争映画の収容所シーンとだぶり、生々しく感じられて読まずにおられませんでした。

読み応えたっぷり。
ぜひ、読んでみてくださいね♪

Unknown (jester)
2007-11-19 20:52:28
お恥ずかしいのですが、やっぱり読んだことあったみたい。(爆)
相当もうろくしてきてますわ・・・

でも2度楽しめてとってもお得。(なのか???)
よくあることですよ~ (くっちゃ寝)
2007-11-20 09:05:06
jesterさんだけじゃないですよ。
私も須賀敦子さんの『ヴェニスの宿』、途中で気がつきました~
はじめのあたり、全然記憶になかったの(爆)

あと、確かに読んだはずなのに、内容を全く忘れてて2度目に読んだ方がおもしろかった、というのはよくあることです(苦笑)

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