ほぼ是好日。

日々是好日、とまではいかないけれど、
今日もぼちぼちいきまひょか。
何かいいことあるかなあ。

源氏物語 <帚木2>

2008-08-28 | 源氏物語覚書
雨夜の品定めのあと、雨もやみ、源氏の君は久しぶりに左大臣邸
(つまり葵の上のところ)へ行かれるのですが、
その夜は方角が悪いとのことで、
どこかへ方違え(かたたがえ)しなければいけません。
*方違えとは、陰陽道に基づく風習のひとつです。
 外出のとき天一神のいるという方角をさけ、いったん違う方角へ出かけて一夜を過ごし
 わざわざ違う方角から目的地に向かったそうです。めんどくさ~

それで紀伊の守の邸へ行きます。
そこにいたのが紀伊の守の父、伊予の介の若い後妻。
その前の話の中で、中流の女性がいいなどという話を
聞いていた源氏の君は興味津々。
とうとう、その若い後妻の寝ている場所を探しあてます。
驚いたのはその後妻。
しかし、相手が源氏の君とわかり、抗うこともできませんでした。

しかし、これってひどい話ですよね
当時はこんなこと、当たり前だったのでしょうか。
方違えで泊めてもらったお宅の、若い奥さんを寝取っちゃうなんて!

かわいそうなのはこの女性。
年の離れた伊予の介の妻であることに不満は持っていたかもしれません。
でも、半ばあきらめながらも妻として平穏な日々を送っていたであろうに、
突然、若く美しい源氏の君を知ってしまったわけです。
う~ん、残酷・・・。

身分も違い、年上で、器量もそれほどよくない自分なのに、
源氏の君とこんなことになってしまって、と思い乱れます。
せめてまだ結婚する前であったならと悔やみ、
こんなことが人に知れたらどうしようと心配します。
そして、源氏の君が恋しいがゆえに、
二度とこんなことにはなるまい、と決心し、
この後も頑なに源氏の君を拒み続けるのですね。
あっぱれです(笑)

この女性、身分は低いとはいえ、
かなりプライドの高い人だったのでしょうか。
何もかも捨てて恋(源氏の君)に溺れる、
ということができなっかたようです。

よからぬ噂がたったり、そのせいで夫から見捨てられたり、
そういう惨めな自分になることが許せなかったのでしょう。
でも、そのくせ心身ともに若い源氏の君が忘れられず悶々としています。
このあたり、とてもリアルに女性の心情が描かれていて、
紫式部の鋭い洞察力に驚きます。
彼女にもこういう経験があったのかなあ、と思ってしまうほど。

そんな女性の気持ちも知らず、
ここまで拒絶された経験のない源氏の君は、
かえって忘れられなくなってしまうんですよね。

おまけに、この女性の弟を小君と呼んで側におき面倒をみます。
もちろん下心あってのこと(笑)
この小君に手引きしてもらい、再び伊予の介の邸へ忍んで行きますが、
やはり拒まれ、あきらめざるをえませんでした。

ちょっとショックだったのは、拒まれたあと、
源氏の君はその小君といっしょに寝ちゃうんですよ。
えっ、これって・・・17歳の源氏の君に、そういう趣味があったの!?
それとも、武家社会においての殿様と小姓のように、
貴族社会でもこういうことは一般的だったのでしょうか?
今回読んで初めて気づき、とても驚いてしまいました。


巻名にもなっている帚木(ははきぎ)というのは、
源氏の君が詠んだ和歌に出てきます。
一体何の木なのだろう、と広辞苑で調べてみると、
<信濃の薗原にあって、遠くから見るとあるように見え、
 近く寄ってみると形が見えないという伝説の木>
ということでした。

せっかくそばに寄っても見えない(会えない)女性を
この帚木にかけた、うまいタイトルのつけかたです。


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源氏物語 <帚木1>

2008-08-26 | 源氏物語覚書

        『源氏物語 巻一』
         瀬戸内 寂聴 訳


『源氏物語』のレビューを書こうと思い立ってから、
早速壁にぶち当たっています(泣)

読みながらメモはとっていたものの、いざ書き始めると・・・、
もう一度読み直さないと、とてもじゃないけど書けない。
とにかく長~い物語なので、細かいところはわすれちゃうわけですよ。
(細かいところだけじゃないけど・・・爆)

で、もう一度読み直すのなら、と、図書館で
瀬戸内寂聴さんの訳を借りてきました。
以前手にとったことはあったのですが、
今回読んでみると、なんと読みやすい!
訳というより、現代作家が書いた平安時代の物語、という感じです。
それでいて、文章に流れるような美しさがありました。
やはりブームになっただけのことはありますね。



    *    *    *



「雨夜の品定め」で有名なこの巻では、源氏は17歳になっています。

五月雨の降る夜、源氏の君は宮中で
物忌み(ものいみ)のため宿直(とのい)しています。
*物忌み・・・凶事を避けるため、家にこもって慎むこと
*宿直・・・宮中などで、宿泊して勤務すること

そこへやって来たのが友人の頭の中将(とうのちゅうじょう)。
この頭の中将というのは、左大臣の嫡男で(つまり葵の上の兄弟)、
源氏とは友人であり、よきライバル。
退屈しのぎに、源氏の恋文をあれこれ見たがります。
それから話が恋愛談義になってきたところへ、
左馬の頭(さまのかみ)と藤式部丞もやってきます。
いずれも好色者で、男同士の遠慮のない女性論が弾むわけですね。

青二才たちが、あんな女性がいいとか、
こんな女性には困ったとか、
まあ、いろいろ好き勝手言ってくれてます(笑)
女性である紫式部が、こういうことを書けるというのも驚きです。

そして、それらの話の中に、ちゃんと次の伏線がはってあるわけですね。
頭の中将の、姿をくらました女性の話は「夕顔」へ、
中流の女性がいいという話は「空蝉」へ。
紫式部という人は、けっして行き当たりばったりで
この小説を書いていたのではなく、
きちんと構想を練って書いていたということがよくわかります。
まだ小説の手本もそれほどなかったであろう時代に、
すごいことだなあ、と思います。

彼らがいろいろ話している中、当の源氏は話を聞きながら
物思いにふけったりしています。
実はここが怪しいのですね。

「桐壺」の最後に、義母である藤壺への憧れが書いてありましたが、
なんと源氏の君は帝の妃であるこの藤壺のところへ忍んで行き、
一夜を過ごしてしまうのです。
ところが『源氏物語』の作品の中には、その部分の描写がありません。
「若紫」の巻で二度目の逢瀬が描かれているだけです。

だから読者は想像するのみなのですが、この巻の冒頭に、
源氏の君は苦しい恋から抜け出せない困った癖があり、
怪しからぬ振舞いに及ぶことがある、という描写があったり、
頭の中将が恋文をあさっているところで、
高貴な方からの文は深くしまってあるに違いない、という描写で、
このときすでに藤壺と関係があったあとなんだなあ、
と思うわけです。

また一説には、「かがやく日の宮」という巻が
この「帚木」(ははきぎ)の前にあって、
そこに描かれていたのではないか、
その巻は(意図的に?)失われたのではないか、
とも言われているそうです。

確かに、藤壺との関係もですが、
重要人物である六条御息所との出会いは書いてないし、
朝顔の姫君の名前なども突然出てくるし、
そういう巻があったと思われるのもうなづけます。

でもないからこそ、かえって読者の想像力(妄想?)を
かきたてているのかもしれませんね。


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RDG レッドデータガール はじめてのお使い

2008-08-22 | 読むこと。

 『RDG レッドデータガール
     はじめてのお使い』
     荻原 規子


待ちに待った、荻原規子さんの新刊です。
酒井駒子さんの描かれた表紙を見て、
えっ、巫女さん?しかも、現代の女の子?
荻原規子さんというと、古代ファンタジーが多かったし、
私もそういう分野が好みなので、ちょっと意外でした。

しかし、しかし。
現代といっても、なんともアナログな女の子が主人公なのです。
いえ、けっして精密機器が嫌いなのではなく、
精密機器、つまりパソコンから携帯電話から、
はては駅の自動改札にまで嫌われてる女の子!?
彼女自身気づいていない力のせいで、壊れてしまうのです。
一体、彼女の正体は?

舞台は熊野古道。
山伏の修験場として世界遺産に認定された
玉倉神社(玉置神社がモデル?)に生まれ育った少女、
泉水子(いずみこ)が主人公です。

高校生になったら神社を出て、普通の女の子の暮らしがしたい、
と望んでいた彼女ですが、とうてい「普通の女の子」にはなれない、
彼女の家系の秘密があったのです。

ごくごく平凡な女の子が、実は高貴な血筋の生まれで、
ひとくせもふたくせもありそうな両親に、
これまた魅力的な父の友人とその息子で脇をかためる・・・。
長女曰く、
『西の善き魔女』と同じパターンやん!

それ以上に勾玉シリーズにも似てますが、
彼女が描く「古代日本的なもの」に私なんかは魅かれるんですよね。
今回は舞台も憧れの熊野古道だし、
「山伏」だの「巫女」だの、そういう設定にも興味津々。

長~い物語の、まだ序章という感じですが、
この先どういう展開になっていくのか楽しみです。




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岩ガキ丼

2008-08-20 | 食べること。
今年の夏は岩ガキをよくいただきました。

普通のカキより殻をむくのが大変で、
主人がなんとかこじ開けてくれ、焼いていただきました。
(こういうことは主人まかせ




大きいものは手のひらほどありそうです。
貝好きの長女がいなくて残念!


先日いただいたときは、焼くのも時間がかかるし、
たまには違う食べ方を、ということで岩ガキ丼にしました。
身がぷりぷりしてて、もったいないなあ、と思いつつ・・・。
(カキで一度痛い思いをしているので、
 いまだに生で食べる勇気がないのです)
 
 


出来上がり~
えっ、どれが岩ガキかわかりません?



これです↑

冬のカキ丼と夏の岩ガキ丼は、わが町の名物(らしい)。

この夏は、何度か最高気温日本一になった当地。
こんなに暑いところだっけ~と、泣きたいくらいでしたが、
ようやく朝晩はひんやりしてきて、虫の音も聞こえます。

カキのパワーで、残暑を乗り切りたいものです。


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源氏物語 <桐壺>

2008-08-16 | 源氏物語覚書
いづれの御時にか女御更衣あまたさぶらひ給ひけるなかに、
いとやむごとなき際にはあらぬがすぐれて時めき給ふありけり。

この文章、高校の古典の時間に、舌をかみそうになりながら
声に出して暗記された方もあるのではないでしょうか。
これが膨大な長編小説『源氏物語』の冒頭です。
ここから物語が始まるわけですね。

「いずれの御時にか」(=いつの御代のことであったか)
でわかるように、この物語は全くのフィクションです。
だから、登場するのは架空の人物。
「源氏物語」というタイトルだからといって、
「平家」に対する「源氏」の物語ではありません(笑)
まあ、こんなカン違いをするのはウチの主人ぐらいでしょうが

ある帝の時代に、高貴な生まれではないけれど、
非常に帝の寵愛を受けた女性がいました。
その女性の御所での住まいが桐壺であったことから、
この女性は桐壺の更衣と呼ばれています。

ここで補足しておくと、女御というのは天皇の後宮に使えた女官の
身分のひとつで、更衣というのはその下になります。
だから、桐壺の更衣は身分としては低かったわけですね。
なのに帝から目に余るほどの寵愛を受け、
他の女房・更衣から嫉妬され、意地悪されます。
その挙句、心身ともに疲れ果てたのか、
美しい男君を生んで亡くなってしまいます。
いつの世も、女はこわい・・・。

この女性の産んだ男君というのが、主人公となる光源氏の君。
とにかく生まれたときから美しい。
愛する桐壺を失くした帝も、そばにおいてかわいがるわけです。

この桐壺の更衣という女性、父親が亡くなっているため、
しっかりした後見人というものがいませんでした。
当時の女性にとって、この後ろ盾がいない、ということは、
非常に心細いことなのですね。
どれほど帝から愛されようが、結局、右大臣の娘である
弘徽殿の女御(こきでんのにょうご)の勢力にはかないません。
東宮(皇太子のことです)には、この弘徽殿の女御の御子がたちます。

光源氏は美しいだけでなく、漢学から音楽にいたるまで
素晴らしい才能の持ち主でした。
帝はあるとき、高麗の人相見に源氏の君を見せたところ、
帝王の位につく人相だけれど、そうなると国が乱れ、民が憂える。
天下の政治を補佐するという相でもない。
と言うのです。

この占いは、物語の展開のひとつの布石となります。
『源氏物語』というのは、光源氏の恋愛遍歴を書いた物語のように思われますが
(もちろん、それも重要なテーマですが)
いわば光源氏のサクセスストーリーでもあるわけですね。
この、始まりの部分で、彼の今後の人生を予言しているわけです。

そして、帝はあれこれ悩んだ挙句、源氏の君を皇族ではなく
臣下にして「源」の姓を与えることにします。


ここまで長々と説明が多くなりましたが、
この巻で重要な部分がもうひとつあります。
それは、藤壺の登場です。

桐壺を失い、悲嘆にくれていた帝に、桐壺によく似た
藤壺の女御が入内するのです。
自分の母親によく似た美しい女性。
まだ幼い源氏の君が、この女性を慕うようになるのも頷けます。
そして、ここから源氏の君の色恋沙汰が始まるんですねー(笑)

12歳で元服し、左大臣の娘、葵の上と結婚しますが、
葵の上は源氏の君より年上。
そのせいか、どうも打ち解けません。
一方源氏の君は、藤壺の女御を恋い慕いつづけます。
この物語の展開で、藤壺という女性はキーパーソンです。

とまあ、この桐壺の巻は、今後の展開に向けて、
あれこれ伏線がはってあるとでも言ったらいいでしょうか。
読んでいて、それほどおもしろい巻ではありませんが、
重要な人物が出てくるので登場人物の名前は要チェックです。





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