ほぼ是好日。

日々是好日、とまではいかないけれど、
今日もぼちぼちいきまひょか。
何かいいことあるかなあ。

久しぶりに本のこと 〈2〉

2019-07-23 | 読むこと。
こちらは久しぶりに読んだ三浦しをん氏の作品。







現代版『細雪』ということで、古びた洋館に住む女四人(母・鶴代と娘の佐知、ひょんなことから
同居することになった佐知の友人雪代とその後輩多恵美)の穏やかな共同生活を描く・・・
なんてことはなく、水漏れ騒動に開かずの間の謎、元カレのストーカー事件に泥棒騒ぎなど、
同じ敷地に住む謎の老人山田さんを巻き込み、四人のまわりで次々と珍事が起こります。

途中でこの話を語っているのが、善福寺川のほとりに住みこの家の歴史を見てきたカラスであると
わかったときには思わずのけぞってしまいました(笑)
そのあたりから、ストーリー展開が意外な方向に進んでいきます。

確かに唐突感は否めませんが、37歳で独身、結婚のあてもなく刺繍を楽しみに母と暮らす佐知の、
これまで父親を知らずに生きてきたことへの漠然とした淋しさや欠落感、ずっと抱き続けた
もやもやした思いなどが、それら珍事のあとには自分を肯定できるまでに変わっていくところが
よかったなあと思います。

私たち生者は気づいていないけれど、いつも死者に、それも自分のことを大切に思ってくれてる
死者に見守られている。
そう思うことで、生きていく勇気ももらえるし、少し孤独感からも解放されるんじゃないかな。
でも、それだけではなくて、佐知には(普段人使いはあらいけど)自分のことを愛してくれている
母親と、気心の知れた友人がそばにいる。
この関係がいつまで続くかわからないけれど、この四人の共同生活がとても羨ましく思えました。







さてさて、還暦も過ぎると、そろそろ自分のゴール地点を意識するようになり、
悔いのない老後を迎えるにはどんな風に暮らしていけばいいのだろう、と気になり始めます。
というか、老後の不安ばかりが募る今、自分らしく、人生を楽しんで暮らしている
そんなお手本になるような素敵なお年寄りないないものかしら、と思っていたのところ
見つけたのがこのご夫婦の本でした。







これは、つばたしゅういち・英子ご夫妻を長期間取材して書かれた本です。
このご夫婦の暮らしを描いたドキュメンタリー映画「人生フルーツ」が話題になりましたが、
残念ながら見る機会がなく、DVDも出てなくて、とりあえずお二人の本を何冊か読みました。

ご主人のしゅういちさんは建築家で、建築事務所を経て日本住宅公団に入社し
多くの団地の計画や設計を手がけます。
愛知県の高蔵寺ニュータウンを任されたとき、道路以外は全部山のままで
山なりに家を建てるという計画を立てましたが、高度経済成長の時代、結局は山を
平らにして住宅地を造成する、ということになってしまいました。
その後大学教授などを務め、ヨーロッパでキッチンガーデンに出会ってから
自分が手がけた高蔵寺ニュータウン内の300坪の土地に家と畑をつくり、
“自分の食べる野菜を、自分の庭でつくる”という取り組みを始めます。

その畑仕事の担い手となり、キッチンガーデナーとして大地に根ざした丁寧な暮らしを
実践されたのが奥様の英子さんです。
しゅういちさんは2015年に、英子さんは2018年にどちらも90歳で亡くなられましたが、
それまでご夫婦で土地を耕し野菜をつくり、自分たちの納得のいく手作りの暮らしを
されていました。

最近、定年後に田舎で暮らす人生の楽園的な生活がよく紹介されます。
(私もそういう暮らしをときどき羨ましくおもうこともありますが)
お二人がそれと一線を画しているのは、その生活が自分たちの生き方の延長であること、
つまりは自分たちの暮らしに意志と覚悟を持って実践されていたからなのでしょう。
本の写真で拝見する限り、穏やかな表情のおじいちゃん、おばあちゃんですが、
そのきりっとした潔さと行動力は誰にでも真似できることではないと思います。

老後の生活といっても、結局はこれまでの生き方の積み重ね。
誰かを真似しようとじたばたしても、そう簡単にできることではないのですね。
今の生活を楽しみ、充実させなくては。


我が家でも主人が趣味で畑を始めてからというもの、野菜つくりにのめりこんでおりますが、
この時期待ったなしに収穫する夏野菜に、調理担当の私としては頭を抱える日々。
手作りの丁寧な暮らしに憧れはするものの、それは主婦が他の時間(読書だとかお昼寝とか)を
犠牲にした上で成り立つものなのですよ!

あ、久しぶりにブログ書いてたらもうこんな時間
夕方になると、主人がまたどっさり野菜を持って帰ってくるんだろうなあ・・・
それまでに野菜庫のキュウリとナスとトマト、なんとかしなくちゃね







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久しぶりに本のこと 〈1〉

2019-07-18 | 読むこと。
先日、東京オリンピック代表の内定第一号に、飛び込みの寺内選手と坂井選手が決まりました。
この記事に心がざわついたのは私だけではないと思います。
あ、ちなみに我が家の長女もそのひとりですが(笑)
だって、飛び込みで坂井といえば・・・そう『DIVE!!』の知季を思い浮かべるじゃないですか!






まだ娘たちが小学生のころ、母娘三人でこの作品にはまり、
図書館で借りては奪い合って読んだものです。
当時私は森絵都さんの大ファンで、児童書はほとんど読んでいたと思いますが、
その中でも『dive!!』は図抜けておもしく、最後は感動して涙で文字が読めなかったほど/face_ase2/}

オリンピックで飛び込みがあったときは、実際の飛び込みを見たくて
夜中に子どもたちを起こしてみんなで見たような・・・
寺内選手の名前を知ったのもそのころだったと思います。
その寺内選手が、シンクロ板飛び込みで坂井選手と東京五輪出場内定とは!
う~ん、DIVEファンとしては感慨深いものがありますね・・・


もう一度読み返したくなって角川の文庫本で買おうかと思っていたら、長女から
買うなら講談社版!と言われてしまいました。
1巻は持っているので、講談社版だと2~4巻か・・・
割高になるのでちょっと思案中。







最近いろいろとおもしろい本を読んだのですが、なかなか記事にできなくて
とりあえずここに覚書を。











上橋菜穂子氏の『鹿の王』のその後の物語『水底の橋』。


・・・といっても主人公はヴァンではなく医術師ホッサルです。
あの~、個人的なことを言いますと、数ある上橋菜穂子さんの作品の登場人物(男性)の中で、
このホッサルは私のお気に入りのひとりなんですよね~

ファンタジーなので架空の国の物語ではありますが、いつものことながら上橋氏の世界観というのは
国や民族の争いから人々の暮らしまで実に細かいところまで考えて設定されているので、
実在する(あるいはした)どこかの国のように思えてしまいます。

今回は医術師ホッサルが次期皇帝争いに巻き込まれていくのですが、権力者たちの様々な思惑が
うごめく中、新旧対立しあう二つの医術が軸になり、医療とは何かということを考えさせられます。
それと共に、身分違いのホッサルとミラルの恋の行方も描かれ、もうどうにもならないと
思えたいろんなことが、最後には一挙に解決にむかうという展開には見事!というほかありません。

守り人といい、獣の奏者といい、鹿の王といい、上橋氏の作品を読んでる時間は
私にとって至福の時
これからも、ず~っと続編や番外編、あるいは新しい物語を書き続けていただきたいものです。





こちらは、新聞の書評を読んで気になってた本『雪の階』。







独特の美文調で始まり、時代は昭和初期で華族の娘や青年将校が登場すると、ふと
『春の雪』的なストーリーを思い浮かべたりしたのですが、こちらは華族の娘 惟佐子が
友人の心中事件の謎をといていくというミステリーであり、戦前という時代を描いた
歴史小説でもあり、惟佐子と共に謎を追う当時珍しい女性カメラマン千代子の
恋愛小説でもあり・・・いろいろな面で楽しめる小説でした(笑)

2.26事件につながる時代背景も、それぞれの持つ思想もシビアなのですが、
一歩引いて見ると、自分の思想に一生懸命な登場人物たち(男性)が
ちょっと滑稽に思えてしまうから不思議です。
政界とのつながりを画策する惟佐子の父親の笹宮伯爵も、純粋日本人を天皇にという
荒唐無稽な企てを持つ兄惟秀も、惟佐子に振り回される男性たちも、どこか頭でっかちな感じ。
そういう時代だったからでしょうか。

それに比べて女性たちの健康でたくましいこと!
冷静で美しく、そのくせ甘いものが大好きという謎の多い惟佐子も、
幼いころの惟佐子を知る、ごく普通の健康的な女性カメラマンの千代子も、
そんな男性陣と比べてとても魅力的なのです。

けっこう分厚い本ですが(故に登場人物も多い)、いろんなことがてんこ盛りで
謎解きもおもしろく読めました。
もう一度読み直したかったけれど、やっと読み終えたのが返却日前日!
もう若い時のように一気読みはできませんねえ・・・



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