はじめまして。
僕はくっちゃ寝家のパジェロです。
ご挨拶して早々だけど、実はもうさよならを言わなければならないんだ。
この18年間、海や山へ、あるいは神戸・京都と一緒に走り回ってきた
この家族と、このたびお別れすることになったんだ。
僕はこの家族にとって二代目のパジェロ。
初代黄色いパジェロは、くっちゃ寝家の絵本にもなった
伝説のパジェロなんだって。
僕がこの家にやってきたとき、この家にはご主人と奥さんと、
まだ小さな女の子がふたりいたんだ。
ひとりは、まだ赤ちゃんだったなあ。
僕もぴかぴかで、かっこよかったんだよ。
そんな僕に、奥さんはシートクッションを手づくりしてくれたなあ。
休日になると、僕はいつも4人を乗せて出かけたものさ。
僕は背が高いから、子どもたちは乗るのが大変みたいだったけど。
夏にはキャンプ用品を山のように積んで、しょっちゅう海や
キャンプへ出かけたよ。
一度、真夏にエアコンが壊れて、窓を全開にして
丹後半島のキャンプ場まで行ったっけ。
あれは暑かっただろうなあ。
阪神淡路大震災のあと、まだあちこちに青いビニールシートで
覆われた家がたくさんある神戸にも行ったし、
台風23号の爪あとが残る由良川沿いを、どろんこになって
走ったこともある。
そう、僕にとってもこの18年間はいろんなことがあったと思うよ。
何年か前には、妹ができたんだ。
僕と同じ黒のパジェロミニ。
家族がいるって、ウレシイもんだね。へへへ。
でも、くっちゃ寝家のほうは、家族4人で出かけることが
だんだん少なくなってきた。
子どもたちも大きくなってきたし、ご主人は走りに行くことが多くなって、
休日はそれぞれ別行動だったみたい。
ちょっと淋しかったね。
子どもたちを乗せることがなくなって。
そして・・・、僕もだんだん昔のようには走れなくなってきた。
最近は何度も故障して、そのたびにご主人は修理に出してくれた。
車検のたびに奥さんは「新しいのに替えたら?」って言ってたけど、
ご主人は頑として聞き入れなかった。
新しい車が次々と出てたのにさ。
でも、今回はエンジンがいかれちゃってダメみたい。
さすがにご主人もあきらめたようだ。
きのう、ふたりでお別れを言いに来てくれたんだ。
もうみんなを乗せて走れないのは残念だけど、これも寿命ってやつかな。
でも、僕は幸せ者だったと思うよ。
みんなから大切にされて。
ちっちゃな女の子たちが大きくなっていくのも見れたしさ。
まだ赤ちゃんだった女の子がこの春家を出て行って、
僕の役目も終わったのかもしれないなあ。
みんな、元気でね。
そして、新しい車になっても、ときどき思い出してくれるとうれしいな。
僕も見守っているよ。
これからも、ずーっと。
ありがとう、そして、さようなら。
・・・・・ 私たちの黒いパジェロくんへ