ほぼ是好日。

日々是好日、とまではいかないけれど、
今日もぼちぼちいきまひょか。
何かいいことあるかなあ。

弔い月

2007-08-25 | 読むこと。
お盆休みに、久しぶりにじっくり新聞を読んでいたら、
こんなことが書いてありました。

炎天の日が続く8月は、容赦なく照りつける強い日差しの下で
死者とともに過ごす月

お盆と、広島・長崎の原爆投下と、終戦記念日が重なる8月。
確かに、今は亡き人々に思いを馳せる月なのかもしれません。


去年の夏、友達からぜひ読んで、と薦められた漫画があります。
それは『夕凪の街 桜の国』。



       
       『夕凪の街 桜の国』
          こうの史代



最近自分で漫画を買うことがない私は、
この漫画がなかなか見つけられなくて、
やっと手にしたのが、春も終わろうかという頃でした。

しかも、読んだあともなかなかレビューが書けなくて・・・。



いつからでしょう。
戦争物を避け、戦争映画ですら観なくなったのは。

私がまだ若かったころ、母は戦争や、
子どもが悲惨な状況に置かれているニュースとか、
ドキュメンタリーを見るのをいやがっていました。

私がどうして見ないのか問うと、
これが自分の家族やったらと思うと、見られへんわ
と答えたのです。

それを聞いて、悲惨な事実に目をそむけるような
母の態度がイヤでした。

私はまだ若かったのです。
失うものもなくて、
悲惨な過去の出来事を知ろうとはするものの、
その出来事を自分の身に置き換えようとはしませんでした。

戦争は私にとって、過去の歴史的事実のひとつでしかなかったのです。

けれど、自分にも家族ができ、
ささやかだけれど幸せな日々を送れるようになったとき、
この幸せが、平凡な毎日が、ずっと続きますように、
と祈らずにはいられなくなりました。

そして大きな事件や事故のニュースを聞くたび、

もしも理不尽な出来事によって家族を失うしまうことになったら・・。
平凡だけど幸せな日々が突然断ち切られてしまったら・・・。

と、想像するだけで恐ろしくなってしまうのです。

そして母と同じように、戦争の悲惨な映像を見られなくなりました。



今年、原爆投下に関して政治家の心ない発言が取りざたにされました。
しかし毎日新聞の英文サイトでは、
この発言を支持する海外の人たちの書き込みが多かったそうです。
(毎日新聞8/16 「記者の目」より)

戦争の犠牲者は日本人だけではない。
日本人は(戦時中に)殺害された多くのアジア人を忘れるべきでない。

また、米有力紙でも、

日本には自らを(唯一の被爆国として)第二次世界大戦の
特別な犠牲者とする見方が深く根付いている。

日本国内と海外との、この温度差はどうしてなのでしょう。

私たち日本人が戦時中アジアでどんなことをしてきたのか、
きちんと教えられていないように、
原爆の悲惨さが海外の人たちに知らされていないのでしょう。

同じ日本人である私たちでさえ、
果たしてどれほどその悲惨さを知っていることか・・・。


原爆投下から10年後の広島の人々の暮らしなんて、
この漫画を読むまでほとんど知りませんでした。

被爆しながら命は助かったものの、
その人たちがその後どんな思いで、
どんな苦悩を抱えて生活していたのかなんて、
考えたこともありませんでした。

まわりからは、被爆したということで差別され、
人としての普通の幸せさえあきらめなければならなくて、
それどころか、いつ自分もまた病魔に侵されるのか、
怯えながら過ごす日々。

そして消したくても消すことのできない、「その時」の記憶。
自分だけ助かったという罪悪感・・・。

読んでいて、正直つらくなりました。
でも、その後を生きる主人公たちの、
たくましさや明るさに救われもしました。

そして、確かに繋がっている命というものを感じました。

この漫画に描かれているのは、私たちと同じ、
普通に日常を過ごしていた人々です。

それなのに、被爆したというだけで、その後の人生を
否応なく狂わされてしまった人たちです。

そしてそれは、けっして過去の出来事なんかではなく、
今現在も苦しみ続けている人たちなのです。


この漫画を読んだあと、日本人として忘れてはいけない
重荷を背負わされたような気がしました。

自分がふとした幸せを感じるとき、
そんなささやかな幸せすら奪い取られて死んでいった人たちの、
哀しみを思わずにはいられないのです。


この漫画を、若い人にこそ、ぜひ読んでほしいと思います。
そして、お国のために死んでいった人々を美化するような作品ばかりでなく、
こういう自分と同じごく普通の人々を描いた作品こそ、
もっと読まれるべきだと思いました。

この漫画を薦めてくれた友達に感謝します

コメント (6)
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