一通りの食事が終了すると甘いものが欲しくなる。食後のデザートも楽しみの一つ。一般的にはチョコレート系のデザートをオーダーすることが多く、ときにはそれに、アルコール度の高いポルトワインやコニャック、ブランディーを併せて追加することもある。前菜・主菜・チーズなどとワインの組み合わせによる食事の楽しみ方と、食後のデザートとポルトやコニャック・ブランディーなどとの楽しみ方とはちょっと違いがある。食事の流れからすれば前者が主で後者が従であるが、両者が影響しあってそれぞれに個性のある味わいを醸し出しているように思える。甘味の強いバニラアイスとポルト、カカオを多く含んだ苦味のあるチョコレートとコニャックの取り合わせはお気に入りの一つ。しかし、今回は趣向を変えて注文したのは次のデザート3種。
前菜があり、主菜も終わって、食べる量としてはすでに十分であるが、ワインを飲んでいるとどうしても欲しくなるものがある。チーズは、ワインとは切っても切り離せない仲、両者の間にはなんともいえない相性がある。ハードタイプのチーズをはじめ、ブルーチーズ、ウオシュタイプのものまで何種類かのチーズを用意してもらう。チーズを食べながらのワインは、前菜・主菜とともに飲むワインの味、趣とは違うものがある。食(前菜・主菜)が主のときは、飲(ワイン)は従である。しかし、チーズが入るとワインは主になり、そのワインのもつよさが一層引き立ってくる。
3品目の主菜はビーフ。国内産山形牛。シェフが特別に取り寄せているという。 当然のことながら、外国産に比べ食感も味もいい。外国産の大雑把な肉に対して、国内産のそれなりの肉は繊細でまろやか。ピジョン、ポークに続いて仕上げはビーフ。量は少ないとはいえ、十分なボリューム。そして、ワインとの相性も文句なし。ヘビーな料理にヘビーなワイン。最後の一品としての重厚さがしっかりと存在している。
次の主菜はポーク、最近好評を博しているイベリコ豚。何度か食べているが今日のイベリコ豚は脂ものっていて柔らかく甘味もある。ワインのほうがやや強い感じはあるもののまずまずである。ソースも肉によく合っているが、素材そのものだけでも十分に味わい尽くせる。手前にあるのはチャツネー。
まずはピジョン(鳩)の肉。素材そのままの食感、味はよく分からないが、まずまずの味。シェフの調理技術に負うところが大きい、そんな気がした。ソースの影響もあるかもしれないが、結構こってりとしたボリュウム感のあるものだった。
主菜はピジョン、ポーク、ビーフの3種類。調理方法は違っていてもソースはいずれも重口とか。特にポークとビーフは新鮮で脂ののりもよいという。そこで赤ワインは濃くのあるヘビーに。ボンクールのシェフの奥さんでもあるソムリエに薦められたのがCLOS DU MAROUIS Saint-Julien ヴィンテージ2000(写真)とMargaux。いずれもセカンドワインであるが、そのよさは折り紙付き。デキャンタするかどうか迷ったがそのままで。テイスティングの香り、味わいもよし。3種類の肉、ソースとのマリアージュがどうなるのか楽しみ。
フランス産白アスパラの上に苺とトマト、そしてパイを添えての組み合わせ。淡白でありながらアスパラの持つ独特の味に苺の甘味と酸味、それにトマトの軽い酸味、それらの味のバランスがなんともいえない。そして、パイのサクサクとした食感とバター風味がさらにその味を引き立てる。ワインは控えめなものがよさそう。
春の旬の野菜の旨味を凝縮した一品。
春の旬の野菜の旨味を凝縮した一品。
ひらスズキのカルパッチョ。スズキはフランス料理では定番の食材の一つ。ひらスズキはまったく違うものというシェフの説明。脂ものって透き通った肉はとろりとした食感とともに歯ごたえもある。水揚げされたばかりの新鮮なとろ金目のお造りとよく似ている。白ワインSancerreとのマリアージュも文句なし。
シェフが最初に出してきた前菜はアナゴの稚魚に牡蠣。アナゴは寒天ゼリーのような食感。稚魚の形を崩すことなくアナゴの風味を軽く感じさせてくれる一品。牡蠣はスライスしたセロリの上に野菜のつけ合わせに包まれ、3者の味が自然な形で調和したワンバイトポーションサイズの前菜。(アナゴの目が見えます)