koheiのおもちゃ修理記録

宇部おもちゃ病院 毎月第2土曜日 13:00~16:00
宇部新天町の西の端、市民活動センターで開院してます。

10/19 プリモメンテ87,88,89件目:ピース・コプエルA・プリモコボル②

2021-10-17 | プリモプエル
難航してすっかり長期入院になってしまってた、プリモピース・タイプAコプエル・プリモコボルの3体セットの記事②、残りのコプエルAとプリモコボルです。

この2人の子は「一度電池の液漏れをしてしまい、動かなくなってしまった」としか聞いてませんでしたが、実際にはそんな簡単な故障ではありませんでした…。

到着してとりあえず電池BOXフタを開けてみると、

蓋を閉めたら接触するようになってるマイナス電位の端子が、ハンダで繋げてあります。液漏れでサビサビになった上にモゲたのを、磨いてハンダで繋いだ様ですが、メッキの剥げた板はすぐ錆びてしまいますね…。いまいちです。

とりあえず通電させて動くかどうか確認するべく、BOX分解して直接通電してみましたが…ウンともスンとも言わず…。スピーカか?と思いチェックしましたが、スピーカはOK。基板を確認。まず表。

続いて裏。

この裏面ですが、32.768Hz水晶用のコンデンサ(C3・C4)を取り替えた形跡がある…。これは「時計用」の水晶なので、電源を入れたらすぐ・連続で発振するはずだが、オシロ繋いで測定したら、全く発振してない…。
コボルの方はどうだろう?と、コボルの方も調べてみると、ほぼ同じ状況。やはり電池BOXの蓋を閉めたら接触する端子は、モゲてはなかったけど磨いてあったものが再度サビて通電不良。で、分解して直接通電してもウンともスンとも言わず、32.768kHz水晶は発振せず…。
写真の基板はコプエルの方ですが、1MHz発振子のハンダ付けが、表だけで裏がハンダ付けされてなかったのが気になって、裏のハンダ付けをしてみたら、ラッキー!32.768kHz水晶が発振するようになって、全体がちゃんと動くようになりました。しかしコボルの方は、前回たまたまうまく行ったコンデンサの容量変更や取替では、触った直後はちょこっと動いてしゃべる事がある程度で、安定発振しない…。

これは…誰がどう修理して、果たしてその時に動くようになったのか?
依頼者さんに問い合わせると、

コボルと、コプエルは、前回修理した所が今はやっていないようです。
修理した内容を下記に記します。

症状:電池の液漏れを起こしてしまい、接触面を磨いたのですが、コボルは全く反応しません。
治療:
 コプエルと全く同じプリント基板で、現象も同じでした。
 従って、診断も同じです。
1.試験用の電源で、起動せず。
2.スピーカーは、動作OKです。
3.スピーカーアンプのトランジスター(S8050)は、試験機でOKでした。
4.左手のスイッチには、センス電圧が掛っていて、ICへは、スイッチを押した情報は入っています。
5.全電流は、「0A」です。
 以上の現象から、2個ある「IC」のいずれかが、破損していると判断しました。
 残念ながら、入手・交換は出来ません。
との事でした。

という回答が返ってきました。これは…あまりに不誠実じゃありませんか?
「電池の液漏れをしてしまい、動かなくなってしまった」とは話が全然違います。もはや、死んだ子を連れてきて「生き返らせて下さい」と言ってる様な物です。
メールでだいぶ文句を言いました。あと、「コボルは」という書き方もよく分からない。じゃあコプエルの方はどうだったの?

しかし、症状診断と治療内容のコピペを貰ったので、この書き方には見覚え有ります。「webおもちゃクリニック」として全国からおもちゃ修理を受け付け、推定20年で9000件ぐらいの数のおもちゃを修理してきた「長さん」という方の修理跡です。プリモピースの充電池に書いてあった「2017/11/22」の日付をもとにサイトの診療日誌を見たら、すぐ見つかりました。
このサイトの診療日誌は2020年4月で更新が切れており(リンクがちゃんと取れてないので2020年頃の記録には辿り着きづらいですが)、もう活動停止したのでしょうか。

ここのサイトは、自分が初心者の頃はよく参考にさせて貰って、こなしてきた修理件数としては今でも尊敬してますが、最近実はそれほど高度な事はしてない事に気が付きました…。
諦めない、ベテランドクターが「修理不能」と判断したとしても、誰にも直せないとは限らない。
現にコプエルちゃんの方は動いてるっぽい。コボルちゃんの方もふとした時に時々動く、まだ見込みはある!

とりあえずまず、コプエルちゃんの方、スイッチ類も不良なのでこれを直して、電源系統も直して長期動作確認を掛けておくことにする。まず左手。

左手スイッチは完全に不作動でしたが、いつもの様にそれ程汚れてるわけでもない。でも、アルコール付けた綿棒で拭くと、導通復活します。しっぽスイッチは反応はしましたが、若干抵抗値が上がってたので、しっぽもやっておきます。

これも同様、さほど汚れてませんが拭いておきます。
次に電源系統を復活。前にもやりましたが、この「蓋を閉めると接触する」端子はいまいちあてにならないので、ヒンジ部を通してビニール線で直結します。

これで全体の修理完了。発振がちゃんと継続して動き続けてくれるか、長期動作確認に入ります。

さて次、コボルちゃんも何とかがんばらなくては…。
前回32.768kHz水晶発振不良を修理した時は、コンデンサの片方を容量アップしたのですが、その時相談した先輩にまた相談しましたが、それ以外に手は無いでしょう、との事。代りに、外からのクロック注入の楽な方法として、LPモードのあるPICの内部発振回路を使う案を提案されました。
なるほど~、ゲートIC使うよりも部品点数が少なくて済みますね。でも、程よい8PINのPICの手持ちがないし、前も似たような提案があったのですが、もっと高機能なマイコンをこんな使い方するのはあまり気が進まないのよね…。

という事で、外部発振回路を作ることにしました。
32.768kHz水晶の安定発振は、「我孫子おもちゃ病院」の「水晶発振子の動作確認用発振回路の製作(その2)」で詳しく解説されてますが、なかなか難しいとの事。ボクが以前にテスト用で作った発振回路「回路1」と、我孫子おもちゃ病院お勧めの回路「回路2」を掲載しておきます。(手持ち部品の都合で、抵抗の値が若干違います。)

我孫子の記事によると、回路1の様な基本回路でも、帰還抵抗を10MΩ以上ぐらいにすると、32.768kHz水晶でも発振するという事ですが、10MΩは手持ちが無いので不便だよね、との事。確かに、手持ちの1608チップ抵抗セットも、1MΩまでしかありません。
「回路2」は帰還抵抗が1MΩでいいので作りやすいとの事ですが、この回路で1MΩは帰還として働くのかしら…?素人でアナログ回路の理解が出来ないのでw、試作して確認してみます。(後々テスト装置として役に立つし。)
アンバッファインバータ:74HCU04を半分使って、まず表。

ここまで小さく作る必要は無いのですがw、たまたまちょうどいい基板のきれっぱしがあったのと、チップ抵抗・コンデンサを使うと、結局この大きさで出来てしまうのよね。裏面:

(信号出口に、短絡保護用に念のために…1kΩを入れたかな。)これで電池繋いでテスト。

一発でバッチリ発振!オシロ画面は、

バッチリですね。

これで、74HCU04を使っても、ICソケットを使わなければ何とか基板上に実装はできそう。しかし、SOP8と思って間違って買ったSSOP8でアンバッファインバータ3回路入りの「TC7WU04」というICがある。なんとかこれを使って作るか~w。その前に、既設の発振回路を撤去して、テスト発振回路でクロック強制注入して、動くかどうか確認しとかないと……とウダウダ考えていましたが、もう一つやってみようと思ってた事を思い出しました。
「帰還抵抗の変更」です。

我孫子のお勧めは「10MΩ以上」なので、デバイス内部の帰還抵抗を外から今以上に大きくするのは不可能ですよね。でも、デバイスの2端子に並列に抵抗を入れれば、帰還抵抗の下げ調整ならできますね。やってみる価値あるかもしれません。
(実はこれは、発振テスト回路を作ってみる前にやってみようとしたのですが、繋ぐところを間違えてた事に後で気づきましたw。水晶の両端に繋いでしまいましたが、それだと制限抵抗:Rdの下になってしまいます。デバイスから出てる2端子に繋がないといけませんでした。)
で、改めて手持ちのリードタイプで持ってる一番大きな抵抗:5.1MΩを繋げてみると………発振しそうではありませんか~w。

チップは1MΩまでしか持ってないので、不格好になってしまいますが、これで冷めても動くかどうか確認…動きそうです!!!

よしっ!スイッチ類と電源系統の修理をしましょう!
始めてのプリモコボルですが、頭の左側面が手縫いの様です。

ここからほどきます。まず左手:

線が途中で継がれて補修されてました。いつも通りアルコール付けた綿棒で拭きます。続いてしっぽ。

これも同様です。「電池フタを閉めると接触する」端子は、前述の通りサビを削ってあてにならないので、

コプエルちゃんと同様にビニール線で直結しました(写真は繋ぐ前ですが)。これで動作確認…バッチリ動き続けてくれました!

コボルちゃんは日曜の夕方から今日:火曜の晩まで順調に動いてます。コプエルちゃんはもっと前から順調に動き続けてます。2人の通信もちゃんと動作しました。これは完治でしょう!
これで、明日の朝まで動作確認して、ウチの奥さんに発送頼みましょう!
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3 コメント

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Nice (大泉茂幸)
2021-10-24 20:23:56
32kHzのオシレータがどうなったのか、興味津々でした。

原因はCOB内部のRfの断線だったんですね。こんなことも想定できなきゃいけなかったと反省しています。

後学のために、このようなケースでの切り分け方法を考えてみました。

それは、発振回路がインバータとして機能しているかどうかをチェックすることです。

①インバータが正常で、Rfが繋がっていればOSCOはVccの半分程度になるハズです。但し、キッチリ半分ではなくかなりブレます。12F1822で確認したら Vdd=3V で OSCO=0.7V でした。

②OSCIも同じ電位になっているハズですが、OSCIにオシロプローブを繋ぐと、ノイズを拾ってOSCOがフルスイングしてしまうので、静的な電位を測ることはできませんでした。まぁ、OSCOが暴れると言うことはインバータとして動作していることの証しではあるのですが。

③ボリュームでVcc~GNDの電圧を作ってOSCIに印加します。ボリュームを回してVccの半分辺りでOSCOに反転出力が出てくればOKです。このときもキッチリ半分ではなく、先の例では0.7Vになります。これが確認できればインバータは正常です。

インバータが正常で、Rfが切れていると、以下の結果になると思います。
上記①では、OSCOはLかHに張り付くか、ノイズを拾って暴れています。これがRf断線の特徴になります。
上記②では、OSCIのピンに触れるとハムノイズを拾って、OSCOに矩形波が出ます。
上記③では、OSCOに反転出力が出ます。


長さんについては僕も同感です。おもちゃ病院と称していい加減な治療をされて、それが同じおもちゃ病院として十把一絡げで僕らもいい加減な治療をやっているおもちゃ病院と評価されると悲しいです。長さんのように件数を競うようにやっているドクターが居ますが、それは品質を担保した上でやって欲しいですよね。身の丈以上のことはやらないことです。


我孫子の32kHzクリスタル発振回路で「この回路で1MΩは帰還として働くのかしら…?」について、回路2の1MΩはフィードバック抵抗ではありません。発振回路のインバータの入力側の閾値電位はVccの半分ですが、上述したとおりキッチリ半分ではありません。前段のインバータを(オペアンプのように)ボルテージフォロワとして使って閾値電位を作って、それをオシレータの入力にバイアスとして与えています。同じパッケージ内のインバータであればゲートの閾値電位は同じであると見做してのことです。なので、オシレータのバイアスが環境変化に応じて自動調整されることは無く、推奨すべき方法ではありません。

リンク先の我孫子の記事を見ましたが、この1MΩはR2と表記してありました。Rfと書いたのは村上さんの誤解です。
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今回もお世話になりました (kohei)
2021-10-24 21:11:46
「原因はCOB内部のRfの断線」とも限らないかもしれません。通電してない状態でOSC1・2間の抵抗を測ると無限大でしたが、PICだと通電されてからCONFIGに合わせてRfが切り替えられるタイプが多いようですね。(今回は型番の調査はしてませんがCOBではないので、同様かも。ただ、1MHzのオシレータも付いてて本格的に動作中は1MHzの方も発振してるようなので、32kHzの方は固定かもしれませんね。)

回路確認の手順は…難しすぎますw。怒られそうですが、いきあたりばったり作戦の方が早そうですw。

今回テスト作成した発振回路はお勧めできませんかw。とりあえず一発で発振できたので、ま、いいかなと思ってますw。
1MΩを「Rf」と書いたのは、我孫子の記事に「(この回路だと)フィードバック抵抗が1MΩでも発振に成功しました」と書いてあった為です。回路が理解できてないのは確かですが、勘違いで書いたわけではありませんw。(疑問には思ってましたw。)

前の修理を担当した人は…いい加減な治療の人とまでは思いません。一般的レベルからすると、十分レベル高い方だと思いますw。(まあ、田舎暮らしで井の中なので、全国的にどうなのか分かりませんがw。)
今回は、普通のドクターなら「IC不良で修理不可」となるでしょう。まあよく、諦めずに直せたと自分でも思いますw。全国的に見ても(いきあたりばったりだとしても)アレが直せる人はそう多くないのではないかしらw?(根性ですw。)
いずれにせよ、毎日1件以上ぐらいの件数を長年直し続けてきた事は尊敬しています!(ボクも件数を自慢してますしw。)特に、めんどうなぬいぐるみ系や単なるぬいぐるみの修理も非常にたくさんやられてました。
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我孫子の発振回路2 (大泉茂幸)
2021-10-24 22:46:42
我孫子の説明文を読むと、確かに「フィードバック抵抗が1MΩでも発振に成功しました。」と書いてありました。これは間違いですね。この1MΩはバイアス電位を与えるだけで、フィードバックの役割は果たしていません。


長さんについては「いい加減な治療の人」とは言い過ぎでしたね。でも、大々的に看板を掲げてやっている(やっていた?)わりには電子系の故障は殆ど治せていなかったようです。

以前に練馬区から当方へ赤外線リモコンのクローンを作って欲しいと相談されたので、最寄りの長さんに照会をしたことがあるのですが、「赤外線リモコンは対象外」と断られました。まぁ、身の丈以上のことはやらない、と言うのはいいことですが、クローニングくらいはできて欲しいでね。
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