この日は、毎月第2土曜日、宇部おもちゃ病院の定期開院日。
前半、来客全然無かったので、他のドクターが保育園から預かってきたおもちゃの修理をしました。
(宇部おもちゃ病院では、知名度アップ・修理数アップの為、宇部市内の保育園を回って、おもちゃ病院の出張開院をしないか、相談に回ってます。今回は、開院してもらう前に、とりあえず園のおもちゃを直してもらおうか、というので預かってきたようです。)
という事で、1個目は、左下のSWを押すと、手やしっぽを振りながら音楽が流れる、リスのおもちゃです。
全く動かない、との事ですが、SW不良or断線でしょう。
ぬいぐるみを半分脱がせてみると、やはり、ケーシング出口でSW線の断線でした。
開けないと直せないので、ケーシングばらします。
中、こんな感じ。SW配線は途中で繋いで修復。
最後、一番下を結束バンドでくくって、ぬいぐるみと機械部を固定してるのですが、結束バンドが劣化で切れて、元々脱げかかってました。ちょうどいい結束バンドが無かったので、糸を通してくくってみましたが、いまいちちゃんと固定できません。
保育園担当ドクターに、適当な結束バンドがあれば固定してもらうよう頼んで、終了としました。
2個目以降は、後半~時間外にもって来られたので、入院での対応。
2個目は、いつもの「歩いて鳴く犬のぬいぐるみ」です。(ばらしてみると、あちこち壊れてました...)
一応動くけど、鳴かなくなった、との事。
いつもの様に、電池ボックス周りの接着を外して、足から脱がせていきます。
足を脱がせた時点で、「おっ、これは何度もみたヤツ」と分かります。
こやつはいつも、しっぽを越えるのが難しくて折れそうなので、しっぽを外してぬがせる事が多いのですが、今回はかつかつ外さずにぬがせました。
ぬいぐるみ脱がせて、頭蓋骨まで分解してみると、鳴き笛がつぶれて、変なところに引っかかってました。
ラッパが取れてますが、それはたいした問題ではない。鳴き笛の中でスプリングが外れてしまってます・・・。これは、鳴き笛一回破って、作り直す必要がありそうです・・・。
鳴き笛が左側にずれないように軽く止めてる部品も、付け根が折れて取れてます。ここは穴あけ&本体も下穴あけて、タッピングビス止めとします。
鳴き笛は、トレーシングペーパーの様な紙で作られているようですが、ただこの形に作っただけでは、鳴き笛をつぶした時に、紙がぐしゃぐしゃになって、すぐ破れてしまうような気がします...ふいごの様な折り方(じゃばら折り?)をする必要があるでしょうか? いつもみるヤツは、どんな作りだったかなぁ・・・。
ネットで調べるも、いまいちピッタリの説明がなく、試行錯誤しながら、試作品作った結果がこれ。
これなら、ぐしゃぐしゃになることなく、きれいに折りたたまれます。
トレーシングペーパーに下書き。
鳴き笛の板に貼り付けて組んでみると、左右の三角部分の斜め折り線は、必要なかったですね。でも、なんとかぼちぼち、きれいにできました。
でもって、組んで動かしてみると、「いざる・鳴く」の時の足の動きがなんかおかしい・・・。
よくみてみると、以前にもあった、足の位置を変える為の支点が、またもや折れてます…。(ぬいぐるみをぬがせるときに、足にかなり無理がかかるので、その時折れたのかもしれません。)
ちょっと写真では分かりにくいですが。
前回は、ちょうどいいΦ4mmの材料があったのですが、今回は探してもみつからず、Φ6mmぐらいのPP材を苦労して削って、軸を作りました。
で、また組んで動かしてみると・・・まだ動きがおかしい。なんか「ガキッ」と動きが飛んで、ちゃんと鳴かない・・・。
中のギアをよ~く見てみると、ピニオンに欠けがあるようです。
これも写真では分かりにくいですが、上から2番目に見える、ピニオンと平歯車がひっついたギアの、ピニオン部分に刃こぼれがあります。
分解して外すと、下の写真。
ピニオンは、歯数9枚。平歯車の付け根の所で、薄刃のノコで切断して、手持ちのギアと交換。軸がそこそこきつい様だったので、平歯車とピニオンとは特に固定はせずに、組み戻しました。
再々ですが、全部組み戻して動かしてみると・・・ばっちり良さそう!
という事で、ぬいぐるみまで着せて、試運転してみると・・・なんか、鳴きが弱い。
全く声が出なかったり、弱々しかったり、何かがおかしい・・・。
さっき修復したギアに滑りがあるのか?と思い、瞬間接着剤で平歯車とピニオンを接着してみましたが、改善せず。鳴き笛は手でちょっと押してもちゃんと鳴るので、問題なさそう・・・。
また分解して、歯車にくっついてた綿ゴミを取って、歯車への給脂等してみましたが、あまり改善せず・・・。
ぬいぐるみ全部着せた状態で、ちょっと力無い、まあ、鳴く。という状態で、とりあえず完としました。
(後々考えてみると、鳴き笛をじゃばら折りしたのが、逆に悪かったかもしれない・・・。逃げがある分だけ、ふいごが押された時のレスポンスが悪いのかもしれない・・・などと思うのでした。)
さて、最後3個目は、タカラトミーアーツの「夢の子 ユメル」です。
これは、先月の宇部定期開院時にネルルちゃんを持って来られたのと同じ人からの依頼です。
右手SWが効かない、胸のとんとんセンサーも効かない、との事。
また、背中で機械ボックスを止めている結束バンドを切って、綿を抜いて、確認していきます。
右手SWは、SWの付け根で配線2本とも断線してました。
SWは、プリモプエルと同じ、□5mmのタクトSWでした。配線継いで、復旧。
胸の圧電センサは、例によって潰れてたので、新品に取り替えました。が、どうも反応せず。
念のため、センサー付近の配線も取り替えてみましたが、反応せず。
しかたなく、機械ボックス分解して、基板側と配線導通確認するも、配線は切れておらず・・・。
困って、基板の確認を行いました。
表面実装の両面基板で、回路を追うのはかなり困難・・・。
ですが、一番下、左側から、頭の圧電センサ[HEAD]と、その右、胸の圧電センサ[CHEST]の端子があります。
[CHEST]端子の左上、Q2とQ5が、2石ダーリントン接続による圧電センサの信号増幅部ですね。
[HEAD]端子の左上方、Q1とQ4は、配置・パターンがそっくりで、こちらが頭の圧電センサの信号増幅部ですね。
[HEAD]側の増幅部、よく見ると[P1.5]と書いてある確認用ランドがあります。ここを、アナログテスターの電圧モードで触ると、どうも頭のセンサーを触ったと判断されて、セリフをしゃべります。
ここの電圧、アナログテスターでは正確に測れなかったので、DMMで測ってみると、無信号時:2.8Vで、センサに入力あると、電圧下がります。
[CHEST]側にも同様なランドがあり、基板表側にちゃんと「P1.6]と銘記があります。
ここの電圧もちゃんと、無信号時・信号入力時、[HEAD]側の確認ランドと同じ動きをするので、センサ~配線~増幅回路、全部ちゃんと働いています。
ここの増幅部からICまでは、[HEAD]も[CHEST]も、表のパターンで繋がってて、追うのは困難ですが、IC左側にスルーホールがいくつも開いてる、一番下の穴が[CHEST]からの信号入力ライン、下から2番目が[HEAD]のライン。
ここで電圧測っても、ちゃんと信号来てます。
念のため、ここのスルーホールとIC間のパターンのレジスト、一部削って当たってみましたが、やはり結果は変わらず・・・。
という事で、
・頭の圧電センサと、胸の圧電センサと、増幅回路は同じで、無信号・信号入力時の電圧変化は、頭側も胸側も同じ。
・この信号がIC直近まではちゃんと来ている。
ということから、ICの故障(もしくは、モールドで隠れてる部分のパターン断線)で、修理不可能、という結論に達しました。
依頼者様には、その旨伝えて、返却としました。
(完治しなかったのは残念でしたが、これは多分、基板交換以外には直らない症例だったのではないかと思います。)