航空自衛隊F-X、さらっとまとめ(2)

2011-06-08 19:01:48 | 軍事ネタ

前回分、航空自衛隊F-X、さらっとまとめ(1) からの続き。


引き続きF-Xに於いて求められる要求性能、長大な航続距離と機動性能について。
航空自衛隊の戦闘機の主要任務は、スクランブル・航空要撃・航空阻止などあるが、
一口に全てまとめたら迎撃だ。

スクランブル=平時において防空識別圏に侵入する他国籍機に接近・警告し領空外へ誘導する。
航空要撃=有事において、実際的に敵性航空勢力を空戦により排除し制空権を確保する、防空任務。
航空阻止=日本本土に接近・上陸する敵性艦艇や地上勢力の進出を爆撃により阻止する。


これらの迎撃任務をこなす上で、航続距離や機動性能が重視される。
航続距離はどれだけ長い距離を飛べるか、機動性能は加速力や最高速度などの性能。

日本の広い領空・領海を守ろうと思えばそれだけ長距離を飛行できることが求められ、
航続距離は空戦においての交戦可能時間とも直結する為に軽視できない。
また日本のように少ない機数で広範囲を守備するのにも航続距離は重要だ。

機動性能は、上記のような迎撃任務においては現場に到達するまでの時間が重要になる。
対象への接触が早ければ早いほど対応時間に余裕がとれ、
本土に極力接近させないよう、リスクを回避するのにも重要だ。
また実際的な空戦に於いて、機体の速度性能が重要なファクターなのも不変である。


対艦攻撃装備の空自F-2戦闘機。ASM-2(対艦ミサイル)を4発搭載している。

対地攻撃・対艦攻撃任務にも対応できるマルチロール性能については、
少数の機体を最大限活用する為に、ある種の万能性が求められる。
空戦だけではなく、前述したように航空阻止任務も空自の戦闘機隊には求められており、
この点で、空戦もできるけど爆撃もできる、といったマルチロール性能が重要になる。

幸い前回記事で書いた現在の候補機種は、全てがこのマルチロール性能が高い次元で備えられているとされるが、
以前の最優先機種であったF-22ラプターはほぼ空戦専門機であり、このマルチロール性能が高いとは言えない。
それでも空自がF-22を欲したのは、やはり他の追随を許さない圧倒的な空戦性能を買ってのことだろう。
(現在の候補機はF-35、F/A-18E、タイフーンの3機種で、いずれもマルチロール機である。)


輸入ではなく、自国でのライセンス生産が可能なことの点については、
単純に完成された機体を輸入するか、自国で部品から生産し組み立てるかの違いである。
また両者の中間的な、部品を輸入し自国で組み立てるノックダウン方式というのもある。

自国でのライセンス生産を行うメリットは、国内の生産基盤が活性・維持される点である。
委託企業の工場を稼働させ、雇用を促進し、また航空機生産の技術やノウハウも得られる。
特に航空機生産の職人を育成し、技術を絶えさせないことで、
将来的な国産戦闘機の開発・生産にも役立てることが期待できる。

また自国内でパーツを生産できるので、修理や整備が迅速で、
故障率を低く抑え稼働率の向上が期待できる点も大きなメリットだ。
他には国際関係など何らかの事情で機体を輸入できなくなった時も、
自国で生産できるので強みがある。

逆にライセンス料を支払うので輸入に比べてかなり高額になるケースもあるが、
日本の場合、上記のメリット全てを重視して、
基本的には戦闘機はライセンス生産を選択してきた経緯がある。


なので今回の選定でもライセンス生産が望ましいとされているが、
最新技術と機密の塊であるF-22はもちろんライセンス生産は不可能であった。
続く候補機のF-35も多国間共同開発機である為に、国際関係上、
共同開発に出資していない日本がライセンス生産することは難しいとされている。

(ただしF-35の開発費高騰は著しく、日本がF-35を購入することで出資各国の負担の軽減が期待されており、
その為に空自向けにF-35の売り込みは年々強まっている点から、取引カードとしてライセンス生産の可能性が取り沙汰される可能性はある。)


タイフーンも欧州の多国間共同開発機であるが、こちらもF-35と同様出資各国の負担軽減の面から日本へのセールスを行っており、
もしも空自がタイフーンを導入するならライセンス生産は可能という条件を提示されている。


F/A-18E/F スーパーホーネット

前回記事から続く以上の要素を候補3機種で比較すると、

空戦性能 ・・・ F-35かタイフーン。(ステルス性能の点でF-35優勢であるが、兵器搭載量や速度性能から言えばタイフーンも高性能機である。)
航続距離・機動性 ・・・ F/A-18Eかタイフーン。(航続距離ではF/A-18Eだが、F/A-18EもF-35も速度性能が悪い反面、タイフーンは速度性能が良好な機体である。)
マルチロール性 ・・・ 全ての機種が向いているが、兵装搭載量だけはF-35がやや不利。
ライセンス生産 ・・・ タイフーンとF/A-18Eならクリアだが、F-35にも部分的にまだ可能性が残されているかもしれない。

また他にも機体導入可能時期も空自は重視しているので、2016年に入手可能な点で言えばF/A-18Eかタイフーン。
しかし政治的にはアメリカ製を重視する風潮があるので、その点でいえばF-35かF/A-18Eだ。


このように各機種一長一短なところがあり、選定は難航している。
ちなみに価格面については、空自は今までのF-Xではその世代の最新・最高の機種を選定してきているので、
今回も元々はF-22が最優先候補にあった点から見ても、大きな争点ではないと思うので考慮しないこととした。


どの機体になるのか。
今年の11月までに確定されるとのことだけど、予想して楽しんでる人は多いだろう。
ちなみにyukky的には、個人的な感情で言えば日の丸タイフーンも見てみたいが、
導入開始時期が遅れようと、性能・政治的な面から無難にF-35に落ち着くだろうと予想している。
外れるかな。