2011年度の概算要求でAH-64Dアパッチが調達再開

2010-09-06 21:39:40 | 軍事ネタ



先月末に防衛省より公開された平成23年度の概算要求。
各種調達兵器や研究の予算が盛り込まれた書類ですが、
その中にAH-64Dアパッチ の記述がありました。

陸上自衛隊は対戦車ヘリとして既にAH-1Sコブラ を90機保有していますが、
コブラは世界最初の攻撃ヘリであり陸自でも運用開始からもうすぐ30年経とうとしています。
老朽化に対応するために次期攻撃ヘリ選定(AH-X) が行われており、
AH-Xで選定されたAH-64Dアパッチは62機調達するものとして2002年度から陸自に納入されていました。

しかし、同時期にアメリカでの生産が終了したAH-64Dアパッチの調達費は高騰化し、AH-Xは62機から13機までの計画に縮小された他、
一機200億円超という主力戦闘機並の調達費に、とうとう2007年度の10機目の調達を最後にAH-64Dの調達は中止されています。

そして平成23年度(2011年) の概算要求で唐突に浮上したAH-64Dの1機のみの調達再開。
このまま予定通り13機までの調達を再開するのかな?
しかし、54億円とは破格に思えるけど、何があったのだろうか。


AH-1SコブラAH-64Dアパッチ・ロングボウ

既に90機配備されているAH-1Sコブラは、数の上では陸自の攻撃ヘリ戦力の主力ともいえるが、
戦闘能力でいえば圧倒的にAH-64Dアパッチに分があります。
というのもまず機体規模が違うので兵装搭載量が大きく違い、

例えば陸自のAH-1Sは対戦車ミサイルを8発搭載できるが、
これがAH-64Dとなると対戦車ミサイルを16発搭載できます。
またAH-1Sは旧式機の為に、運用できる対戦車ミサイルはBGM-71TOWであるが、
AH-64Dが搭載する対戦車ミサイルはより最新式のAGM-114Lヘルファイアです。

TOWミサイルは有線誘導式で、発射から着弾まで目標を照準し続けなければいけない。
これは発射から着弾するまでその場を移動できないということであり、反撃される危険性が大きいです。
一方AGM-114Lヘルファイアミサイルは撃ちっ放し式ミサイルであり、発射後の誘導を必要とせず、
発射した瞬間から隠れたりができる為に反撃の可能性を大きく減じることができます。




また、AH-64Dのヘルファイアミサイルは稜線の向こう側にいる敵にも身を隠したままアウトレンジ射撃が可能であり、
これもAH-64Dの生存性向上に一役かっています。

他にもAH-64Dの搭載するロングボウ・レーダー火器管制システムは、
複数の敵を距離や脅威度によって自動的に優先度を算出しレーダーに投影することができ、
優れた索敵能力と識別能力、そして攻撃能力をもっていたり、他にも優れた機能を多く有しています。


以上のことから、AH-64Dは1機のみで現行のAH-1S数機分の働きが期待でき、ヘルファイアミサイル16発の携行数は、
理論的には上手くいけば1機で1個戦車中隊を殲滅せしめることが可能な搭載量ということです。
また近接距離での自衛程度の空対空戦能力も有しており、実際に航空機の撃墜戦果も挙げています。

この重武装さからAH-64Dアパッチは世界最強の攻撃ヘリともいわれており、
また山がちな地形が大半の日本本土では、通常は移動が困難な地形をヘリは高速移動でき、
そして山が身を隠してくれるという、もしも陸戦を行うなら攻撃ヘリの運用に向いた国土となっています。


AH-64アパッチはイラク戦争において、イラク軍の戦車隊陣地を攻めこみ、
30機中29機が損傷し1機撃墜されるという大損害を出したこともありますが、
いくら重装甲とはいっても所詮ヘリはヘリということです。
戦訓の1つということ以上の意味はなく、AH-64Dの有用性を減じるものではないでしょう。


今のところ陸自にはたった10機のみの配備で、これ以上満足に増える展望も今のところありませんが、
しかしこの度1機のみでも調達再開されたのはなかなか期待できることでしょう。