Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

DENON RP52,RP53 について

2017-06-17 10:55:32 | レコードプレーヤー

 DENONブランドについては詳しい解説がDENON MuseumのHPで掲載されています。

 ターンテーブル関係では円盤録音機と当時の再生機、ダイレクトドライブ以降の製品についての記述はあるのですがその中間に位置していると思われる業務用の再生機器についてはカートリッジの真似チャイルドと呼ばれた「PUC-3」と業務機から市販された「DL-103」など以外は見当たらない。
 1950年〜60年代はSPからLPレコードに、モノラルからステレオになっていく黄金時代なのだがその間の国産業務用再生機は資料が少ない。実際に放送局ではどんなターンテーブルが使用されていたか興味深い。
 ダイレクトドライブ以前の国産レコードプレーヤーはあらゆる面で外国産に大きく水を開けられていた、もしくは画期的な技術開発が進まなかった(枯れた技術)なのかもしれない。世界を席巻していたEMTは超高価だったと思うし、50Hzと60Hzの混じった日本での対応、消耗品の調達やメインテナンスの依頼などやはりヨーロッパは遠かったのか。当時の米国の業務用ターンテーブルはなんだったのだろうか?思いつくのはRek-O-Kut、GRAY、Fairchild,など。しかしそれらはThorens124の出現で駆逐されていく。だかThorensが業務機として放送局で使われていたかはよくわからない。(DJの時代やヒップホップのターンテーブルはSL1200か)
 EMTの名機と言われるEMT930,EMT927はすでに1950年代にドイツで開発されている。同じ敗戦国のはずだがこの差は元々の国力の差か?
  
  DENONとNHKは戦前から関係が深く昭和10年代まではテレフンケン製の円盤録音機を使っていたが戦争で輸入が途切れ国産の開発が急がれた。DENONはその中でも優秀なプレゼンで納入業者として定着した。円盤録音機は昭和20年代末にはテープ録音に置き換わりターンテーブルは主にレコード音楽の再生用に限定された。NHKを始め日本の放送局では多分外国産のターンテーブルは使われなかったしまた海外に輸出はされなかったのではないか。業務機使用は放送局に限られお役御免で放出されたのが現在目にするものかと思います。一般家庭では(絶対に)使われなかったであろうから数も限られる。表題のDENON RP52、 RP53はその中でも比較的よく目にする業務機でサフィックスの違いでバリエーションがあります。

 webで見つけた記述を要約すると
 「昭和30年(1955年) NHKと日本電気音響の共同開発でAM放送局用に 作られたのがRP52でシングルアーム用、RP53は放送局用の2連コンソールのプレーヤー部。 標準はDA-302アームとA-160アーム付きで 103と102の専用機」(ここでのA-160アームはTokyo sound社製)


 拙宅のDENONのプレーヤー


 

 銘板が無いのではっきりとは言えないが、サイズからRP52では無いかと思われます。
 外観はハンマートーンに再塗装されアームは東京サウンドのオイルダンプA-160、カートリッジはシュアーのM3D(ステレオ)が付いている。キャビネットやアクリルのダストカバーも立派で随分と物量が投入されている。いつごろ仕立てたかは不明だがさぞ高かっただろう、、と思わせます。

 ターンテーブルシートをはぐると
 
 現れるのは薄いサブテーブル。周辺にあるパットで押さえたり離したりでクイックスタート用。ここはEMT流。

 パットを動かすソレノイドはとても大きい。サブテーブルを外すとプラッターが現れる。
 




 50Hzと60Hzの切り替えスイッチがあるがこのスイッチは進相コンデンサーの切り替えスイッチで回転数が替わるわけでは無い。両周波数への対応はモーターに直接接続されている3段の軸を交換する必要がある。現在は60Hz用となってます。

 

 

 速度調整用ネジの部屋の蓋
 
 感心したのはネジを回すのに必要なレンチ(タダの針金)が仕込まれていること(!)左下の穴に差し込まれている。
 
 こういう小技は大好きです。キャビネットもしっかり作り込んでいて内側には鉛シートがびっしりと貼ってある。
 
 モーターには1964年と。
 


 半世紀以上前のものとわかる。ほとんどオリジナル部品だがブロックコンデンサーは交換されている。原理は未確認だがクイックスタート時の信号導通遅延回路用か(これについては指摘があり違うらしい)。


 クイックスタートのできる二重のターンテーブルやプラッターの形状などはEMT927を意識したな!と思わせる意匠。

 EMTと決定的に異なるのはプラッターの加工精度。EMTばりの穴が開けてあるがいかにも雑い。穴の真円度、面取りいずれも荒っぽい。業務用はこれ位ワイルドでも良いのか?ちょっと残念。

 この加工精度の納品でDENONはよくOKしたものだ。これは、、なんとかしたいところ。

 外注してプロにお願いすることも考えたが結局自前で行います。まず切削器具でバリ取り、真円に近づける。この辺が設備の無い者にとってはハードルが高い。

 後は気のすむまでコンパウンドで磨く。

 パークリで洗って(フェルトが付いたままなのでほどほどに)オシマイ。

 偉そうに吠えた割にはこんなモンでした。ヤリ過ぎるとギラギラ、テカテカになるのでこれくらいで止めた(ウソ)。ブラストショットで梨地にすればソフトな感じになると思う。回転バランスが狂うほどは削っていない。もともとガラードのような穴を開けてバランスを調整したような跡も無い。

 モーター周辺のゴムサスペンションはまだ生きている。
 


 回転数の切り替えは業務機の面目躍如のメカメカしさ。
 
 ラック&ピニオン。本来はダイヤルをスライドさせて小さいレバーを回転させると固定される。

 この銀色の板はレバーを回転させてネジを突出させ板に当たって固定するためのものだが固定ボルトが緩めたままになっている。試しにしっかり固定するとダイヤルが動かなくなってしまう。早速ワッシャーを入れて微調整した。

 

 プラッターや外観、アクリルカバーの受け、軸への注油(グリス)、駆動系の調整などを行なってターンテーブル周りは終了した。回転させてみるととても静寂でリムドライブプレーヤーとしても優秀だしアイドラーはまだ使える状態のよう。クイックスタートも機敏に反応する。この機能については家庭用音楽再生には不必要なのでサブテーブルを含めて撤去されている事も多いらしい。しかしEMTでもそうだが使ってみるととても有効で楽しい機能だと思う。EMT927Dstではこの機能は省かれてガラス製ターンテーブルが載っている。重量もあっていい事づくめのような気がするが実際にプレクシグラスと比べてみても良し悪しでやはり理屈一辺倒ではなくシステムとしての音創り(RP52はその意図は無いと思うけど!)が大切かと思う。極力オリジナルに戻した上で必要に応じてアレンジを加えることにします。

 トーンアーム周りにかかります。
 多分オリジナルと思われるTokyo sound社製 A-160アーム。
 

 オイルダンプのアームはGRAYが有名だがこのアームの構造は水平軸と垂直軸が各々独立している。

 オイルの量や粘度、調整でかなり再生音に影響します。オイルは適当な量と価格でラジコンで有名な「京商」で入手できます。

 カートリッジはShure M3Dが付いてます。針は手持ちのものがあったので取り付けたのだが何故かカンチレバーがひしゃげて(?)ます。。新品のパッケージから取り出したのだが??


 もともとモノ用アームですがステレオに改造されています。とても繊細な加工でしたがリッツ線の出口で1本切断していたので後加工して4本とも付け替えました。(この結線はまちがっているようです)


 針圧の調整は難しい。適当なオモリをどこかに固定して調整するがアームの反対側のオモリを外すと
 
 オモリを前後に移動して針圧調整するアームもありますがこれは移動はできない。でもオモリの部分に添加オモリができそう。しかし今回は針側に加圧しなくてはならないので(削るのも面倒なので)適当なオモリを付け加えます。
 カートリッジの交換はしない設定だろうしこれでいいのでしょう。カートリッジは「カーソル」というアダプターでアームに固定されるがこのカーソルも欠品していることが多く悩まされます。出物のアームがあってもカーソルが付いてないととても迷います。

 信号は直接ピンコードで出力されています。通常クイックスタートの場合は定速になるまでの時間稼ぎでリレーによる信号の遅延回路が入っている。また停止する時も信号が先に遮断される。信号回路に接点を入れるのはやはり抵抗があったらしいしステレオ対応にしないといけないのでこのままとします。(実は回路の仕組みがよく分かっていない)
 サスペンションは底のゴム足のみでモーターの振動はモーター本体とマウント金具のゴムのみで遮断されている。デッキとケースをリジットに固定してケースに防振材の鉛を貼り着けるのも理解できる。しかし今はデッキ下にウレタンによる緩衝材を入れています。モーターの振動は少ないがやはりケースと共振するのではという先入観から。この辺りは置かれている環境などが影響するので設置してからの調整とします。

 

 


 お読みいただきありがとうございました。

 

 

 後日談

  先日縁あってお嫁に行きました。私の不注意でシェル内の結線が間違っていたようで先方様にはご迷惑をかけてしまいました。幸せに働くことを祈っています。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
クイックスタートについて (元ミキサー)
2018-12-20 03:15:36
文中の「定速になるまでの時間稼ぎでリレーによる信号の遅延回路」と言うのは、放送局用コンソールには元々入ってなかったです。写真のリレーは瞬時起動するための押さえパッドを解除するためのリレーです。アッテネーターに内蔵のマイクロスイッチで解除するのですが、3分の1回転で定速になります。アッテの上げ方は職人技が必要で、マイクロスイッチがoffになった後で定速になるまでにアッテを上げきるのです。昔、ラジオの音楽番組を聞いているとアッテをいきなり上げるミキサーがいて、音楽の冒頭に低音のグウッと言うトレースし始めの音がよく入ってました。ヘッドホンや低音のよく出るスピーカーで聞いているとよくわかりました。この技は、後の局用ダイレクトドライブのプレイヤーでも必要で、アッテをちょっと動かしその後はすーっと上げるのです。
クイックスタート (koban)
2018-12-20 10:36:50
元ミキサーさん こんにちは。
 そうでしたか、、。リレーが付いてますがクイックスタート時の動きについてはよく見ていませんでした。
 EMTの項でも書きましたがEMTの場合はマークまでレコードを逆回転させてサブターンテーブルをロックし、その後メインを回転させる。Qでロックが解除され(ソレノイドのON,OFFはQスイッチ直結)滑りながら回転が始まりあるポイント(針の直前)まで達するとリレーがONとなって信号が繋がる、、というものでしたのでてっきりDENONの場合も同様な仕組みだと思っておりました。
 ご指摘ありがとうございました。
Denonrp52 (Vic)
2019-01-12 01:38:55
Hello
Would You sale this Denon RP52?
jmitshell@yahoo.de
thank You
Victor
DENON RP52 (koban)
2019-01-12 08:52:52
sorry,I have not got it already.

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