Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

Ortofon mono について

2019-04-09 19:06:07 | Ortofon

 ortofon社(デンマーク)の前身のElectrical Fonofilms Campany A/S(エレクトリカル・フォノフィルムズ・カンパニー)は1918年10月9日にAxel Petersen(アクセル・ピーターセン 1887〜1971)とArnold Poulsen(アーノルド・ポールセン 1889〜1952.6)によってトーキーシステムの会社として設立された。1931年にはレコード制作用のカッティングシステムの開発、1946年に社名をFonofilm Industri(フォノフィルム・インダストリー)に変更した。

 1948年モノラルMCピックアップの生産開始。

 1951年にオルトフォン社がフォノフィルム・インダストリー・A/S傘下の商社として設立される。

 1953年トーンアームの生産を開始する。その後1965年までの間に主だった製品が開発される。この間にEMTへのOEM供給、JS社の昇圧トランスの採用など。

 1959年には革命的なステレオカートリッジ「SPU」が発売になる。ステレオレコードの登場は1958年でその後も78SPレコード、モノラルLPレコードの需要はあり製品は供給されていた。

 

 ここでは魅力的な初期のfonofilm,ortofon製品を調べてみようと思います。まず基礎知識のおさらいを、、。

 1948年にはHolger Christian Arentzen(ホルガー・クリスティアン・アレンツェン)が高いクオリティのSP/LP盤ラッカーディスク再生用モノラルMC型ピックアップを3種類開発した。基本構造は共通(インピーダンス 2Ω、自重30g)で振動系の実効質量が異なる。

  type A:スタンダードタイプ      4mg(針圧 7〜15g)

  type B:ブロードキャスティングタイプ  3mg(同  5〜15g)

  type C:スペシャルタイプ       1.5mg(同  3〜10g)

 またそれぞれ曲率半径の違いで白(95μm) 灰(85μm) 紫(75μm) 青(65μm) 緑(55μm) 黄(45μm) 橙(30/75μm楕円) 赤(25μm)に分類され色別にマーキングされていた。

 

 後にtype Aとtype Cの2種類となり各々のGシェル版のtype AG、type CGが加わった。1989年まで長期にわたって発売されていたモノラルカートリッジ CA25D CG25D CA65D CG65D はこのType Cの発展形で最後の「D」はダイヤモンドを表し(だと思う)Aシェル、Gシェル X LP用、78SP用となる。

 

 mono(モノーラル)信号は一つなので接続端子は2pin、後発のステレオ信号は4pin必要になる。ortofonからOEM製品の供給を受けていたEMTはモノラル時代の水平2pin配置に垂直にもう2pinを追加することで(十字配置)モノラルとステレオを両立させた。しかしこの十字配置を採用したメーカーは少なくortofonも自社製品の互換性を捨ててSME配置を選択した。type ADを除いて全てのOrtofon(Fonofilm)2pinカートリッジはEMTアーム(EMT997,EMT929)に取り付けることができる。これは非常に幸運な事でNeumann DSTもそうだが色々と作法があるにしてもとりあえず聴くことができるのはEMT機器を使用している者としてはありがたかった。SMEアームも最初期のプロトタイプと呼ばれる製品はOrtofon monoやEMT製品までも対応できたがこの機能は引き継がれなかった。

 

 最初期のトーンアーム (手持ちの資料から)

   

 いずれも2pin用で数字はレコードのセンターとアーム起点の距離を表していていわゆるショートアーム群とロングアーム群。

 

 Ortofon A212とBシェルカートリッジ

 唯一の樹脂製のtype A 212が1953年にortofon最初のアームとして発売された。適応するカートリッジはtype B  type AB  type CB type ADなどでいずれもBシェル。これはアームとシェルの形状を合わせたためでもちろんAシェルも取り付けることはできるが不格好になる。それよりも特筆事項はこのアームが世にも奇妙なコンパチブルカートリッジのtype AD専用アーム(このアームでしか使えない)ということ。LP/78SP両方に対応する関係で針圧も5g〜15gで調整できる。色はblackとcreamでカートリッジも同色を組み合わせたかと思う。さすがに北欧デザインの国デンマーク製品か。

 

(出典 https://www.lencoheaven.net/forum/index.php?topic=10676.0) 

 Ortofon最初期のものと思われるパンフレット。すでにOrtofon設立後と思われる製品だがFonofilm Industri A/S」となっている。「PIC-UP HEAD TYPE B」は「Broadcasting Type」のことで、B25(red 25μ)はモノラルLP用、 B30/75(orenge 30/75μ)は楕円針だがこれを含めてそのほかは全て78SPレコード用。

    

 type Bだと思うが確証はありません。またアーム取り付け軸の部分が緑なのでgreen 55μ かと思うが実際は青(blue 65μ)なのかもしれない。カンチレバーはtype Aのような幅広のものだが実際の実効質量はtype Aに比べて1mg少ない。厳密な聴き比べはしたことがないが、個体差が大きいのであまり意味がないかもしれない。

 

 type ADは「TOGA ターンテーブル」の項で紹介した。

      

  カートリッジを捻って(傾けて)LPと78SPを切り替える。アームの付け根にあるレバーで針圧を調節する。2本の針は両方ともにサファイア針。

 type Bの後にtype Aとtype CをベースにBシェルに組み込まれたものが現れた(多分そうだと思うが自信なし)。各々type ABとtype CB

 

 type AB

 

 軸の色は45/33(LP用)は赤(red 25μ)だが78(78SP用)は黒になっている。軸だけ取り替えたのかは不明。ところで修理などで内部を取り出すには本体裏に打ってある鋲を引き抜くとプラスチックの軸がリード棒を残して外れるので本体をムーブメントを止めてあるネジ1本を外して取り外す。

 type CBはtype CをBシェルに組み込んだものだと推測するが

 

 type Cのカンチレバーは標準的な太さ。しかし前出のtype ABと比べると赤いドットが彫り込んであったり前方が方形に欠かれていたりで少し異なる。シリアルNoを見るとちょっと古いのかもしれない。

 

 

 

 

 Ortofon S212

  

  

 S212トーンアームはOrtofon史上一番の簡素なトーンアーム。Aシェル専用で針圧調整機能もない。カートリッジの取り付けもジョイントリングは無く押し込むだけで固定される。端子は当然2pinでスプリングが組み込まれている。カートリッジの重量は30gに統一されているのでどのカートリッジも同じ針圧がかかるようになっているが針圧12gということで78SP用。78SP専用のトーンアームはFonofilm Industri(Ortofon)ではこれのみ。

 

 Ortofon RF 297

 

        

 ロングアームのRF 297だが拙宅ではずっと出番が無かった。ずいぶん前にEMT927にmono専用アームとして取り付けるつもりで購入したのだがEMT927に穴を開ける勇気がなくて現在に至る。穴を開ける場所は左上の角なのだが直下には電源トランスがありノイズに悩まされるかもしれない、、というのも理由付けになっている。RFアームの特徴の針圧調整スプリングを引っ張る機構のつまみの代わりにマイナスネジになっていて詳しい人に尋ねたりしたがこのタイプもあったらしい。またカートリッジ固定リングの幅は写真のように小さくカタログ写真のようにこれもあったらしい。ウェイトを固定するイモネジは二重になっていて外側の短いのを外しただけでは前後に動かすことはできず内部のネジを緩めて行う。

 カートリッジはシリーズ全て30gなので針圧調整のメモリが0の時に水平になるようにウェイトを前後に動かして調整してその後に後ろのネジを回して加圧する。水平になった時にスプリングのテンションが抜けて尚且つ遊びが無い位置に調整しておく必要がありメモリは30gまで書いてある。そうするとこの位置は必然的にスプリングの長さに規定される。ところが実際にこの作業をしてもカートリッジ側が下がってしまい水平に釣り合わせることができない。ウェイト側に重りを積むかスプリングを伸ばして(!)重りをより外側に移動させてバランスをとるか、、だと思うが追加の重りもかなりの重量となるしスプリングを引っ張って伸ばす勇気もない。これには困ってしまった。


 しばらく考えて結局メインウェイト側の軸に重りを埋め込んで少々のスプリング調整を行なった。

 

 

 これでなんとか0g〜の針圧調整ができるようになった。アーム組み込みのゲージの指す値とほぼ一致するがやはり針圧計は必要。ただ写真のそれは5gまでしか測れない。




 映画「ボヘミアンラプソディ」は最近まで市内の映画館で上映されていた。アカデミー主演男優賞を獲得して異例のロングランで私もその間2回ほど観に行った。英国のバンド「QUEEN」を聴き始めたのは2枚目のアルバム「QUEEN Ⅱ」からだったが田舎の純真な少年はびっくりしてしまってLPレコード抱えてせっせと友人宅周りをして無理やり聴かせた記憶がある。数枚のLP購入後はいつしか離れてしまったしライブエイドはTVで観ていたのだが残念ながらQUEENは見逃していた。

 久しぶりのQUEENがまた脚光を浴びたことに同時期のファンだった人たちは多いに盛り上がった。映画の出来も文句なくフレディの短かった人生を思うとこみ上げてくるものがあった。そして映画のヒットに便乗して様々な商品が発売された。これは「DeAXXXXXXX」の「クイーン・LPレコード・コレクション」シリーズ。25回配布されるらしいが書店でもVol,3くらいまでは大量に平積みされていた。QUEENのLPレコードは結構持っている、、と思っていたがそんなに多くが発売されていた事に驚く。せっかくの180g重量盤アナログだからとシリーズ購入する事にしてこの「MADE IN HEAVEN」が第4回目の配布。

 私だけ運が悪かったのかもしれないがこのシリーズの盤質にはちょっと問題があった。Vol,2の「QUEEN 1」を購入、開封すると盤が僅かに反っている。。交換しようかと少し迷ったが許容範囲かもしれないと思ってそのままにしていた。ところが次のVol,3の「QUEEN Ⅱ」の反り方は尋常ではなく横から見るとまるで煎餅(!)のようで当然全くトレースしない。本屋の展示は縦置きだったがどう扱ったらこんな極端な事になるのか。。これは当然返品交換になった。今回のVol,4も前の事があるのですぐに開封すると2枚組の1枚は僅かに反りあり、、ただしギリで許容範囲。もう一枚には反りはなかったのでやれやれと思ったがかけてみるとレーベルの中心が数ミリずれていて(!)見ていると目が回りそうになる。セットの注意書きを見るとレーベルシールのズレは交換対象にならない(!)などと書いてある。

 改めてアナログレコードの扱いの難しさを感じた。品質管理が進んだと思われる現代社会でもこういうことがある。今まで新譜にはこういったトラブルはあまりなかったが単に運が良かっただけかそれとも扱いに特別のノウハウやレコード愛があっての品質維持だったのだろうか。。デジタル時代になってソースの取り扱いに気を使う事は殆ど無くなった。盤や針を掃除したり、温度管理に気を使ったり、、やはりアナログは面倒だと思う。それが今マニア以外からも見直されているのはなぜだろう?データからモノへの回帰はバーチャルからリアルへの流れに通じているのか?(だいたいそんな流れなんてリアルか?)

  

 

 

出典 https://www.ortofon.com/hifi/cartridges-ranges/true-mono

 Ortofonモノカートリッジの系譜は前述の通りだがいざ現物を目にした時の判断材料を考察(ちょっとオーバー)してみると

   

 まず端子が2pinだというのが大原則。この接続端子はユニット直結なので4pinというのは途中で切り詰めて改造したか異なるユニットということ(だと思うが)。対応するアームも限られる。通常のSME接線のアームの他にモノラル専用アームが必要になる。EMTアームはそのまま接続することができる。ただし補助ウェイトが必要になるかもしれない。

 次にType AかType Cかだがこれはカンチレバーを見ればすぐに判断できる。通常の太さであればType C、板のように幅広であればType A。この2つは周波数特性も異なっていて

 Type A:  20-14,000Hz

 Type C:  20-20,000Hz

 またType Aはその重針圧ゆえ自動停止、オートチェンジャーに向いているとのこと。肝心な音の違いだが聴き比べれば一聴瞭然で全く異なる。同じ系列なのが不思議なくらいに。ただし個体差が大きいらしいのでひょっとすると故障した音をきいているだけかもしれない。。ついEMTと比較してしまうがやはり自分はEMTが好きなんだなと思います。安心のEMT。


 次に裏金属板に書かれている社名とシリアルNo,だが

   

 このType C(と思われる)には「ORTOFON」でシリアルNo,073997、上記のType CBは「FONOFILM」でシリアルNo,073989。1948年(社名FONOFILM)に一群のモノラルカートリッジが開発され1951年に社名がORTOFONに変更されたので多少のズレはあるかと思うが「FONOFILM」記載のものはこの3年間に製造された。またシリアルNo,073989とNo,073997の間に社名と記述が変更になった。さらに

   

 このカートリッジは2pinなのだが裏金属板には「TYPORADIO」となっていてシリアルNoも4桁。バッジはORTOFONなのでOEMかと思うが「TYPORADIO」については不明。どなたかご教授をお願い致します。OEMといえば

 ESL(Electro Sonic Lab)は、Ortofonの米国向けブランドで無骨なトーンアームもEMT接線だった。DECCAとLONDONのような関係かと思うが詳しくありません。JSで作っていてORTOFONに納入されていた昇圧トランスもそのままの上にESLのシールを貼って(!)売ってました。No,384トランスとESL-201は同じ製品。以前にNo,384は再販されたのを購入しましたがなぜか冴えない音ですぐに手放しました。やはり評価は低いらしく売却時には買い叩かれましたがその後の市場では混ざっているかもしれない。その点ESL製品の素性は確かだと思ってます。

 


 最後に魅力的なORTOFONのケースですが2個入りのもの。

 何が入っていたかは不明ですがLP用と78SP用か?また

 

 これらそっけないプラ製もありました。業務現場への供給に使われたのかもしれない。

 不確実な記述が多いことをお詫びいたします。間違いなどご指摘いただければ幸いです。




 お読みいただきありがとうございました。





 

 

 

  


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