Decca Decolaがお嫁入り

やっとこさ入手したDecca Decolaの整備記録

WE 1936 Series No,6 について (9)WE91Aについて

2021-06-07 13:07:40 | Western Electric

 高能率のスピーカーではアンプの残留ノイズがよく聞こえて時に気になることがある。「ハムは音楽が鳴っている時は気にならない」とはよく言われるが演奏が終了して静寂が訪れる段になって「ブーン」はいただけない。当時のアンプは低電圧の整流が大変でヒーターまで手が回らなかったわけだが(ホントか?)WE音響設備の映画館でもこの「ブーン」は聞こえていたと思うが問題にならなかったのだろうか?ハムは無い方がいいに決まっているがOMさんは「ちょっとくらいハムがあってもやはり交流点火でなければダメ」という意見が多い気がする。

 ヒーター電圧が高くなるほど交流点火によるハムは発生しやすい(理由は知らない)。2A3など2.5V管などは直流点火しなくてもあまりハムに悩まされることはないが直熱真空管でヒーター電圧が高いものは経験上直流点火でないと実用にならない。300Bは5V点火で新しい設計のアンプはほぼ直流点火のように思うが以前製作した「管球王国 Vol.3(1996年)」KS先生設計の300Bシングルアンプは交流点火だった。かなり個性的なアンプで私のような凡人には理解できない回路だったがデザインの美しさに惹かれて気になっていた。丁度WE300Bが復刻された時期で完実電気が扱っていた(1997年2月頃)世の中が300Bで盛り上がっていて思い切って購入した本家の300Bをどう生かすかで選択したキットだった。幸い先生は隣街にお住まいで実際に作業を指導していただきながら組み立てて無事に音が出た。

  

 表面にはネジはほとんど見えず、底板は正面から見たときに段差が見えないように本体に沈ませているシャーシ、特注メーターの文字盤のミラーはデザインのため、ハムバランサーのキャップは無垢からの削り出しと回路構成のみならず拘りのアンプで先生渾身の作品。私も心して製作にあたったが集中して早く作りすぎて「もっと時間をかけて丁寧に作りなさい!」と指導を受けた事が懐かしい。

 当時のプリアンプはmarantz 7K、スピーカーはオートグラフのレプリカだったと思うが肝心の音は不思議なことにあまり記憶がない。しばらく聞いていたがそのうち交代して以来一度も火を入れる事は無くなっていた。残留ノイズについてもどうだったのか気になるし四半世紀ぶりに稼働してみることにした。

 結線して通電すると思いっきり大きな「ブーン音」がでて慌ててスイッチを切った。どうも最大出力で発振していたらしくもう一台も同じ症状だった。やはり長いこと冬眠していたキカイはすんなりとはいかないのか。。それにしても何が原因だろう?こんな時は終段の電流計があるのでWE300Bの様子がわかって気が楽だ。カップリングコンデンサーの漏洩はない様子。

 いろいろと原因を思案したがふと思い立って目についたダイヤトーンのモニタースピーカーに繋ぎ替えると

 特に問題なく音が出た。このアンプは前段の12AU7はカスコード増幅という(滝みたいな回路図だからか?)SRPP(Shunt Regulated Push Pull)に似た回路を採用している。オーディオアンプの採用例は少ないらしく原理はよく理解できないのでそのまま完コピしているのだが高域の増幅特性が良好なためか出力トランスと300Bのプレートの結線にシールド線を用いたり(この線も自作する必要がある)出力トランスの2次側に補正回路が入っていたりと製作するにはなかなか手間がかかる。NFBは300Bから2段目の5693のカソードに6dB、出力トランスの2次側から初段の12AU7のカソードに9dBで合計15dBでWE91Bと比べれば少ないが一般的な直熱3極管アンプとしては多い。スピーカー出力は8Ωと4Ωで(これもトランスの16Ω出力は8Ω、8Ω出力が4Ωとなっている)どうも4Ω端子に接続して発振させたらしい。あらためて8Ω端子に繋ぎ直すと発振は治っていた。こういった経験は初めてでかなりクリチカルなアンプのようだ。

 残留ハムを測定すると2.8mVで記事では1mVだったとの事なのでここは私の製作技術が悪いのだと思う。ハムバランサーは結構効いているし負帰還をかけてしっかり作れば1mVということで交流点火でもハムは通常使用には問題ないということになる。対するWE91Aレプリカは5.8mV。信号入力は現在は入力トランスの2次側に入れている。かなりのハイゲインアンプなのでこうしないととても使いづらい。この状態でも2台のアンプの感度差はかなりあってそれも影響しているかもしれない。

 しばらく聞き比べたがやはりWE91Aレプリカで試聴を続ける事にした。管球王国300Bシングルアンプは非常に上質な音がすると思うが出番は他にあると思う。

 WE91Aレプリカで久しぶりにCDを聞き続けていた。昨深夜に少し小さめな音で聴いていたら突然音が途切れた。少しうとうとしていたのだがあれっと目が覚めたらなんとアンプから白煙が立っている!結構な量で異臭もたちこめていた。2階で寝ていたカミさんもわかったほどの匂いで発火寸前だったようだ。発煙は電源トランスからで調べると高圧巻き線がレアショートしていた。そしてもう一つ重大な事もわかった。このアンプにはヒューズがない!もともとヒューズのないアンプだったので忘れていた。。古いアンプを稼働させている時は安全のために側を離れてはならないとKS先生は言われていた。古いアンプのみならず未熟な自作アンプにも当てはまるとは!肝に命じます。

 電源トランス359Aはレプリカシャーシを供給していた台湾のメーカーから現在でもレプリカトランスが入手できる。二個一組の出費は痛いが火事にならなかった事、現在でも同品が入手できる事に感謝して注文した。もちろんヒューズホルダーも手配した。

 

 注文してから到着予定日より随分早く1週間で届いた。ただし2個一組のはずだが荷物には1個しか入ってない!慌てて問い合わせると2個口とのことでもう1個は翌日到着した。

早速チェックすると、、何と!

向かって右が今回届いたものだが端子の位置が変更になって左右の位置が入れ替わっている。まいったな。。下の写真は配線を外す前のもの

            

 ボルトオンで載せ替えと思っていたのだが、、ただしWEの配線を真似てかなり余裕を持たせていたのでレーシングを一部やり変えてなんとか修正、結線し復帰した。

 改めてメンテナンスを考慮した配線の重要さを認識した。トランスのネジ端子は交換が楽でありがたい。

 ワイヤーハーネスは筐体に次いでオリジナルとしての大事な要素だと思っている。レプリカでの再現は困難で神はワイヤーハーネスに宿る。(異論は受けま、、)

 

 


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