金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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白銀の翼(呂布)288

2013-11-21 21:18:28 | Weblog
 呂布は隊商の先頭にいた。
段揚と二騎、最先頭を進み、前方に目を配っていた。
今のところ周辺に怪しい気配はない。
街道を行き交っているのは、同じような隊商か、旅人、地元の者。
 呂布が隊商に加われたのは、大番頭の信頼を得たからではない。
たんに人員が不足していたからにすぎない。
洛陽からここまでの旅程で、「盗賊団との戦いで十人ほどを失った」というのだ。
気の良い段揚の口利きがなければ、一人旅が続いていただろう。
 誰も口にしないが、呂布が裏切った場合に備えて、最先頭の任を与えられたのだ。
「いつでも背後から弓で射る」と。 
隊商のみならず軍事に置いても、
身元の不確かな新顔を目の離し易い後方に置く事は、まず有り得ない。
最先頭か、最前線が当然の配置なので、呂布も怒りはしない。
このくらいの用心深さがなくては、とてもではないが西域への隊商は組めない。
 段揚の説明では、不足した人員は敦煌で補充するとか。
あの町には西域との交易に慣れた者達がいるので、こういう場合は便利なのだそうだ。
 四日目にして、ついに関所らしき物に遭遇した。
それは街道を塞ぐようにして造られていた。
遠目に如何にも急拵えと分かった。
そこを通るための行列も出来ていた。
 段揚が隊商を止めた。
関所を抜けて来た旅人に問う。
「あの関所は本物かね」
 問われた旅人が言葉を吐き捨てた。
「まさか。どう見ても賊だな。
それでも通行税を支払わねば通してくれん」
「何人くらいいる」
 旅人が気の毒そうに言う。
「表に出てるのは十数人だが、関所破りは止めた方がいい。
おそらく仲間達が、そこいらの森とか山とかに隠れている筈だ」
 確かに、それはあり得る。
迂闊な行動は取れない。
 隊商の主立った者達が集まって協議した。
当然ながら中心は大番頭。
商家の者にとって不必要な支払いを避けたいのが本音である。
余計な経費がかかっては隊商を組んだ意味がない。
しかし、ここまでの旅程で、すでに十人ほどを失っていた。
これ以上の人員損失も避けたいところ。
なかなか結論が出ない。
 そこへ、前方で行列していた隊商が引き返して来た。
そして、こちらの隊商に、
「余計な通行税は支払いたくないのだが、何か良い手立てはないか」と声をかけてきた。
 彼等も、こちらと同じような陣容であった。
双方の警護の人数を足すと四十余人。
正規の騎兵には敵わぬだろうが、目の前にいるのは盗賊団。
その人数は不確かだが、盗賊団の弱みは統制が取れぬこと。
「倍近い人数の敵にでも勝てる」と双方の警護の頭の意見が一致した。
問題は、盗賊団の仲間達がどこに潜んでいるのか。
確かめようにも時間も方策もない。
 呂布が進み出た。
「俺が関所を荒らしてみる。
騒ぎになれば、どこからか出て来るだろう」と。
 返事は求めない。
替え馬を預けて、さっさと関所に向かった。
 段揚が後を追ってきたが、断った。
「俺一人で十分。
逃げ足には自信がある」
「分かった。
せめて槍くらいは持って行け」
「槍を担いでいたら向こうも警戒するだろう」
 頭と口元と覆っていた布を取り外し、金髪を棚引かせて馬を進めた。
関所に並ぶ連中を後方より一喝。
「どけ、邪魔だ」
 みんなが振り返る。
そこには騎乗の偉丈夫がいた。
金髪碧眼。
鼻筋が通った細い顔。
獲物を狙うかのような鋭い眼光。
全身に纏っているのは暴力。
恐ろしさに誰一人、文句も言わずに道を譲った。
 関所入り口には二人の男が槍を持ち、番人よろしく立っていた。
二人の衣服は、賊と証明するかのように不揃い。
下っ端なので、金回りが悪いのか。
あるいは、衣服よりも酒、女に金を使うのか。
 二人が騎乗の呂布に警戒を露わにした。
「みんな順番に並んでる。
勝手に列を乱すんじゃない」
 賊に説教されてしまった。
呂布は笑い飛ばす。
「はっはっは。構わぬ、構わぬ」




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